長年の悲願が遂に実現しそうです。

公立小学校の1学級の学級基準(1クラスの上限人数)が40年ぶりに見直されます。

既に35人学級が適用されている現1年生は2年生以降も「35人学級」となり、今後5年間を掛けて全学年が35人学級となります。

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(追記)
麻生財務大臣と萩生田文部科学大臣が合意しました。閣議決定等を経て、来年4月から実施されます。

公立小学校1クラス定員 40人以下から35人以下で合意

来年度・令和3年度予算案の決定に向けて麻生副総理兼財務大臣と各大臣による閣僚折衝が行われ、萩生田文部科学大臣との折衝では、少人数学級の実現に向けて、公立の小学校の1クラスの定員を40人以下から35人以下に引き下げることで合意しました。

麻生副総理兼財務大臣と各大臣との折衝は、午前10時半ごろから始まりました。

このうち、萩生田文部科学大臣とは、公立の小学校の1クラスの規模を小さくする「少人数学級」の実現などについて協議しました。

その結果、来年度から令和7年度までの5年間をかけて、公立の小学校の1クラスの定員を40人以下から35人以下に引き下げることで合意しました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201217/k10012768571000.html

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公立小学校、全学年35人学級へ 40年ぶり見直し 17日合意へ

 現在は40人(小学1年は35人)と定められている公立小中学校の学級基準について、政府は小学校に限り、全学年を来年度から5年かけて段階的に35人まで引き下げる方針を固めた。複数の政府関係者が明らかにした。17日に麻生太郎財務相と萩生田光一文部科学相が直接協議して合意する見通しだ。

 小学校の学級基準の一律引き下げが決まれば約40年ぶり。文科省は来年度の予算編成で小中学校の学級基準を一律で30人まで引き下げることを求めていたが、効果を疑問視する財務省は譲らず、小学校に限った「35人学級」の実現で折り合った。学級基準を定めた義務標準法の改正案を年明けの通常国会に提出するものとみられる。

 公立小中学校の教員の配置には、学級数や児童生徒数に応じて決まる「基礎定数」と、習熟度別指導や複数の教員で教える「チームティーチング」など特定の目的で追加配置(加配)する「加配定数」がある。

 学級基準が引き下げられれば学級数が増え教員増が必要になるが、今回は、加配定数の一部を基礎定数に振り替えることによって補い、「35人学級」を実現する方向で調整しているという。

 少人数学級の導入論が浮上したのは、新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけ。今春、長いところで約3カ月間の休校を余儀なくされたことを受け、身体的距離を取りながら子どもたちが安心して学べる環境を整えるべきだとの声が与野党や地方自治体から上がった。

 こうした流れもあり、政府が7月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」には「少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備」が明記された。文科省は来年度予算の概算要求に、必要額を示さない「事項要求」として盛り込み、財務省との間で折衝が進められていた。

 公立小中学校の学級基準は1958年の義務標準法の制定時は「50人」だったが、64~68年度の5年間で「45人」、80~91年度の12年間で「40人」に引き下げられた。しかし、その後は少人数化の議論が停滞し、2011年度に小1の35人学級が実現しただけにとどまっていた。

https://mainichi.jp/articles/20201216/k00/00m/010/284000c

少人数学級の実現は萩生田文部科学大臣が繰り返し主張していました。

少人数学級「30人学級を目指すべきだ」 文科相が明言

来年度予算編成で文科省が要求している少人数学級について、萩生田光一文科相は11月13日、閣議後の記者会見で、「令和の時代の新しい学校の姿として、私としては30人学級を目指すべきだと考えている」と述べ、義務標準法を改正して学級編制を現在の40人から30人に引き下げるべきだとの考えを明らかにした。学級編制の引き下げには、教職員定数の増加が財政負担増につながりかねないとして財務当局が慎重な姿勢をとっている。萩生田文科相が「目標の目安」として30人学級の実現を明言したことで、少人数学級を巡る文科省と財務省の予算折衝は一段と激しさを増しそうだ。

萩生田文科相は、学級編制の引き下げを求める理由について、「新たな感染症対策のため、現状の教室の広さの中で、身体的距離を確保することがまず必要。また教育のさらなる質の向上を図るためには、1人1台端末を活用し、1人1人に応じたきめの細かな指導を行う必要がある」と説明。感染症対策とICTを活用した個別最適な学びという、2つの狙いを学校現場で実現するため、「令和の時代の新しい学校の姿として、私としては30人学級を目指すべきだと考えている」と、きっぱりと話した。

https://www.kyobun.co.jp/news/20201113_06/

大臣は「30人学級を実現したい」と主張していました。が、現1年生の学級定員を持ち上げる形で実現でき、少子化によって余剰となる教職員をそのまま振り替えられる35人学級の実現で折り合った様子です。

本当に忙しい学校教員

小学校の先生は本当に忙しいです。とりわけ人数が多いクラスを受け持つと、日々の学習指導等に忙殺されると聞きます。宿題やテストの丸付け作業は、児童数がそっくり反映されますね。

先生方との話で何度も出てきたのは、「今年から完全実施された学習指導要領への対応」です。

小学校の授業時数は6年間で現行より140コマ増えて5785コマとなり、前回の改訂から2回連続の増加となる。これは、小学3、4年生に「話す」「聞く」を中心に教科以外の教育活動(領域)として学習する「外国語活動」を、これまで小学5、6年生で行っていたものを前倒しして週1時間(年間35コマ)行い、小学5、6年生は「話す」「聞く」に加えて「読む」「書く」も含めた「外国語」と正式な教科として週2時間(年間70コマ)行うことにより、授業時数が増加したことによるものである。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%A6%E7%BF%92%E6%8C%87%E5%B0%8E%E8%A6%81%E9%A0%98#2020%E5%B9%B4%EF%BC%88%E4%BB%A4%E5%92%8C2%E5%B9%B4%EF%BC%89_-

授業時間が増え、外国語に代表される様々な内容が加わりました。「もう付いていけない」と笑いながら話していました。

これに加えて、今年は新型コロナウイルスへの対応が加わりました。ソーシャルディスタンスを保てません。

特に大変なのは高学年でしょう。狭い教室に40人近い高学年の児童が在籍していると、教室に圧迫感があります。机を置くスペースも十分でなく、荷物の置き場所も足りません。

また、1年生と2年生以上の学級基準が異なる事によって混乱が生じたという話も聞きました。

数年前に近隣校の1年生が「38人」だったので2クラスが編成されたのですが、2年生からは1クラス編成となり、環境が大きく変わってクラスが荒れたと聞きました。

1クラス20人未満だと先生の目は十分に行き届き、子供達ものびのびと活動できるでしょう。しかし、1クラス40人近くだと目は届きにくく、子供同士のトラブルも指数関数的に増加します。

子供がそのクラスに在籍している方は「こんな事だったら、1年生から40人クラスが良かった。1年生と2年生で基準が異なるのはおかしい。」と話していました。同感です。

志木市は少人数学級から複数指導へ転換

懸念もあります。

35人学級に必要な教員は、習熟度別指導等に従事している加配定数から各クラスへ振り替えるとされています。

私が小学校へ通っていた数十年前と比べると、現在の小学校には学級担任を持たない先生が数多く存在しています。教務主任は昔からあったかと思いますが、習熟度別担当・特定教科担当・学習指導員(非常勤)・副担任等、肩書きが多彩になっています。

お世話になっている学校では、主に算数の授業を習熟度別に行っているそうです。算数が得意な児童と不得意な児童を分け、それぞれの授業を学級担任と習熟度別担当が受け持っています。

子供は「とても分かりやすい」と好評です。自分の学力に見合った授業が行われ、少人数なので質問もしやすいそうです。

一足早く少人数学級を導入したものの、廃止した自治体もあります。埼玉県志木市です。小学校常勤講師(ハタザクラ教員)の採用倍率が低下し、指導力不足が顕在化したそうです。

 埼玉県志木市は市費で教員を雇用し、全国に先駆けて〇二年度から独自に小学校での少人数学級を実践してきたが、一八年度に廃止した。「採用倍率が当初の二十倍から一倍程度まで下がり、指導力不足の教員が出てきた」(市教育委員会)ためで、現在は授業に応じて一つのクラスに複数の教員を配置する「少人数教育」に転換している。

https://www.chunichi.co.jp/article/161926

●持続困難となってきた「少人数学級編制」「少人数学級編制制度」は、以下のような大きな問題があり、持続することが困難となりました。

(1)「ハタザクラ教員」の採用確保が困難になってきたこと制度開始当初は20倍を超える応募があったものの、現在では採用予定者数を確保することが困難(倍率1倍台)なくらい、応募者が激減しています。

(2)指導力に関する問題が顕在化してきたこと採用倍率が下がったことで、残念なことですが、ハタザクラ教員の指導力に関する問題が看過できないような状況になってきました。保護者から「ハタザクラ教員の中には、経験も浅く担任としての指導力に不安がある。」という声もでており、実際クラス担任を続けることが難しく1学期で辞職した教員の事例や、指導力不足の教員を助けるために他の教員がサポートに入った結果、学年全体の教員に負担がかかった事例などがありました。

「複数・少人数指導体制」の制度について

◎すべての小学校に2人ずつの市費教員(スマート教員)を配置します。→1、2年生、3、4年生にそれぞれ小学校教員免許を持つ教員を一人ずつ配置し、子どもたちの実態に合わせた様々な授業形態を可能にします。

◎学校の規模や状況などに応じて、さらに4校に各1名のスマート教員を配置します。

◎合計で20人のスマート教員を採用します。→これまでの「ハタザクラ教員」の平均採用数は14人です。新しい制度に変わり、採用数、予算ともに充実した指導体制を整えます。

◎担任についてはすべて埼玉県の本採用等の教員が受けもちます。スマート教員は担任を受けもちません。→クラスの実情に応じ、授業の進め方や児童の様子などについて、担任と連携をとりながら進めていきます。

https://www.city.shiki.lg.jp/_resources/content/86935/20190620-094249.pdf

小学校の担任に常勤講師を充てる計画は、常勤講師の志望者に正規職員と遜色ない能力の人物が存在しているのが前提でした。

しかし教員人気の低下、都道府県教委による正規職員の採用増、民間企業の採用増等により、当初予定した採用計画が達成できなかったと考えられます。

保護者目線としては「学級担任は正規職員を充てて欲しい」が本音です。

35人学級に必要な担任は他の業務に充当されている教員を振り替えるとの事なので、志木市の様な事例は考えにくいです。

教員採用倍率低下への懸念

ただ、多くの自治体で教員採用倍率は低下しています。大阪市の中学校教員では2倍を切る科目が相次いでいます、講師も集まりにくくなっています。

最も採用倍率が低いのは中学校(家庭)の1.7倍、次いで高校(公民・福祉共通)の2.0倍、中学校(国語)の2.1倍、中学校(理科)の2.2倍、中学校(数学)の2.3倍、中学校(特別支援学級)の2.3倍です。

https://yodokikaku.net/?p=38275

35人学級と同時に実現する必要があるのは「教育現場の非ブラック化」でしょう。働き方改革や待遇向上等、できる事はたくさんあります。