原則として0歳児~2歳児までの保育を行っている「小規模保育」につき、3歳児以降の利用を柔軟に認める通知をこども家庭庁が発しました。

原則として2歳児までを保育する「小規模保育事業」について、こども家庭庁は3歳になると新たな園に移るのが負担になるとの指摘があることなどから、必要性に応じて3歳以上の子どもの受け入れを認めることを決めました。

「小規模保育事業」は国が待機児童解消のため8年前に導入した、定員が19人以下の保育所です。

広いスペースの確保が難しい都市部などでも開設しやすいことが特徴ですが、3歳以上の子どもの発達には集団での保育が大切だとして、原則として利用を2歳以下の子どもに限ってきました。

一方、3歳になると通い慣れた保育所を離れて新たな園に移ることになるため、子どもや親にとって負担になると指摘する声なども上がっていました。

こうしたことから、こども家庭庁は利用を希望する子どもの選択肢を広げる必要があるとして、3歳以上の子どもについても必要性に応じて認めることを決め、自治体に通知しました。

一方、受け入れにあたっては、3歳以上の子どもが同年代の子どもと交流したり遊びを体験できる機会を設けることや、2歳以下の子どもが落ち着いて食事や昼寝をできる環境を整えるなどの配慮をするよう求めています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230424/k10014046981000.html

通知した内容は「小規模保育事業における3歳以上児の受入れについて(通知)」(こども家庭庁ウェブサイト)です。

現在も既に3歳児以降の受入は可能です。但し、「市町村が特に必要と認めた場合には」という厳しい条件が付されています。具体的には「過疎地やへき地などで近くに教育・保育施設がない」「きょうだいで別々の施設に通園」などが例示されています。

本通知はこれを改めるものです。「保育の体制整備の状況その他の地域の事情を勘案して、3歳以上児の保育が必要な場合には」とします。「特に必要と認めた場合」から「地域の事情を勘案して」となり、大幅に緩める内容となっています。


小規模保育事業における3歳以上児の受入れについて(通知)

趣旨が読み取れなかった部分もあります。「集団生活を行うことが困難である場合」という箇所です。保育所での集団生活を行うのが困難な児童については、小規模保育事業での保育を継続できるという趣旨でしょうか。

では具体的なニーズはどこにあるのでしょうか。真っ先に思い浮かんだのは、都市部での3歳児待機児童です。

ここ数年、東京や大阪といった都市部では、数多くの小規模保育が設置されています。卒園後は保育所やこども園等へ転入します。統計等を見る限り、卒園児に関しては3歳児以降も概ね希望する保育所等へ転入できていると考えられます。

反面、3歳児からの新規に保育所等へ入所するのは難しくなっています。フルタイム共働き程度の点数があればともかく、フルタイム+パートタイム勤務の点数だと、都市部で保育所等へ3歳児入所するのは容易ではありません。

ただ、小規模保育でも3歳児保育が可能となると、3歳児待機児童問題は大幅に解消されます。

一方で0歳児から3歳児までが同じ空間で過ごす事によるデメリットもあります。生活リズムも体力も全く違います。更に3歳児は同年齢や4~5歳児のお友達と交わる事で成長します。お喋りも盛んです。

NHK記事では「3歳になると通い慣れた保育所を離れて新たな園に移ることになるため、子どもや親にとって負担になる」とあります。まさか小学校へ就学するまで小規模保育で過ごす生活をイメージしているのでしょうか。そうした利用は想定していない、と思いたいです。

こうした負担を軽減したいのであれば、むしろ0歳~5歳までの6年保育を行う保育所等を増やすべきです。負担になるから制度を変更するのではなく、負担にならない施設を増やす方が理に適っています。

毎年、大阪市の保育所等一斉入所を細かく見ています。大半の方が第1希望とするのは、6年保育を行う保育所等です。小規模保育のメリットもありますが、残念ながら多くの保護者のニーズとはズレがあります。

少子化が進むにつれ、多くの小規模保育で在籍園児が定員を大幅に下回ると予測されます。3歳児以降の保育を行うのであれば、むしろ6年保育を行う保育所等へ発展的に移行するのが保護者ニーズに適っています。