「子連れ出勤」政府後押しへ モデル事業の補助率アップ
宮腰光寛少子化担当相は15日、子どもと一緒に仕事をする「子連れ出勤」を政府として後押しする考えを表明した。自治体向けの地域少子化対策重点推進交付金の中で新たに重点課題と位置づけ、補助率を従来の2分の1から3分の2に引き上げる方針だ。
子連れ出勤を採り入れている授乳服メーカー「モーハウス」(茨城県つくば市)を視察した後に記者団に語った。
子連れ出勤など、子育てと仕事の両立を図る職場環境づくりを広めるため、自治体がモデル事業をする時の費用やその成果を普及啓発する事業などを対象に補助率を引き上げる。内閣府は2018年度2次補正予算案に同交付金として16億円を計上。そのうちの一部をあてる考えだ。
宮腰氏は、乳児を抱えながら事務仕事に取り組む従業員の様子を視察。「人手不足のなかで、子供を産み育てやすい環境を作っていくことは企業としても重要。全国に広めていけたら」と話した。
宮腰大臣が視察した事業は、つくば市が実施している「子連れ出勤モデル事業」です。
子連れ出勤、新しい形を提案します-。つくば市で、市内の子連れ出勤などを推進する「子連れ出勤モデル事業」が始まった。親が子どもを「そばに置いて」仕事をする働き方を勧める事業で、子連れ出勤、保育の在り方として一般普及させることが狙い。子どもを社内の保育所などに預け、親が別の場所で仕事をする働き方とは異なる。初年度となる本年度は、市内3事業所をモデルとして導入することが決まっている。
子どもをそばに置いて仕事をすることで、▽子どもの日々の成長を間近で見届けることができる▽保育所などへ子どもを預けに行く朝の送迎時間がなくなる▽母乳育児中の場合、直接授乳できる▽育休中にも子連れ出勤で少しずつ仕事に出て、復職しやすくなる-などのメリットがある。
昨年3月に市が無作為で1000人に実施した市民・事業所意識調査で、子どもをそばに置いて働く子連れ出勤に対して、4割強が家庭に良い効果があると回答したことなどから、本年度からのテスト導入が決まった。
導入支援を担当するのは、市から委託を受けたNPO法人子連れスタイル推進協会。授乳服メーカーのモーハウス(同市梅園、光畑由佳代表)が同協会の母体で、同様の子連れ出勤を20以上年前から実施している同社のノウハウを生かし、(1)導入前の環境整備(2)職場の現状調査(3)子連れ出勤する本人や職場管理職へのヒアリング、研修(4)各事業所の事情に対応したマニュアル作成-などを行い、導入を検討する事業所を全面的にバックアップする。
4月から導入を始めた同市上大島の業務用チョコレート会社、東京フード(丹羽弘社長)では、子連れ出勤日の今月23日、本社1階の職場で社員らが働く傍ら、総務課の宮越七奈さん(32)が1歳1カ月の息子を左手に抱え、右手でパソコン事務仕事をこなした。職場内には、子どもを寝かせるマットを置くスペースも設けられている。
入社13年目の宮越さんは「周りに気を使わせてしまうこともあるが、職場の皆さんの理解がありがたいし、仕事をさせてもらえる喜びもある」と話す。同社は本格導入も視野に入れ6月末まで、この働き方を試す。
本年度、同事業に参加する市内の事業所は同社のほか、認定こども園栄幼稚園(松塚)、関彰商事つくば本社(二の宮)。市では今後、導入環境を整え、多くの事業所の参加を目指す。市企画経営課では「子育ての一つの手法として、新たなモデルを提供できれば」と、広がりに期待している。
https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=15275052971382
一部の事業所が自主的に子連れ出勤制度を導入し、これをモデル事業としてテスト・検証する意義はあるでしょう。
子連れ出勤のメリットやデメリットを比較し、有意義な効果が認められれば広く水平展開できます。
朝日新聞の記事を読んで、少し気になった箇所がありました。
『「子連れ出勤」を政府として後押しする考えを表明した』と『自治体がモデル事業をする時の費用やその成果を普及啓発する事業などを対象に補助率を引き上げる』という部分です。この2点は直接結びついているわけではありません。
補助率が引き上げられる見通しなのは「子育てと仕事の両立を図る職場環境づくりのモデル事業や普及啓発事業」です。「子連れ出勤」そのものではありません。
では、大臣はどう考えているのでしょうか。視察現場での発言が残されています。
宮腰担当相は、同所で実際に子連れ出勤をしている従業員らと意見交換。約6~9カ月の子供をそばに置いて働く母親たちに「子連れ出勤のメリットは」「旦那さんは何と言っているか」などと質問。「赤ちゃんの顔が幸せそう。乳幼児は母親と一緒にいることが何よりも大事ではないかと思う」と語った。
宮腰担当相は視察後、「新しい施設を整備する必要がなく、企業の規模にかかわらず取り組むことができる。想像以上に『これなら、どこでもできるのではないか』と実感した」と感想を話し、「この取り組みをモデルとして、全国へ広めていければと思う」と語った。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190116-00000003-ibaraki-l08
「乳幼児は母親と一緒にいることが何よりも大事」「新しい施設を整備する必要がなく、企業の規模にかかわらず取り組むことができる」「どこでもできる」「全国へ広めていければ」との発言は、唖然としました。
無理です。はい。
子連れ出勤を導入している授乳服メーカー「モーハウス」を取材した方が、代表者の考えを呟いています。
#子連れ出勤 を実施しているモーハウスにこちらも子連れで取材したことがあります。代表の光畑さんに「私は子連れだと集中できなくて…」と質問すると「編集は無理ですね。できる仕事とできない仕事があります」と言われ納得。モーハウスも歩くまで・給与も別、など無条件に認めているわけではないそう
— 高川朋子 (@darkmatter_tomo) January 16, 2019
子供がいたら仕事に集中できません(個人の感想です)
私自身は例外的な場合を除いて、子連れ出勤には否定的です。最大の理由は「子供がいたら仕事に集中できない」からです。
0-1歳の頃なら片時も目が離せません。子供が寝ている最中にも気を遣い、全く仕事になりません。起きたら起きたで食事の用意やオムツ交換が待っています。本当に疲弊します。
2-3歳児は更に大変です。昼寝する時間が減り、起きている時間が長くなります。休み無く動き回り、何も無くても親や周囲の大人に近寄ってきます。話しかけられたら勿論、視界の中で動くだけでも集中力を削がれます。
4-6歳児になると、少し楽になります。テレビアニメや絵本を見ている時間は、比較的平和に仕事が進みます。しかしながら親に話しかける頻度も高まり、作業に思う様に集中できません。
また、子連れ出勤した職場の同僚も気を遣います。
初日は物珍しさで構ってくれる事も多いでしょう。が、泣きわめいたり歩き回ったりすると、イライラする方が増えていくでしょう。耐えられない方もいます。職場全体の業務効率が下がる恐れがあります。
職場へ連れて行くのも大変です。自動車出勤ならまだしも、電車で一緒に出勤するのはさぞ大変でしょう。毎日の様に満員電車に乗車して保育所へ登園している話を聞くと、過酷さにゾッとします。
子供にとっても親の職場は快適では無いでしょう。思う様に動けず、遊び道具もありません。楽しい環境ではありません。
子供が日中を楽しく安全かつ快適に過ごすには、子供向けに整備された場所が一番です。それは保育施設です。子連れ出勤しても、誰も喜びません。
セーフティーネットとしての子連れ出勤
しかしながら、例外的に子連れ出勤が許容されるべきケースもあるでしょう。利用している保育施設が利用できず、他に預ける先も無く、どうしても出勤しなければならない場合が考えられます。
代表例は「小学校の学級閉鎖」でしょう。自分の子供は健康なのに、欠席する児童が多くて数日ほど登校できなります。
朝から夜まで小学生1人で留守番させるのは躊躇います。有給休暇を利用したくても、外せない打ち合わせが設定されている時もあります。
そうした緊急時に有効なのが「子連れ出勤の許容」でしょう。やむを得ない事情がある場合に子連れ出勤が可能であれば、助かる子育て世帯は少なくありません。いわば「最後のセーフティーネット」としての機能です。
止むに止まれぬ場合、または選択肢の一つとしての「子連れ出勤」は否定されるものではありません。子連れ出勤を幅広く許容する事業所があっても良いでしょう。
しかし、「子連れ出勤が当然」という社会は歓迎できません。何よりも子供の福祉に反しています。
まずは子供が安全に楽しく過ごせられる保育施設を十分に整備しましょう。親は仕事に集中して稼ぎ、納税します。それで十分ではないでしょうか。