急激な勢いで開設されている企業主導型保育ですが、充足率が低迷しているそうです。

企業型保育定員50%割れ 主要都市調査 地方乱立、需要合わず

待機児童対策として政府が整備を進める「企業主導型保育所」の多くが定員割れを起こしていることが二十二日、都道府県庁所在地や政令指定都市など全国の主要都市を対象にした共同通信の調査で分かった。定員に占める利用児童数の割合(充足率)は、回答を得た八十二自治体の平均で49%と半分を割り込んだ。

開設から間もないケースが多いという事情はあるが、手厚い助成金が得られるため、待機児童のいない地方でも乱立しており、需要と合っていないことも要因とみられる。財源の使い方として、より効果的な整備や活用策が求められそうだ。

企業主導型保育所は事業主が主に従業員向けに設ける施設で、認可外保育所の一つ。安倍政権が待機児童対策の目玉の一つとして二〇一六年度に制度を創設した。所管の内閣府は利用児童数を公表しておらず、全国的な利用実態が明らかになるのは初めて。

調査は七~八月に都道府県庁所在地(東京は都庁のある新宿区)とそれ以外の政令市、中核市の計八十三市区を対象に実施。

岡山県倉敷市を除く八十二市区の計千六十七カ所で利用児童数が判明し、定員二万三千七百五十九人に対し、一万一千五百九十七人(49%)だった。一六年開設のケースに限っても、充足率は67%にとどまった。

充足率が80%以上の保育所は二割弱で、50%未満が半分近くを占めた。開設時期や利用児童の把握時点が異なるため、単純には比較できないが、自治体別の平均充足率では、群馬県高崎市、新潟市など四市で20%を下回った。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201809/CK2018092302000128.html

多くの企業主導型保育は、オフィスビル・マンション・テナントの一角を利用して設置されています。敷地が限られている都市部でも設置しやすく、手厚い助成金が得られるのが事業主側の大きなメリットでしょう。

平成30年3月31日時点で2,597施設、定員59,703人分の助成が決定しています。では、どの様な子育て家庭が企業主導型保育を利用するのでしょうか。

保育施設の利用に際し、多くの子育て世帯は「6年保育を行う保育所」を第1希望として申し込んでいます。0-1歳児から小学校入学前での保育を行う保育所です。

同じ施設・保育士集団・保育方針で一貫して保育が実施されるの、保護者は非常に安心できます。また、きょうだいも同じ保育所へ通いやすく、同じ持ち物等を共有できます。保護者も楽です。しかし、全ての申込者が6年保育を行う保育所へ入所できるとは限りません。

そうした場合に「企業主導型保育」という選択肢が浮上します。保育所へ入所できなかった、4月一斉入所のタイミングが合わない、勤務先が整備している等、様々な理由があるでしょう。

待機児童問題は、共働きする子育て世帯が増加している都市部特有の現象です。多くの地方都市や県庁所在地、そして子育て世帯が流出している都市部では、待機児童はあまり生じていません(入所できない方にとっては大問題ですが)。

こうした地域では、殆どの入所希望者が保育所へ入所できるでしょう。年度途中でも空き枠がある事も多く、4月以外でも入所しやすいです。

すると、企業主導型保育への需要は殆ど発生しません。企業主導型保育を利用したとしても、保育所への転所待ちとして利用する方が少なくないでしょう。

では、待機児童問題が深刻な都市部では、企業主導型保育の充足率は高水準となっているのでしょうか。

大阪市は企業主導型保育の空き情報も公表しています(詳しくはこちら)。ここから中央区・天王寺区・西区の空き情報(平成30年9月1日時点)を集計してみました。

0-2歳児の空き枠は中央区で21人、天王寺区は31人、西区は26人が確認できました。充足率が高い都市部といえども、保育所入所が厳しい0-2歳児で一定の入所枠が空いていました。無視できない規模でしょう。

「6年保育の保育所なら入所したい、だがそれ以外の施設なら入所を見送る・先延ばしにする」という世帯も存在すると推測されます。待機児童における「特定保育所等への入所希望」と重なります。保育所への需要は生じますが、それ以外の保育施設への需要は生じません。

こうした世帯が少なくなく、結果として需要を大きく上回る企業主導型保育が開設してしまったのかもしれません。

多くは「6年保育の保育所」を希望

繰り返しになりますが、大半の子育て世帯は「6年保育を行う保育所」を第1希望としています。これは大阪市の一斉入所申込情報から明らかです。

結果として地方都市を中心に企業主導型保育の希望者が想定ほど集まらず、定員割れする施設が多発してしまいました。また、都市部でも定員を完全充足する園児が集まっている施設は限られています。

今後、殆どの地域では子供の数が更に減少していきます。需要減の波は次に地域型保育事業にも襲いかかるでしょう。近い将来、「地域型保育定員50%割れ 主要都市調査 地方乱立、需要合わず」という記事が掲載ても不思議ではありません。

子育て世帯として願うのは「6年保育を行う保育所の新設」です。「保育施設ならどれでも良い」わけではありません。子育て世帯のニーズを見誤っていないでしょうか。