いよいよ来週から「幼児教育・保育の無償化」が実施されます。

一方、これと同時に「幼稚園保育料の値上げ」を行う施設が少なくありません。何故でしょうか。

愛知 私立幼稚園の半数値上げへ

10月から幼児教育の無償化が始まりますが、今年度から来年度にかけて愛知県内の半数の私立幼稚園が授業料などを値上げすることが愛知県への取材でわかりました。
消費税の引き上げに合わせて10月から始まる、幼児教育と保育の無償化は、幼稚園や認可保育所などに通う3〜5歳までのすべての子どもと住民税が非課税の世帯の0〜2歳までの子どもが対象です。

このうち、独自の利用料を定めている私立幼稚園は、月額2万5700円を上限に無償化されます。

こうした中、県内に360ある私立幼稚園のうち、約半数にのぼる177の園で、今年度から来年度にかけて授業料や入園料などを値上げすることが愛知県への取材でわかりました。
理由として、教諭の処遇の改善や、設備の老朽化への対応、消費税率の引き上げなどを挙げているということです。

私立幼稚園は授業料をそれぞれの園が独自に設定することができ、無償化が始まることで保護者の負担は増えないケースが多いということです。

値上げについて、愛知県は「値上げの届け出は、例年より増えており、無償化に合わせた便乗値上げにならないよう使い道は確認している。幼稚園は利用者にしっかり説明してほしい」と話しています。

【疑問抱く保護者も】

10月から授業料を値上げする名古屋市内の幼稚園に子どもを通わせている保護者の1人は、値上げの理由について園から具体的な説明がなく、無償化に伴う便乗値上げではないかと疑問を抱いています。

保護者によりますと、無償化に伴い授業料を無償化上限の25700円まで引き上げるという文書が配られたあと、理由について幼稚園の理事長や園長に尋ねたところ「使い方は幼稚園に任せてほしい」などと具体的な説明はなかった。

保護者は「値上げをしたお金を子どもたちにどのように使うか具体的な説明が全くなく無償化を機に行う便乗値上げなのではないかと考えてしまう。授業料が無償になるのは家計の負担が減りありがたい制度だが幼稚園の経営を支えるために税金が使われるのであれば本来の趣旨から外れている」と話しています。

幼稚園の理事長は取材に対し「老朽化した設備を取り替えるなどに費用が必要で、無償化のタイミングで値上げをすることで保護者の負担が増えるわけではないので保護者が何を気にしているか分からない」と話しています。

【値上げの理由は】

複数の幼稚園になぜ値上げが必要なのかを取材すると、値上げした分の使い道については▼「老朽化した施設を修繕するための費用が必要」▼「教育を充実させるため人件費や設備費などにあてる」などの回答があり、今回値上げする園が多い背景として「これまでは値上げをするとほかの園に子どもが流れてしまう心配もあり、経営をギリギリの状態でやってきたところもあると思う」という話も聞かれました。(以下省略)

https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20190925/3000006879.html

幼稚園保育料の値上げは愛知県だけに限られた話ではなく、全国各地で行われていると推測されます。

値上げに対しては様々な意見があります。

多くの幼稚園は園児募集に苦労しています。殆どの地域で少子化が進行し、共働き世帯の増加によって保育所への入所希望者が増加している為です。

こうした状況では、幼稚園保育料の値上げを打ち出すのは困難だったのでしょう。更なる園児離れを助長しかねません。

とは言え、人件費を初めとする物価の上昇が続いています。いつかは適正水準への値上げを決断しなければならなかったのでしょう。

2019年10月から導入される「幼児教育・保育の無償化」において、新制度未移行(私学助成)幼稚園の保育料が月額25,700円を上限として無償化されます。

上限額の範囲内での値上げであれば、保護者の負担額は無償のままです。

しかしながら、保護者負担が変わらないとしても「値上げ」には変わりありません。本当に職員人件費や設備費用に充てられるのでしょうか。

必要なのは値上げに対する具体的かつ丁寧な説明です。

経営状態や値上げによる改善内容を説明しなければ、保護者の理解を得るのは難しいでしょう。負担が増えなくても、白紙委任はできません。

また、幼稚園保育料以外の値上げも行われているという話も聞きます。幼稚園や保育所の実費負担部分(制服代や遠足代)が代表的です。

「保育料が無償化されるから、ほかの部分を値上げしても、トータルでの保護者負担は減少する」という意見を聞きました。足元を見られている様な気がしました。

幼児教育・保育の無償化は子育て支援・子供への投資という建前でした。

幼稚園の経営は税金によって下支えされるものであり、保護者負担が増えなくても値上げは値上げです。

今後、もしも「無償化による施設経営者の焼け太り」が報じられれば、大きな問題となるでしょう。