都市部を中心に保育園児を散歩中や公園遊び中に見失い、置き去りにするケースが相次いでいるそうです。その背景には園庭が無く、近隣の児童公園を代替園庭として利用する保育所等が増えている実態があります。
散歩中の保育園児「置き去り」4年間で94件 東京都が注意喚起
保育園の散歩中、園児を公園などに置いたまま、気づかずに戻ってきてしまう――。こんな「置き去り」事案が保育現場で多発している。
朝日新聞社の取材によると、東京都に報告されただけで2017~20年度の4年間で94件(迷子などを含む)。都は今年度から、保育園向けの資料に「置き去り事故の報告が非常に増えている」と明記し、注意を呼びかけ始めた。(以下省略)
保育園散歩、置き去りにされた3歳息子 1時間半1人「背筋凍った」
https://digital.asahi.com/articles/ASQ275CRHPDGUTFL001.html
「一番怖いのは慣れ」園児の置き去りどう防ぐ?一緒に歩き見えたこと
https://digital.asahi.com/articles/ASQ275CRHPDGUTFL001.html
東京都の資料は下記です。強調しています。
朝日新聞には様々な置き去り事例が掲載されています。
・同じ公園にいた他の保育園のグループに交ざっているのを保育士が気付かなかった
・公園を飛び出していなくなった園児を点呼で発見できなかった
・点呼後の一瞬の隙に園児が列を離れてしまった
・園児が保育園から外に飛び出して見失う
・保育園の散歩で行った公園に置き去りにされ、同じ公園にいた別の園の保育士に保護された
・3歳児が公園に置き去りにされ、約1時間半後に警察に保護された
・保育園の散歩で行った公園に置き去りにされた。駐車場で1人泣いていた長男を近所の人が見つけて警察に知らせた。
・公園からの帰り道、2歳児2人が列からはぐれて取り残された。約20分後、近くのコンビニで警察が保護した。
・公園でシャボン玉を追いかけ、集団を離れた0歳児に気がつかなかった。帰る際に他園の保育士に指摘される。https://digital.asahi.com/articles/ASQ275CQKPDHDIFI007.html
https://digital.asahi.com/articles/ASQ275CPSPDHDIFI009.html
ゾッとする事例ばかりです。本当に怖いです。最終的には無事に保護されたケースばかりですが、これ以外に事故や犯罪に巻き込まれたケースがあるかもしれません。いや、皆無と考えるのは不自然です。
不可解なのは「集団を離れた0歳児」です。0歳児は歩けたとしても転んでばかりです。公園で歩かせるものでしょうか。避難車やベビーカーに乗せてお散歩するものばかりと思っていました。
歩いている0歳児から目を離し、他園の保育士に指摘されるのは重大な問題です。全く見ていなかった訳ですから。どんな事情があれ、擁護できません。
置き去り事件が多発する理由の一つは「無園庭保育所」です。都心部を中心に増加しています。特に地域型保育事業の大半は園庭を有していません。代わりに近隣にある公園等を代替園庭とし、設置認可を申請しています。
子供達は本当に元気です。朝から夕方まで園舎で過ごすのではなく、外でしっかりと身体を動かすのは極めて重要です。その為には、徒歩数分の場所にある公園へ移動しなければなりません。
「徒歩数分ならすぐに移動するのは容易い」と考えている方もいるでしょう。自分の子供1-2人ならそうかもしれません。しかし、考えや発育も大きく異なる園児数十人を移動させるのは、本当に大変です。
しかし見守るべき保育士数は限られています。担任の保育士に加え、若干のプラスアルファがある程度でしょう。保育士配置基準は3歳児は園児20人に保育士1人、4-5歳児は園児30人に対して保育士1人です。公園で動き回る園児を見守るには人出が余りに足りません。
公園では様々なトラブルも起こりがちです。代表例はケガです。治療や健康観察に人手が取られる度、見守りする保育士は減っていきます。
特に都市部の公園では、一度に複数の保育所等の園児が入り乱れる事があるでしょう。大阪市内でもビジネス街が広がる中央区では頻発しているのではないかと危惧しています。現場を確認したわけではありませんが、周囲に園庭がない保育施設が多い中大江公園や谷四錦郷公園は少し心配です。
散歩前後の点呼は本当に重要ですね。お世話になっている保育所では、出発時等に園児の人数を確認し、園内のホワイトボードやお散歩ノートに記入する仕組みとなっています。また、園児には制帽を被せ、頭の動きや人数を確認しやすい様にしています。
人数確認や点呼が出来ていないのは本当に怖いです。昨夏に福岡県内で園バスに置き去りされて園児が死亡した事件は、降車時の人数確認やバス内の点検を行えば防げました。
ここ数年で待機児童や入所保留児童は年々減少しています。地域の実情に応じ、問題解消の為に緩和した基準(無園庭等)を再び厳格化する考えも必要だと感じています。手狭な保育室や無園庭施設は、子供にとってプラスとはなりません。