台風15号で被災した地域では、未だに休校・休園している学校・幼稚園・保育所等が少なくありません。

自然災害の襲来が間近に迫っている時、学校や保育所等は通常通りに開園すべきでしょうか、それとも休園すべきでしょうか。

台風、でも保育園は開いた 交通混乱「一つ間違えば…」

9日朝に千葉市付近に上陸した台風15号。首都圏の交通網がまひし、早い段階で休校を決めた学校も多かった。一方、そんな中でも開いていたのが保育所。通常通り開けるよう要請している自治体もあり、保育士が近くに前泊して受け入れ態勢を作ったところもあった。働く親にとっては心強い存在だが、安全確保などの観点から、ルール作りを求める声もあがる。

「早めの出勤をお願いします」。東京都港区の私立認可保育園の園長の女性は8日夜、職員にメールで連絡した。通常、午前7時15分には子どもの受け入れが始まるが、20人以上いる職員の大半は区外在住で、通勤に支障が出れば開園が遅れる恐れがあったためだ。

港区は、区内の認可保育所に、台風など災害時も通常通り開園するよう求めている。「仕事がある人の子どもの受け入れ先をなくすことはできない」という理由だ。

園長は、普段より2時間ほど早く、午前6時前に自宅を出て出勤。もう1人の職員も午前7時までに到着し、通常通り開園したという。「今回は職員の努力で対応できたが、台風が来た時間によっては職員の安全も危うかった。行政にも対応を考えてほしい」

区の担当者によると、どうしても職員が出勤できず、9日の開園を遅らせた所もあったという。「大規模災害や計画運休が増えており、災害時の対応も考える必要がある。ただ保護者への伝達方法など課題も多く、具体的な対応は考えられていない」と明かす。

都内で認可保育所や小規模保育所など16施設を運営するNPO「フローレンス」によると、一部の施設では保育士が8日夜に近くの宿泊施設に泊まり、翌日の開所に備えた。費用は法人で負担したという。

災害時などの対応について、小中高校の場合は、学校教育法施行規則で校長の判断で臨時に休校できることが定められ、休校の基準を設けている自治体もある。文部科学省によると、9日には東京、千葉、福島など11都県で国公立の約3600校が休校した。

一方、厚生労働省によると、保育所に関しては臨時休園に関する法律がなく、国の指針もない。「災害対応をする職業の保護者もおり、全てを閉めると困ることが想定される。一方で、保育士の通勤の負担や安全確保の問題もあり、線引きが難しい」と担当者。(以下省略)

https://digital.asahi.com/articles/ASM9C633ZM9CUTIL07H.html

台風15号が関東地方に襲来する報道を見ていて、「これだけの台風が直撃するのに、どうして学校や保育所等は休校・休園を決定しないのだろうか」と気になっていました。

当時の記録から、昨年に大阪を直撃した台風21号における大阪市立学校や保育所を取り巻く状況を記します。

日付時刻出来事
9/311:30JR西日本が「翌日午前10時までに全列車の運行を終了(計画運休)」と発表
16:30気象庁が「4日15時半に960hPa(最大瞬間風速55m/s)の勢力で大阪市を直撃する」と発表
18:00学校から配布されたのプリントに「明日は通常通りに授業を行います。暴風警報が発表されたら休業します。適切にご対応願います。」と記載。

保育所は「明日はできる限り自宅保育でお願いします。保育士も出勤できるか分かりません。仕事が休めない方は登園しても構いません。」と。

なお、大阪市立学校やお世話になっている保育所は、「暴風警報」が発表されたら休校・休園となります。

18:37大阪市の吉村市長(当時)が「市内の小中学校ですが、現時点で休校判断すべきです。教育委員会の再考の結果が出次第、公表します」とツイート
20:00この時間までに、堺市・明石市・宝塚市・奈良市・京都市・和歌山市等が公立小中学校の休校を発表
20:15吉村市長が「明日の大阪市立の学校園は、全て休校となります。」とツイート
20:30頃大阪市教育委員会ウェブサイトに「大阪市立学校園の臨時休業措置について」が掲載
9/46:00頃近畿・中国・四国等の広範囲に暴風警報が発表
14:00台風21号が神戸市付近に再上陸、15時までが風雨のピーク、ベランダの物が飛ばされ、窓ガラスが割れそうになった。
18:40大阪の暴風警報が解除。自宅や学校近辺は深刻な被害。通学路に危険を感じた。
20:00頃5日も約60校園が休業すると発表。学校ウェブサイトはアクセス集中で繋がらない。
9/58:00学校へ付き添って登校。通学路はゴミが散乱し、落ちそうな電線や瓦が目に付いた。
8:30保育所へ登園。昨日は停電したが現在は復旧、朝から職員総出で片付けをしたとの事。
20:00頃10校が6日も休業すると発表
9/10全学校園が通常通りに開業

大阪市立学校やお世話になっている保育所は、「暴風警報」が発表されたら休校・休園となります。台風が近づき、暴風警報が発表されるのは時間の問題という状況でした。

保育所の先生との会話では「暴風警報が発表されなければ開園するけど、恐らく発表されるから休園です」というやりとりもありました。仮に開園したとしても、通常通りの保育は難しいとの話もありました。

吉村市長「現時点で休校判断すべき」

一方、小学校からのプリントは杓子定規な内容でした。台風が接近している危機感が全く感じられませんでした。

これに問題を感じたのは、大阪市の吉村市長でした。「現時点で休校判断すべきです」とし、教育委員会に再検討を促した様でした。

これと前後して近隣市町村が続々と翌日の休校を発表し、大阪市もようやく発表しました。

ただ、発表方法はウェブサイト・ツイートに限られていました。緊急メールでの案内もなければ、夜のローカルニュースでの放送もありませんでした。

そして翌日、台風21号が大阪を直撃し、甚大な被害が生じました。

仮に朝の時点で暴風警報が発表されていなければ、帰宅できない児童・生徒・教職員が翌朝まで学校等に籠城する羽目になったでしょう。

自然災害時に恐ろしいのは、「帰宅困難により、子供を学校や保育所等に迎えに行けない」という事態です。

もしも会社等から動けなければ、翌朝まで教員や保育士等が子供と共に過ごさざるを得ません。職員や子供に非常に大きな負担が掛かります。

危惧した通り、台風が直撃した当日は、夜遅くまで鉄道は復旧しませんでした。ダイヤが正常化したのは、翌昼でした。

東京都港区役所「災害時も保育所を開けるべき」

上記朝日新聞の記事で驚いたのは、『港区は、区内の認可保育所に、台風など災害時も通常通り開園するよう求めている。「仕事がある人の子どもの受け入れ先をなくすことはできない」という理由だ』という部分です。

東京都のど真ん中にある港区の保育所を利用している方の多くは、港区・千代田区・中央区といった近隣地域で働いているのでしょう。災害対応に当たる方もいるでしょう。

しかし、職員の大半は区在在住です。やや離れた地域から出勤している方もいるでしょう。出勤時の大混乱に巻き込まれた方もいる筈です。

災害時に保育士に無理に出勤させ、可能な範囲で保育を行うのが果たして適切なのでしょうか。余りに過度な犠牲を強いている感がしてなりません。

災害対策する職員がいるとしても、それは一部です。また、多くの家庭は夫婦で過ごしています。災害時に夫婦2人が共に出勤して保育を必要とする家庭は、限られているのではないでしょうか(例えば消防官と看護師夫婦)。

であれば、休日保育と同じ様に災害時は一部保育所のみを開所する、と言った方法も考えられます。

自然災害に対する大阪市教育委員会の対応は後手後手に回る物でしたが、徐々に改善されています。

繰り返しになりますが、怖いのは「帰宅困難」です。出先で立ち往生しないよう、先手先手で安全第一で行動したいですね。