20020年4月1日時点での待機児童数が発表されました。

関西の待機児童300人減 神戸や東大阪で減少目立つ

厚生労働省が4日発表した2020年4月1日時点の市区町村別の待機児童数によると、関西2府4県は前年と比べ10%減の2655人だった。神戸市や大阪府東大阪市などで保育所の整備が進み、計300人減った。今後は新型コロナウイルスの影響で保育施設の利用を控える傾向が高まる可能性も指摘される。

関西では4府県で減少したが、滋賀県と奈良県は増加した。それぞれ36人増の495人と、3人増の201人となった。最も待機児童が多いのは兵庫県で、全国ワースト2位の1528人だった。市区町村別でも明石市が365人で全国ワースト2位、西宮市が345人で同3位、尼崎市が236人で同5位だった。

一方で神戸市では待機児童が前年に比べ165人減り、減少数で全国2位だった。市有地を利用した認可保育所や小規模保育など計34カ所を新設し、約1400人の定員を確保した。さらに同市で働く保育士を確保するため、7年間で計160万円の支給などを掲げる6つの支援策を打ち出したことが奏功した。

就学前児童数が13年から増え続けている明石市の待機児童数は47人減の365人。認可保育所など400人以上の受け入れ体制を新たに整えたが、前年よりも増えた申込数を補えなかった。新型コロナについては「(保護者が)なるべく育休を使うといった可能性はあるが、増減は想定しにくい」(市待機児童対策室)。新型コロナの影響などにより、施設への入所辞退者が前年比で約2割増えた尼崎市のような例もある。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63479650U0A900C2LKA000/

当ウェブサイトでは繰り返し指摘していますが、保護者目線では「待機児童」という指標は参考になりません。特定の保育所等を希望している理由等により、待機児童から除外されている児童が非常に多い為です。

また、人口規模が大きい自治体の待機児童数が多く、小さい自治体の待機児童数が少ないのも当然です。

保育所等への入りやすさを実感できるのは「入所承諾率(保留率)」です。全ての申込者(既入所者を除く)に対して、新たに入所できた児童の割合です。

残念ながら厚生労働省が公表している資料からは入所承諾率を算出できません。申込者数に既入所者が含まれており、新規入所者のみを抽出できない為です。

なお、大阪市では両者を区分して算出する事が出来ます。保育所等在籍児童数54,302人に対し、新規申込者数15,690人、利用決定者数12,390人でした。

大阪市の保育所等利用待機児童数について(令和2年4月1日現在・速報値)
https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000503327.html

致し方ないので、既入所者(下の年齢児クラスからの持ち上がり)に対する入所保留者(育児休業、特定保育所等希望、求職活動休止、待機児童)の割合を算出し、自治体毎の保育施設の逼迫度を見ていきます。

全国の自治体を保留率毎に並び替えました。

順位都道府県市区町村申込者数保留数保留率
1兵庫県赤穂市4789519.87%
2福岡県久山町1602918.13%
3神奈川県葉山町4126415.53%
4福岡県須恵町80011614.50%
5沖縄県北中城村6869814.29%
6千葉県四街道市1,62621613.28%
7北海道むかわ町1912513.09%
8奈良県大和郡山市1,65420812.58%
9神奈川県大磯町4235112.06%
10京都府向日市1,51517711.68%
11神奈川県座間市2,00422511.23%
12福島県矢吹町3373710.98%
13埼玉県八潮市1,71018010.53%
14神奈川県三浦市4044210.40%
15埼玉県白岡市783789.96%
16奈良県田原本町653649.80%
17兵庫県尼崎市9,1388959.79%
18千葉県袖ケ浦市1,5631529.72%
19鹿児島県姶良市2,0021949.69%
20福岡県篠栗町943909.54%
21沖縄県南風原町2,1262029.50%
22大阪府島本町787749.40%
23千葉県富里市755709.27%
24宮城県村田町108109.26%
25福岡県福津市1,6441519.18%
26埼玉県三郷市2,6642449.16%
27兵庫県西宮市8,9048109.10%
28沖縄県豊見城市3,4223048.88%
29東京都中央区5,7325078.85%
30静岡県湖西市983868.75%
31福岡県志免町1,2261078.73%
32沖縄県読谷村1,2851128.72%
33千葉県東金市781688.71%
34東京都台東区4,3923808.65%
35埼玉県草加市3,8903318.51%
36静岡県袋井市1,8621588.49%
37静岡県森町309268.41%
38沖縄県西原町1,2271028.31%
39埼玉県川口市11,5319568.29%
40奈良県天理市1,4041168.26%
41茨城県坂東市1,106918.23%
42福井県南越前町371308.09%
43兵庫県芦屋市1,6701358.08%
44徳島県北島町656538.08%
45神奈川県大井町286238.04%
46岡山県新庄村2528.00%
47大阪府四條畷市1,3271067.99%
48滋賀県野洲市1,216957.81%
49兵庫県明石市8,2656407.74%
50福岡県岡垣町362287.73%

最も保留率が高かったのは、意外な事に兵庫県赤穂市の19.87%でした。地元紙によると「0~2歳児の申込が急増した」「保育士が不足した」と指摘されています。

前年比45人増の赤穂市では、保育士の手厚い配置が必要な0~2歳児の利用申し込みが多く、保育士不足が課題に浮かんだ。

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202006/0013391802.shtml?pu=20200603

 赤穂市の保育所に入所を希望しながら叶わなかった児童の数が今年4月1日時点で95人となり、前年の14人から急増したことがわかった。市は第2期子ども・子育て支援事業計画で2024年度までに待機児童数ゼロを目標としている。

市のまとめでは、希望した施設にまったく空きがなかった「待機児童」は46人、入所を案内できたものの利用者側の都合(自宅または勤務先から遠い、きょうだい一緒の入所を希望など)で入所に至らなかった「入所保留」が49人だった。前年は待機児童が1人、入所保留は13人だった。

年齢別の新規申込者数では、0〜2歳児が前年度から40人増えて190人に増加。大幅に増加した理由について、市は「原因はつかみかねる」(こども育成課)としているが、3歳児以上の保育料無償化を受けて早めに入所しておきたいという利用者が集中した可能性もある。

http://www.ako-minpo.jp/smp/news_14781.html

関西では京都府向日市・奈良県田原本町・兵庫県尼崎市・大阪府島本町・兵庫県西宮市・奈良県天理市・兵庫県芦屋市・大阪府四條畷市・滋賀県野洲市・兵庫県明石市が50位以内にランクインしています。

多くは大都市(特に大阪市)への通勤に便利な自治体ですね。いわゆるベッドタウンです。阪神地域は尼崎市・西宮市・芦屋市と連なっているのが印象的です。

政令市・23区・県庁所在地と比べ、こうした地域は共働き志向が相対的に強くなかったと感じています。一部に共働きしている世帯もあるでしょうが、多くは幼稚園等を利用する専業主婦や短時間労働者という印象です。

しかしながら、昨年10月から始まった幼児教育・保育無償化が潮目を変えたのかもしれません。

3歳児以上の)幼児教育・保育が無償化される事により、「幼稚園より保育料が高くて長時間預かってくれる保育所を利用し、外で働いた方が有利だ」という流れが強まったのは否定できません。

とは言え、3歳児クラスからすんなりと入所できるとは限りません。一般的に最も入所しやすいのは0歳児クラスです。こうした事から、入所希望の低年齢化も招いたでしょう。

更に不動産価格の上昇も見逃せません。例えば大阪市では毎年の様にマンション価格が上昇しています。8年前の新築マンションの価格が、8年経過後の現在も下がっていなかったのは衝撃でした。

新築マンション価格も目に見えて上昇しています。共働きでも手が出ない、手を出しにくい家庭も少なくないでしょう。

となると、政令市より不動産価格が割安な周辺自治体に居住し、共働きする動きが強まるのは自然です。

保育施設がすぐには増やせません。事業者の公募、そして保育士の募集が必要です。大阪市では概ね2~3年先を見据えて計画を立てていると感じています。

子育て世帯の動向や子供の数を見ながら進めていた保育施設の整備計画は、幼児教育・保育無償化によって大きな影響を受けました。

その副作用が「待機児童・入所保留児童の増加」という形となって、子育て世帯へ襲いかかりました。

都市部や周辺自治体での入所希望者の増加は、来年以降も続くでしょう。少子化は進行していますが、共働き志向(=所得防衛)はこれを上回ります。

厳しくなるのは、入所調整で点数が相対的に低くなる短時間労働者(パートやアルバイト)ですね。これまでは入所できていたのに、今年4月は入所できなかった家庭が続出したのではないでしょうか。

保護者目線として納得できないのは「保育料が無償化されたのに、希望する施設を利用出来ない」という事態です。

更に保育施設を新設するのに難儀する自治体は少なくないでしょう。必要なコストが更に高まります。また、入所希望者がいつか減少に転じた際に、多くの空き定員が生じてしまいます。

こうした地域で保育所等の利用を考えている方は、居住地域の保育事情を十分に調べて下さい。大阪市内でも今年と去年で事情が変わり、そして来年4月も変わってくるでしょう。