朝日新聞にて大阪市内で保育園に通うシングルマザー家庭が取り上げられています。
朝8時半、ママチャリの前と後ろに次男と長男を乗せ、大阪市の女性は重いペダルをこぎ出した。
15分かけて到着した保育園で、2人を降ろして園内へ。長男の支度を調えて、保育士に一声かけると、次男とともに再び自転車に乗った。
再び自転車を走らせて15分。ようやく次男の園が見えてきた。
女性がひとり家に着くころには、10時近くになっていることも珍しくない。雨の日には更に時間がかかる。
2人の子どもを育てるシングルマザーの女性はこう話す。
「待機児童が減ったと言われても……。選べない、というのは聞いていたけれど、それって、やっぱりおかしくないですか」
女性はこの春、ようやく次男を保育園に入れることができたが、きょうだいで別々の園になってしまった。
数年前と比べると、大阪市内でも格段に保育所等へ入所しやすくなっています。以前は市内中心部で1歳児・200点でも入所できるか不透明でしたが、ここ1-2年は第1希望へ概ね入所できています。
ただ、点数が低かったり、更にはきょうだい同時入所を目指す場合、高いハードルが待ち構えています。
朝日新聞で取り上げている事例は点数は恐らく200点未満(10時近くに帰宅するのも珍しくない事から推定)、かつきょうだいが同一の保育所等へ入所したかったケースです。私も毎年の様にこうした相談を受けていますが、残念ながら「難しいです」とのお返事を差し上げるのが専らです。
第一のハードルは募集定員です。殆どの保育所等では数多くの0-1歳児を募集しますが、2歳児以降は極端に減ってしまいます。例えば4歳児と0歳児が同一の保育所等へ入所したい場合、双方の年齢を募集している保育所等は3割にも満たないでしょう。
第二のハードルは点数です。大阪市の入所調整制度では、勤務時間が長いほどに高い点数が得られます。勤務時間が短いと点数が低くなってしまいます。入所者は点数順に決定されるので、点数が低い方は決まりにくくなってしまいます。
つまり「きょうだい児それぞれの募集を行っている保育所等」かつ「両方の年齢がやや低い点数でも入所できる」という条件を満たす必要があるのです。
これは難しいのが実情です。大阪市内中心部や接するエリアでは極めて困難、周縁部でも選択肢は限られてしまいます。これに自宅や職場との距離等といった条件も重ねると、望む結果を得るのは不可能に近いです。
この様な事例では、「一時的な2箇所保育はやむを得ません。1年以内に転所し、1箇所保育を実現するのを目指しましょう。」とアドバイスするのが一般的です。まずはきょうだい児どちらかが自宅近くの保育所等に入所し、別の保育所等に入所したきょうだい児が7点加点(きょうだい同一施設)を得て転所を目指します。一斉入所で別々の施設に決定してしまっても、春や夏に年度途中転所できる事もしばしばです。
「待機児童が減ったと言われても……。選べない、というのは聞いていたけれど、それって、やっぱりおかしくないですか」という気持ちは痛いほど理解できます。ただ、このケースでも選べるとなると、大阪市内の保育所等は空きだらけになります。運営が行き詰まる施設が相次ぎます。
問題は記事の続き部分です。
女性は「私のように困っている人が減ったわけではないと思うんです」と話し、次男の入園説明会で衝撃を受けた出来事を打ち明けた。
「これを、来月までに購入してください」と渡されたプリントには、入園後に必要となる品々と値段が記載されていた。その量の多さと高額ぶりに思わず声が出そうになった。
通園かばん、園内着、季節ごとに購入する園服、そして帽子……。全てを購入すると、総額は、数万円に上る。「これまでも毎月、なんとかやりくりしてきた状態なのに、急な出費を求められても……」
長男の園では、持ち物も自由で、保育料の他に負担を求められることはほぼない。
保育料は世帯所得に応じて機械的に決定されますが、入所者に購入を求める物品は各施設が独自に決定しています。殆ど負担がない保育所等もあれば、多額の負担を求める保育所等もあります。特に負担感が強いのは、制服・運動着や楽器類です。費用が嵩むのに短期間しか使いません。
こうした物品・費用設定には隠れた狙いもあります。「事実上の入所者の選別」です。保育所等は入所者を選べません。しかしながら、高額の私費負担を設定する事により、これらを負担に感じる世帯の入所をやんわりとお断りする事が出来てしまうのです。
気分の良い話ではありません。