保育所等の整備や少子化により、待機児童数は急速に減少しています。

待機児童、過去最少2944人 受け皿整備進み5年連続減少

厚生労働省は30日、希望しても保育所などに入れない「待機児童」が4月1日時点で2944人となり、5年連続で減少したと発表した。1年前より2690人少なく、過去最少を更新した。受け皿となる保育施設の整備が進んだほか、新型コロナウイルス禍による利用控えや子どもの減少の影響もあった。(以下省略)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA223VO0S2A820C2000000/

詳しい資料が厚生労働省ウェブサイトに掲載されています。

【保育所等関連状況取りまとめのポイント】

〇保育所等利用定員は304万人(前年比2.7万人の増加)
〇保育所等を利用する児童の数は273万人(前年比1.2万人の減少)
〇待機児童数は2,944人で前年比2,690人の減少
・待機児童のいる市区町村は前年から60減少して252市区町村。
・待機児童が100人以上の市区町村は、前年から1減少して3市。
・待機児童が100人以上増加した自治体はなし。待機児童が100人以上減少したのは、
西宮市(130人減)、筑紫野市(106人減)の2市。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/houdou_list_202208.html

保育所等の整備がや少子化が急速に進んだ結果、待機児童数は急速に減少しています。

驚くのは保育利用率の伸びです。平成25年度は全体で35.0%、1-2歳児が33.9%でした。しかし、令和4年度は全体で50.9%、1-2歳児が56.0%まで伸びました。

全体の利用率より1-2歳児利用率の方が高いのは、3-5歳児は幼稚園という選択肢がある為です。地域差等はありますが、約半数弱の3-5歳児が幼稚園に通っています。

なお、上記資料には年別の就学前児童数が掲載されていません。平成25年4月には634.2万人でしたが、令和4年4月には536.8万人へと減少しています。10年で約100万人もの就学前児童が消滅しました。

上記資料には待機児童率(30人以上の待機児童が生じている自治体に限る)も掲載されています。その多くは首都圏のベッドタウン、兵庫県南部、そして沖縄県が占めています。

特に酷いのは沖縄県です。ワースト20のうち、7自治体を占めています。沖縄県全体の待機児童率は全国ワーストの0.71%です。保育所等が全く足りていません。

この背景事情等について、先日朝日新聞に掲載された記事で上間陽子先生が指摘されていました。

「でも、観光で遊びにきたことと暮らすのとでは、やっぱり違う。沖縄の県民所得は全国でも最低水準で、貧困が問題となっていますが、学童保育や補助金などの子育て環境が整っていません。それなのに、なぜ、子だくさんなのか。米軍統治時代に適切なバースコントロールができなかった影響があります」

「調査でわかってきたのが、保育や児童福祉の分野で、沖縄には独自ルールがあるということでした。復帰しても本土と同等の制度が整わない中で、現場が力業で乗り切ってきたように思います」

https://digital.asahi.com/articles/ASQ8R4RS1Q8BUPQJ004.htmlより引用

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観光業や飲食店といった日中以外の勤務時間が長い産業で従事する母親の為、沖縄県では認可保育所の隙間を埋める形で数多くの認可外保育施設が設置されています。先日、そうした施設の一つで園児の死亡事故が発生しました。

【4/1追記】男児の死因は窒息死か 緑のすず乃保育園(那覇市)

阪神地域の待機児童率の高さも際立っています。充実した子育て支援策が取り上げられる事が多い明石市、尼崎市・西宮市・姫路市です。いずれもJR新快速へのアクセスが非常に良く、大阪への通勤も可能な地域です。

これらのエリアは以前から子育て世帯の人気が高かったのですが、更なる流入や共働き率の上昇に保育所等の整備が追いついていません。

なお、待機児童の陰には、この何倍にも上る「保留児童」が隠れています。待機児童の定義には該当しないながら、申し込んでも入所できなかった児童です。保護者の視点では、待機児童も保留児童も同じです。役所の都合で名称を使い分けられているだけです。