子供の虐待事案等を取り扱った令和2年度全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議資料が公開されています。

同会議に虐待防止対策推進室から提出された資料は全800ページ、そのボリュームに圧倒されました。

子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について

子ども虐待による子どもの死を、決して無駄にすることなく、今後の再発を防止するため事例を分析・検証し、明らかとなった問題点・課題から具体的な対応策の提言を行うことを目的として、平成16年10月に社会保障審議会児童部会の下に「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」(以下「本委員会」という。)が設置され、これまで15次にわたって報告を取りまとめてきた。

本報告では、平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間の死亡事例等について分析・検証を行うとともに、地方公共団体で行われた検証について分析し、具体的な改善策を提言している。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000677535.pdf

重要だと感じた箇所を引用してご紹介します。

対象事例をみると、10 代の実母が妊娠について誰にも相談できずに出産・遺棄に至った事例、生活の状況から他者に妊娠を知られたくない実母が一人で出産し遺棄に至った事例など、妊娠自体が他者に気づかれていないという事例が少なくない。医療を受けず、周囲からの支援がない中で出産することは、女性にとって大きな健康リスクに直面することである。

死亡した子どもの性別について、心中以外の虐待死事例では、男が30人、女が15人、不明が9人であった。

死亡時点における子どもの年齢について、心中以外の虐待死事例では、「0 歳」が22人(40.7%)で最も多く、3歳未満は31人(57.4%)と半数を超える状況であった。第1次報告から第16次報告までの推移をみると、第16次報告までの全てで「0歳」が最も多い結果となった。

さらに、死亡した0歳児を月齢別にみると、心中以外の虐待死事例では、月齢「0か月」が7人(31.8%)であり、0歳児において最も高い割合を占めた。

子どもの死因となった虐待の類型について、心中以外の虐待死事例においては、「ネグレクト」が25人(46.3%)、「身体的虐待」が23人(42.6%)であった。また、子どもの年齢を3歳未満と3歳以上で比較すると、身体的虐待の割合で3歳以上は90.9%であり、3歳未満の身体的虐待の割合38.7%より多かった。ネグレクトの割合は3歳未満で58.1%であった。

ネグレクトにより死亡した事例におけるネグレクトの内容について、心中以外の虐待死事例では、「遺棄」が11人(44.0%)と最も多く、次いで「家に残したまま外出する、車中に置き去りにするなど子どもの健康・安全への配慮を怠る」が10人(40.0%)であった。第15次報告と比較すると「食事を与えないなどの養育放棄」の人数及び割合が増加した。

子どもの直接の死因について、心中以外の虐待死事例では、「頭部外傷」が10 人(有効割合28.6 %)注3)と最も多く、心中による虐待死事例では、「頚部絞扼による窒息」「溺水」「中毒(火災によるものを除く)」が5人(同29.4%)と最も多かった。

主たる加害者について、心中以外の虐待死事例では、「実母」が25人(46.3%)と最も多く、次いで「実父」が9人(16.7%)であった。第15次報告と比較すると、「実母」の人数は変化なく、「実父」の人数と割合はともに減少し、「養父」と「継父」の人数と割合が増加した。

心中による虐待死事例における加害の動機について、「保護者自身の精神疾患、精神不安」が11人(57.9%)と最も多く、次いで「育児不安や育児負担感」が7人(36.8%)であった。

妊娠期・周産期の問題について、心中以外の虐待死事例では、「遺棄」が19人(35.2%)と最も多く、次いで「予期しない妊娠/計画していない妊娠」が13人(24.1%)、「妊婦健診未受診」が12人(22.2%)であった。

特に、「若年(10代)妊娠」についてみると、我が国における全出生数のうち母親の年齢が若年(10代)の割合は約1.3%前後で推移注4)している。一方で、心中以外の虐待死事例における「若年(10代)妊娠」の平均割合は17.5%であり、その割合の高さは顕著である。

子どもの年齢別にみると、心中以外の虐待死事例では、日齢0日児の全ての事例が「母子健康手帳の未交付」及び「妊婦健診未受診」であった。

乳幼児健診の受診状況について、心中以外の虐待死事例では、「3~4か月児健診」の未受診者が4人(有効割合16.0%)、「1歳6か月児健診」の未受診者が2人(同12.5%)、「3歳児健診」の未受診者が1人(同10.0%)であった。予防接種の接種状況は、「BCG」の未接種者が16人(同48.5%)であった。 他方、心中による虐待死事例では、「1歳6か月児健診」の未受診者が2人(同28.6%)、「3歳児健診」の未受診者が1人(同12.5%)であった。予防接種の接種状況は、「水痘」の未接種者が3人(同42.9%)であった。

養育者の世帯の状況について、心中以外の虐待死事例では、不明を除くと「実父母」が30例(58.8%)と最も多く、次いで「一人親(未婚)」が7例(13.7%)であった。

養育者(実母)の心理的・精神的問題等について、心中以外の虐待死事例では、「養育能力の低さ」が11例(22.0%)と最も多く、「育児不安」「うつ状態」がそれぞれ6例(12.0%)であった。第3次報告から第16次報告までの推移をみると、「養育能力の低さ」「育児不安」が継続して多い傾向にある。

心中による虐待死事例では「育児不安」が6例(50.0%)と最も多く、次いで「産後うつ」「うつ状態」がそれぞれ3例(25.0%)であった。第3次報告から第16次報告までの推移をみると、「育児不安」「うつ状態」が継続して多い傾向にある。

なお、「養育能力の低さ」とは、子どもの成長発達を促すために必要な関わり(授乳や食事、保清、情緒的な要求への応答、子どもの体調変化の把握、安全面への配慮等)が適切にできない場合としている。

引用した文章から、児童虐待に関するキーワードが浮かび上がってきます。

・10代の妊娠
・男児
・0歳児
・0日
・3歳未満児はネグレクト、3歳以上児は身体的虐待
・放棄、自宅放置
・頭部外傷
・養父と継父
・予期しない妊娠/計画していない妊娠
・妊婦健診未受診
・母子健康手帳の未交付
・幼児健診の未受診、BCG未接種、水痘未接種
・ひとり親
・養育能力の低さ、育児不安、鬱状態

ここ数年間の間に発生した数々の虐待事案の多くでも、こうしたキーワードが重なっています。

ハイリスク要因は明らかになっています。こうした要因がある家庭を見つけ出し、適切な支援に繋げていくのが重要でしょう。

ご紹介したページには、他にも多数の資料が掲載されています。お時間がある方はぜひ読んでみて下さい。