休校基準が厳格化された大阪市立学校では、一定数の感染者が発生しても学級閉鎖・学年閉鎖や部活動停止に留まるケースが専らです。そうした状況下でも学校閉鎖が行われるのは、多くの感染者や濃厚接触者が複数学年や職員に発生した学校です。
大阪市立蒲生中学校は5月24日に多くの感染者等を確認、そして25日から27日まで学校閉鎖を行っています。
実は同中学校は20日(金)から21日(土)まで1年宿泊合宿、そして19日(木)から21日(土)まで3年修学旅行が行われていました。
http://swa.city-osaka.ed.jp/weblog/index.php?id=j692541&type=3
学校活動に置いて、コロナ感染リスクが最も高いのは宿泊行事です。数日間に渡って寝食を共にし、同部屋で就寝する際はマスクを外します。旅先での楽しい気分でお喋りが弾み、時にはノーマスクで密集して騒いでしまう事もあるでしょう。
一方、コロナ禍以降の学校では様々な行事が中止・縮小を余儀なくされました。最も大きな影響を受けたのは、リスクが高い宿泊行事でした。2020年度は宿泊行事を中止した学校が多く、2021年も縮小や延期した学校が少なくありません。
コロナ禍が下火になり、学校での感染が一時期より落ち着いた2022年1学期に様々な宿泊行事を実施するのは当然の判断です。再び感染者が増加し始めたら、いつ実施出来るか分かりません。
多くの学校では行事前から児童生徒の体調管理を徹底している筈です。毎日の検温はもとより、数日前でも本人や家族等が発熱したら行事参加を断る事もあるでしょう(苦渋の決断です)。
しかし、それでも時に感染者はすり抜けてしまいます。オミクロン株は無症状者も多いと聞きます。そこに宿泊行事が重なってしまったら、一斉に広がってしまうのは避けがたいです。
学校日記に掲載されている同中学校の修学旅行の旅程や行動等を見直したところ、いくつは「これはちょっと・・・・」と感じた箇所がありました。
まずは修学旅行の規模です。同中学校の3年生は6クラスもあります。200人以上の大集団が同時に移動します。集団行動する人間が多ければ多いほど、感染対策は難しくなります。
旅程そのものも疑問符が付きます。1日目の宿泊場所は高知市、2日目は高知県芸西村のホテルでした。学校から両宿泊場所までは片道5時間も掛かります。非常にハードな移動です。疲れが溜まります。
長時間に渡ってバスに乗車している中学3年生が、大人しくできる筈がありません。マスクは外さないとしても、お喋りして騒ぎ続けている事でしょう。バスの窓を開けていても、40人が騒いだら換気能力が足りません。
大阪から非常に離れているのも大きな問題です。仮に旅先で生徒が体調を崩しても、保護者が迎えに行くのは困難です。現地でコロナ陽性と診断され、高知県のホテルに隔離される事態も想定できました。過去には沖縄県で行われたスポーツ大会の前後で感染が広がり、帰京できなかった高校生が相次ぎました。
個別の行動でもリスクがあります。1日目の昼食(淡路島)は班ごとに敷物を敷き、向かい合って食べています。先生の目が届きにくく、黙食するのは難しかったでしょう。会話をしながら食事をすると、たとえ屋外でも感染は広がります。多発したBBQクラスターが物語っています。
1日目の夕食はホテル(2箇所に分散)の宴会場でした。多くの学生が鮨詰め状態で向かい合って座っていますが、間仕切り等はありません。開口部は少なく、明らかに換気が足りていません。
同じ場所で夜のレクリエーションタイムや2日目朝食も行われました。こうした狭いスペースに数十人の生徒が集い、それに見合う換気能力があるかを事前に確認等を行っていたのでしょうか。
2日目はスポーツセンターにて室内オリンピックを行っています(わざわざ修学旅行先でしなくても良いのに・・・・)。高さが高い体育館ですが、1階部分の扉はほぼ閉じられていました。2階部分の窓も開けられていたのは一部のみです。ここも換気不足でしょう。特に1階部分の扉が閉じられていたのは理解できません。
2日目の夕食は、ホテルの円形テーブルに座って頂きました。衝立は確認できません(同時期に行われた1年宿泊行事では衝立あり)。向かい合って黙食するのは困難でしょう。誰かがしゃべり出します。3日目の朝食も同じ形式でした。
3日目は金比羅神社の表参道やうどん作り、大塚国際美術館を経て帰校しました。1日5時間の帰り道に2箇所に立ち寄り、ハードスケジュールです。
お土産は手作りうどんの筈でした。しかし、一部の生徒は新型コロナウイルスも持ち帰ってきました。週明けの23日(月)は代休でしたが、既に体調に異変を感じた生徒がいたでしょう。
翌24日は1年・3年が学年休業、2年生も1限のみで下校しました。1年生や3年生の間で感染が広がった形です。この2学年の共通点は直前の宿泊行事です。
この時期に修学旅行を行った判断自体は妥当です。しかし、コロナ禍における適切な対策やリスク管理が甚だ不十分でした。保護者目線で言うなれば、「やるならしっかりやって欲しい」の一言です。