PTAがあるのは小中学校だけではありません。名前は異なりますが、多くの幼稚園や保育所で保護者会や父母会(まとめて「保護者会」)があります。
とある保護者会では、保護者の負担が余りに大きくて問題視されているそうです。
会費集め
強制的な加入や活動の負担が議論を呼ぶ小学校のPTA。実は、仕事などの事情で子どもを預ける保育園でも同じようなケースがある。子どものための催しを開いたり、保護者の親睦を深められたりする面もあるが、活動が事実上の強制で、負担の分担をめぐって保護者の関係が悪くなることも。活動のあり方を見直す動きもある。
都内の女性(34)は5年前、当時1歳だった長男(6)が通う園の「父母会」のクラス委員になった。最初の仕事は「会費集め」。子どもの送迎時間はばらばらなのに、同じクラスの20人から直接受け取るのがルールだった。自分のお迎え時間を早めて保護者を待ったり、一度帰宅してから長男と保育園に戻ったりした。
保護者が会費集めを行うのは非常に難しいです。登園・降園する時間が少しでも違うと、全く会わない方は珍しくありません(逆に時間が重なると、毎日の様に会って雑談します)。
また、金銭の取扱いには気を遣います。もしも集めた筈の金額と手元にある金額が異なったら、重大な問題に繋がりかねません。それが原因で、保護者や子ども達の人間関係に亀裂が入る恐れもあります。
「直接受け取るという」ルールは、非常に大きな問題があります。
お世話になっている保育所でも「保護者会」はあります。年1回の会費徴収は保護者会から保育所が委託を受けたという形式をとり、保護者は事務職員へ会費を渡す様になっています。
保育所の建前、幼稚園や小学校と異なる文化
保育園は本来、保護者の仕事や病気、育児困難などによる「保育の必要性」がある子どもを預かる施設だ。昨年4月時点で、認可保育園だけで全国に2万3千カ所あり、212万人が利用している。
保育所は「家庭での保育が難しい子どもに対し、家庭の代わりに保育を行う」というのが建前です。保育所を利用している家庭の大半は共働きであり、時間に融通が効きにくい毎日を過ごしています。
その為か、保育所での保護者会活動は限定的だと感じています。準備や打ち合わせ等を行う為に仕事を休むのは、多くの保護者が難色を示します。無理せずやりくり出来る範囲内で、保護者会活動を行うスタンスです。
反面、幼稚園は大きく異なっているそうです。専業主婦世帯が多く、保護者会活動を活発に行っていると聞きます。平日日中に集まって作業を行う事も容易かもしれません。
保育所と幼稚園の文化が衝突し、考え方の違いが現実化するのが小学校です。それがPTA問題へ繋がっているのでしょう。
係・委員・役員
それなのに、女性は「なんで負担が大きいのか」という疑問が何度も頭に浮かんだ。通っていた保育園は約50年続く公立の認可保育園で、父母会活動が盛んなことで有名だった。原則、全員加入で、入園式後、クラス委員などの役割を決める。2年に1度は何らかの係につく必要があった。
お世話になっている保育所の保護者会では、何らかの係につく必要があるのは「6年に1回」です。係決めは円滑に進みます。
但し、負担感が大きい役員を決めるのは難航する年もあります。最終的にはくじ引きで決めています。決まった方の多くは「当たったからには仕方ない、ご協力よろしくお願いします(拍手)」と了承されているそうです。
ただ、年によっては「シングルマザーだから無理」「鬱病で病んでいるので難しい」「日本語の読み書きができない(外国出身)」等の理由により、役員就任を拒絶される方もいます。
無理に押しつけても上手くいかないと分かりきっているので、それ以外の役員や保育所が相談し、役員を兼務ないし補充しています。
夏祭りやバザー
父母会は、夏祭りやバザーなど園の行事にも関わった。子どもたちが帰った後、段ボールで迷路を作ったり、出し物を準備したり。子どもの世話を親族に頼むほか、夫婦どちらかが有給休暇を取るなど、やりくりに苦労する人も少なくなかった。「この時間があるなら、もっと子どもと一緒に過ごせるのに」。理不尽だと感じた。
父母会の仕事を減らせないか、他の保護者と一緒に匿名のアンケートをしたこともある。半数以上が負担軽減に「賛成」だったが、「子どもが喜ぶ」「やりがいを感じる」などの意見もあり、結論は出なかった。
「さまざまな立場の人の意見をまとめることは難しい。『伝統』ということで、このまま続く気がする」。次男は別の保育園に通わせている。(以下省略)
保護者が関わる活動が活発な保育所です。
こうした活動に対し、「子どもが喜ぶ」「やりがいを感じる」と答える方もいました。しかし、フルタイムで共働きしている家庭が準備に参加するのは非常に難しいでしょう。
保育所での保護者活動の為、自分の子どもの保育が出来ないとは本末転倒です。
保護者会の存在意義
保護者会の存在意義はあります。典型的なのは「保育所や外部団体(自治体等)に対し、保護者集団としての意思を表明する」場合です。
「保護者有志一同」という表現では、「一部の保護者の意思に過ぎない」と蔑ろにされる事もあるでしょう。しかし、保護者会として意思を表明されたら、これを無視するのは難しいです。
しかし、保護者会活動が負担となり、家庭や仕事に影響するのは望ましくない姿です。また、頻繁に保育所行事の準備に動員されるのはおかしな姿です(年1回・1-2時間程度ならまだしも、複数回は辛いでしょう)。
PTA活動・保護者会活動に絶対的な姿はありません。時代や構成員の変化に応じ、柔軟に変わっていく姿勢が不可欠です。
変わらなければ忙しい保護者に見放され、時間に余裕がある保護者の道楽に成り果てるのではないでしょうか。