耳を疑うニュースでした。自民党が「子どもをもうけたら奨学金の返済額を減免する」という提言を固めました。

自民党の「教育・人材力強化調査会」は2日、子育て世代の教育費負担の軽減に向けて来週中に取りまとめる提言の内容を固めた。学生時代に奨学金の貸与を受けた人が子どもをもうけた場合、返済額を減免することなどが柱。20代~30代前半の子育て時期と奨学金の返済時期が重なるため、返済額を減らして子どもの教育にお金を掛けられるようにする狙いがある。

 出産するかしないかにかかわらず、奨学金の返済に苦しむ若者がいる中、返済と出産を結び付ける案は議論も呼びそうだ。

 党内で少子化対策を議論している「こども・若者」輝く未来実現会議に提言し、政府が3月末をめどにまとめる「異次元の少子化対策」の「たたき台」への反映を目指す。減免に使う財源は教育国債を発行して賄う案も明記する予定だ。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023030200985&g=pol

様々な意味であり得ない内容です。これこそが「異次元の少子化対策」です。少子化が急激に進んでいる原因も分かっておらず、倫理性を欠いています。

この提言を固めたのは教育・人材力強化調査会(自民党政務調査会)です。主に安部派や文教族で構成されています。会長を始めとして、複数の文部科学大臣経験者が名を連ねています。

教育・人材力強化調査会

(会長)柴山昌彦
(顧問)塩谷立・下村博文・渡海紀三朗・中曽根弘文・山谷えり子
(会長代理)末松信介
(副会長)伊藤信太郎・櫻田義孝・丹羽秀樹・義家弘介・片山さつき
(幹事長)堂故茂
(副幹事長)津島淳・中村裕之
(事務局長)上野通子
(事務局次長)青山周平・井原巧

https://storage.jimin.jp/pdf/member/officer.pdf

様々な媒体で指摘がある通り、少子化の主な原因は若年層の低収入等に帰因する未婚者の増加、仕事と子育ての両立不安、子育て費用(特に教育費)の高騰です。この案は両者を一度に解決するように見えますが、

若年層の収入問題を解決するには、十分な収入を得られる雇用を増やすのが近道です。仮に一定程度の奨学金を借りたとしても、十分な収入が得られれば一定期間で返済できます。

たとえ返済が減免されるとしても奨学金は借金です。学生に多額の借金を負わせるのに心苦しさを感じないのでしょうか。

保護者としては子どもに奨学金を借りさせて学ばせるのは辛いです。家庭の収入の範囲内で支払える教育費が子供の数を制限する一要素となっているのが実情です。

更に奨学金減免と出産を関連づけているのは理解できません。奨学金を盾にとって事実上出産を迫るのは言語道断です。「子供がいない罰」です。様々な理由で子供を産めない人もいます。鬼です。

現実認識が全くズレているのは「20代~30代前半の子育て時期と奨学金の返済時期が重なる」「返済額を減らして子どもの教育にお金を掛けられるようにする」という部分から読み取れます。

子供の教育にお金が掛かるのは主に中学生以降(中学受験する家庭は小学校高学年以降)です。奨学金の借入額や借入期間(4年か6年か)にも左右されますが、子供の教育費を要する時期と重複するわけではありません。

奨学金の返済で辛いのは20代です。収入が低い反面、奨学金の返済を迫られます。様々な活動に費やせるお金が少なく、人との出会いが限られてしまいます。

また、返済額を減らす代わりに子供の教育にお金を掛けさせるのは本末転倒です。多くの子育て世帯が望んでいるのは「教育費の私費負担の削減」です。これでは子育て世帯を借金漬けにさせ続けるだけです。

今後の負担感が増すと感じているのは、大学よりもむしろ高校生や中学生です。特に私立高校の学費及び諸経費の高さ、そして中学生・高校生の塾代の高さには驚きました。大学の学費は覚悟していましたが、その前段階の負担感に戦いています。大阪は本当に酷いです。

「子供のもうける」という言葉の定義も曖昧です。奨学金の減免対象となるのは母親だけでしょうか。父親は含まれないのでしょうか。事実婚世帯はどうなるのでしょうか。

この案には法律婚による家族世帯を露骨に優遇する意図が垣間見えます。家族を重視するのは統一教会の主張と共通しています。