大阪府における新型コロナウイルス感染症の爆発的感染拡大に歯止めが掛かりません。保育所や学校等では次々に臨時休業や学級閉鎖が発生しています。正常に運営できている施設がもはや少数派です。
大阪府の2月6日発表資料によると、軽症中等症病床の運用率が遂に100%を越えました。
既にほぼ最終段階まで病床を拡充したにも関わらずの数字です。軽症中等症病床を更に拡充するのは極めて困難です。残された方法は大規模医療・療養センター(インテックス大阪)の中等症病床ですが、必要な医療従事者が集まるのでしょうか。
酸素を必要とする患者のみ入院可
大阪府は入院患者を更に抑制します。入院対象を中等症Ⅱに絞り込みます。
大阪府保健医療室より入院対象を「中等症IIにしぼるよう」との通達あり。つまり、酸素が必要なければ基本的には入院対象となりません。いよいよ、災害時対応です。
— インヴェスドクター (@Invesdoctor) February 6, 2022
入院できるのは血中酸素濃度が93%以下だったり、酸素投与が必要な患者に限られます。厳格に絞り込まざるをえないほど、大阪府のコロナ入院病床は逼迫化しています。
保健所はオーバーフロー
大阪市保健所は機能不全に陥っています。学校や事業所等の濃厚接触者調査を諦めたのみならず、入力すべき発生届が12700件も積み上がりました。
陽性者全件把握の意義どこまで? 大阪市保健所 処理能力の「限界突破」 発生届入力遅れ計1万2700件
https://news.yahoo.co.jp/articles/a46b9e568d6f5a63e4144b3a4e00b3fc3e0bdeec
大阪市保健所は発生届の件数のみを入力し、年齢・性別・クラスター情報等は入力しない運用にと簡略化しました。大阪府内全体の年代別感染者数や大阪市内のクラスターが全く掴めなくなっています。感染の全体像や特に気を付けるべき場所等が分かりません。統計として信用できない状態です。
学校や保育所等・医療機関・保健所、いずれも限界に追い詰められています。
知事・市長・保健所長「オミクロンを怖がるな」
しかしこの惨状やオミクロン株の感染力を軽視し、「コロナはインフルエンザと変わらない」「2類から5類へ」「経済優先」と声高に訴える姿が目立っています。
まずは大阪市の松井市長や豊中市保健所の松岡太郎所長です。
第1波、第2波のときっていうのは、このコロナのウイルスの正体が非常に見えなかった部分もあります。今、この第6波まで来て、ウイルスが変異する中で、今回のウイルスは感染力は強いけども毒性は弱いという形で見えてきているわけですから、ウイルスとしてはインフルエンザ的なウイルスではないのかなというのが、今、世の中の皆さんの捉え方だと思うんで。
https://news.yahoo.co.jp/articles/df299a28ba3ea1355f86184ae19d9a58f8647a36
維新・松井氏「コロナ5類指定協議を」 経済に軸
https://www.sankei.com/article/20220111-HDQFZVOTIBM3DK2SYT3ARU76BQ/
保健所長です。
オミクロン株については、季節性インフルエンザと致死率が変わらない、とのデータが蓄積しつつあります。「コロナをどの程度恐れるべきか」の大きな転換点が近づいていると感じています。
保健所は引続き重症化リスクのある方への支援に注力します。
冷静な判断や行動をお願いします。— 豊中市保健所【公式】 (@toyonakame) January 31, 2022
吉村知事は緊急事態宣言を要請する基準たる「病床使用率5割」に達した後に、基準を「重症病床使用率実質4割」へと変更しました。ゴールポストを動かしました。
病床使用35%で「まん延防止」 5割なら緊急事態―吉村大阪知事
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022011401098&g=pol
こうした発言には「オミクロン株の特性を踏まえる」という枕詞が付いていますが、「(デルタ株より)軽視している」のは紛れもない実態です。
更には在阪局はこれらの発言を強く報じます。ニュースや情報番組の影響力は極めて強いです。特に知事は頻繁に番組に出演しています。
これらの発言等が相まって、府民や市民は「オミクロン株は怖くない、これまで通りの生活や経済活動を継続する」というメッセージを受け取ります。そして行動します。
日常と非日常
先週後半や週末は、近隣の住宅街・最寄駅や周辺の居酒屋・市中心部の繁華街の様子を見てきました。住宅街は閑散としてましたが、食料品スーパーは明らかに混んでいました。
駅周辺の居酒屋は二極化していました。サラリーマン客が多くを占めていた店は閑古鳥が鳴いていました。一方、地元の方が常連となって通っている店は、以前と変わらぬ賑わいを見せていました。後者の方はコロナウイルスへの感染は避けられないでしょう。
駅の改札口を出入りする人は少なく、電車内も空きが目立ちました。普段は座れない車両に簡単に座れました。
市中心部の繁華街は若い人の姿ばかりでした。高齢者は殆どなく、家族連れも数えるほどでした。高齢者は街中への移動を既に相当に控えています。反対に若い人に人気があるカフェや飲食店は満席という店舗を何カ所も見かけました。二極化が進んでいます。
大阪は医療崩壊がじわじわと進んでいます。来ない救急車、往診不可、空きが無い軽症中等症病床、滞留する重症病床、どこも悲鳴を上げています。
【2月7日 救急出動体制がひっ迫しています!】
現在、大阪市内で救急対応件数が多発しております。緊急度の高い事案については、いち早く出場しますが、通報の段階で少しお待ちいただく場合もあります。なお、救急車の出場状況により、随時出動いたしますのでご理解とご協力をお願いします。
— 大阪市消防局 (@Osaka_Fire_Dept) February 7, 2022
今日、コロナ往診6件、ラゲブリオ2人使用、酸素導入3人‥
保健所センターから、病院は無理です‥
医療崩壊です‥— ようこ (@ilprqSlxBrK3qsw) February 7, 2022
しかしながら、こうした悲鳴が「2類から5類へ」「インフルエンザ」「経済優先」「部活継続」といった声にかき消されている様に感じてしまいます。
様々な数字を見る限り、大阪は非常事態です。しかし、街中ではそうした雰囲気をあまり感じられません。日常と非日常が同時に進行しています。余りの乖離に戸惑います。