埼玉県秩父市がランドセル購入補助金を検討しています。子育て世帯が歓迎しそうな話ですが落とし穴があります。「秩父郡内で購入したランドセルのみが対象」とされています。
埼玉県秩父市が2023~24年度に小学校入学予定の子どもを持つ保護者に行ったアンケート調査で、自由記載欄に記入した約8割が市のランドセルの購入支援策に反発していることが分かった。市議会に提出したアンケートの回答を毎日新聞が分析した。アンケートには三つの選択肢から支援策を一つ選ぶ項目もあり、購入費の補助金交付を求める回答が最多だった。市は対象家庭に補助金を支給する方針だが、保護者からの批判は根強い。(以下省略)
https://news.yahoo.co.jp/articles/42b7661f2751db388929cd2118b4763ba045c70d
アンケート結果は秩父市ウェブサイトに掲載されています。こうした結果がウェブサイトに掲載されるのは良い傾向です。
様々な媒体で報じられている通り、アンケート結果は(1)ランドセルの現物配布が17.3%、(2)ランドセル購入に対する補助金の交付が49.4%、(3) ランドセル購入クーポン券の配布が32.1%となりました。
この結果を受け、秩父郡内の販売店(5店程度)でランドセルを購入したら上限5万円を補助する支援策を検討しています。
北堀市長は「今回のアンケート結果をしっかりと受け止め、皆さんの意見を尊重した支援策を進めていきたい」と補助金の交付に切り替えた。市は今後、秩父郡市内の販売店で購入したランドセルの領収書を保護者に申請してもらい、上限5万円を補助する支援策を進めていく。
アンケートの結果を恣意的に捉えたとしか言い様がありません。子育て世帯へのランドセル補助ではなく、補助という名目での販売店支援が本当の目的の様に見えてしまいます。
約半数の保護者が希望した「ランドセル購入に対する補助金」とは、どの店舗で購入したランドセルに対しても補助金を交付して欲しいという想いが詰まっているでしょう。
秩父郡内に絞った場合は様々な弊害が生じます。遠方に居住する祖父母がランドセルを購入して孫に送りにくい、秩父郡内で欲しいランドセルを見つけても購入しづらい、割高であっても秩父郡内で事実上購入せざるを得ない等、自由な経済活動に反する施策です。
やはり真の目的は「販売店の支援」です。補助金額=販売店への売上補償です。
また、ランドセルを購入しない世帯(ランリュック等を使う、ランドセルを譲って貰った等)は対象となりません。
更には1度きりの予算措置であれば、次年度以降に入学する児童との差別が浮き彫りとなります。既に入学した児童は仕方ないとしても、「来年以降はありません」と言われた児童や子育て世帯は強い反発を抱きます。
このアンケートで思い出したのは、昨年末に国会で議論された「子育て支援給付金10万円」です。
当初は子育て用品へのクーポン配布が想定されていました。が、猛烈な批判を受け、最終的にはほぼ全ての自治体で10万円の現金支給となりました。使い勝手は現金が一番です。
自治体が行う子育て世帯への支援策として極めて効果が高いのは、「給食費の無償化」でしょう。大阪市が実施しています。年間5万円ほど必要だった給食費が掛からなくなり、非常に助かっています。事務費も削減されたと聞きます。
秩父郡内でのランドセル購入に対する補助は、余りに近視眼的だと感じました。どういった施策が必要なのか、広く子育て世帯の声を聞いて欲しいです。
この話に限らず、子育て世帯の声やニーズを聞かないままに子育て支援施策が決められてしまう事が非常に多いです。当事者無視で決定された施策は上手くいきません。