以前に大阪市北区・中央区で保育所等の新設が難航している状況をご紹介しました。

【朝日新聞より】タワマン増えたが保育所足りず 高賃料が壁、大阪市が補助策検討

事業者からは「保育所用途に適した土地・建物が少ない。」「地価・建物賃料とも大幅に高く、保育事業として成り立たない。」「他都市は大阪医より補助が充実。」「改修費が高額化している」「分園整備補助金を拡充すべき」との声があったのを受け、大阪市は都心部に新設される保育施設への賃料補助額を大幅に積み増します。

タワマン増加地区で新設保育所に補助拡充 大阪市

 大阪市は、都心部の北区と中央区で賃貸物件を借りて新設する保育所に対し、賃料の補助額を引き上げ、補助期間も従来の5年から最大15年まで延長することを決めた。都心部では、タワーマンション建設が相次ぎ人口が増える一方、賃料が高騰している。補助を手厚くすることで、2021年春に2区で計8カ所の保育所新設を目指す。

 大阪市のこれまでの賃料補助は、開設から5年間、最大で年間1500万円を基準としていた。これを、梅田周辺を含む北区と大阪城公園や心斎橋を含む中央区に限り、年間最大2200万円に引き上げ、期間も賃料に応じて最長15年まで延長する。2021~23年度に開設する保育所限定の措置。

 市内では、2017年以降に完成した25階建て以上のタワーマンション19件のうち、この2区に18件が集中。人口が急増し、保育ニーズも高まっている。一方、市の調査では2区の賃料は市内の他の中心部と比べ、2倍程度に高騰しているという。

 高い賃料がネックになり、昨年度以降に市が2区を対象に実施した保育所の一般公募に応募はなかった。補助拡充により、21年春に北区で5カ所、中央区で3カ所の保育所の新設を目標に掲げる。

 東京都は17年度から、賃料補助の基準額を4500万円に引き上げるなどの拡充策を導入し、保育所新設がそれまでの約1・5倍に増えた。大阪市の担当者は「全国で保育所を運営する事業者は東京に流れがち。なんとか大阪に目を向けてほしい」と話す。

https://digital.asahi.com/articles/ASMDR4DBQMDRPTIL00N.html

第12回大阪市待機児童解消特別チーム会議で配布された資料では、大阪市都市部での保育施設の進行が難航している様子が記載されています。

大阪市中心部では、今も続々とタワーマンションが建設されています。久しぶりに通りがかると「こんなところにもタワーマンションが!」と驚かされる事も少なくありません。

タワーマンションが建設されるのは、高い建設費や地代を上回る強い居住ニーズがある地域でしょう。こうした地域はオフィスビルやホテル需要も強くなっています。

必然的に地代は高騰します。数年前と比べると信じられない値段となっている地域もあります。

となると、収入や補助額が一定幅に制約される保育所や地域型保育を新設するのが難しくなるのは必然です。

ここ数年は公有地や必ずしも居住に適さない土地(鉄道の高架前等)を利用した新設保育施設が散見されましたが、それも限界に近づいた様子です。

そこで、大阪市は都心部(梅田・大阪城公園・心斎橋周辺等)に新設される保育施設への賃料補助額を1.5倍に、補助期間を3倍に引き上げます。最大で4.5倍ですね。

ただ、これでも十分な保育施設が新設されるかは疑わしいと感じています。

都心部での土地やテナントへのニーズは信じられない程に強い状態が続いています。市内のオフィスビル空室率は最低水準で推移しています。

オフィス仲介の三鬼商事(東京・中央)が9日発表した2019年12月の大阪中心部のオフィス空室率は1.82%と前月比で0.09ポイント低下した。2カ月連続のマイナスで過去最低を更新した。オフィスビルの新規開設がないなか、業容拡大によるオフィスの拡張や大阪中心部に移転をしたい企業の需要が高止まっている。

賃料も上昇している。3.3平方メートルあたりの平均賃料は1万1794円と20円上昇。需給逼迫を受け、契約更新時に賃料を引き上げる動きが出ている。

地域別では梅田地区の空室率は0.30ポイント低下の0.85%と1%を下回った。大阪に進出する企業が約460坪を借りる大型契約があった。平均賃料は1万5628円と131円上昇した。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54216560Z00C20A1LKA000/

ホテルは客単価や稼働率が低下していますが、まだまだ新設され続けています(オーバーホテルになると見ていますが)。

こうしたビジネス・マンション需要に対し、保育施設に対する大阪市の補助額が十分とは言い難いでしょう。

一方、補助額を更に上乗せするのは容易ではなさそうです。財政難に加え、「市内中心部の共働き子育て世帯ばかりを優遇するな」という声も聞こえてきます。

大阪市はタワーマンション建設を規制する考えは全くありません。

高価なタワーマンションを購入する子育て世帯は、定年まで共働きするのを前提とした資金計画を持っているのでしょう。共働きするのに欠かせないのは保育施設、そして学童保育です。

今後は小学校が更に過密化し、学童保育が不足するのは目に見えています。

タワーマンションへの居住を検討している方は、保育施設のみならず、その先の状況も十分に踏まえて下さい。簡単には解決できない、と感じています。