夏休みが始まって2週間あまり。忙しさと子供のエネルギーにやられ、少し体調を崩しています。

先日、2019年に実施された全国学力・学習状況調査等(学力テスト)の結果が公表されました。

【学力テスト2019】秋田・北陸3県・さいたま市が好成績、大阪府は下位、大阪市の小6は全国最下位

実は大阪市は原則として各学校毎のテスト結果を公表しています(単学級学校等を除く)。当サイトでは各校のデータを大阪市立学校データベースにまとめています(近日中に最新のデータに切り替える予定です)。

大阪市立学校データベース

また、大阪市の大半の区では「学校選択制」を導入しています。隣接学区ないし区内から進学する小中学校を選択できる制度です。

「学校選択制」・・・学校選びの基準は?

学力テストの結果公表と学校選択制がどの様な影響を及ぼしたかを調査研究した論文が公表されています。中西広大先生(大阪市大M2)が書かれた、非常に興味深い内容でした。

大阪市における学力テスト結果公開と人口流入 ~小・中学校における学校選択制の検討から~

https://www.lit.osaka-cu.ac.jp/UCRC/wp-content/uploads/2019/04/vol21_article06.pdf

趣旨は下記の通りです(短い論文なので、是非原文を読んで下さい)。

分析の結果,学校選択制の利用率は全市的に見て高くはなく,選択制利用者は学校を選ぶ際に学力をそれほど重視していないことが見て取れた。

一方,小・中学校ともに就学前年齢人口の増加率は学力と強い正の相関関係にあり,聞き取り調査の結果から転入者は各学校の学力を重視して居住地選択を行っている傾向にあることが分かった。

これらのことから,大阪市の学校選択制は制度導入時に想定されていた選択行動を引き起こしてはいないのに対し,公開された学力が特定の地域への人口流入を引き起こす要因となっていることが考えられる。また人口流入の結果として,学力格差や居住分化がより助長される可能性も指摘できる。

学力テストの結果は子育て世帯の転入先の選定に、学校選択制は自宅からより近くて友人等と共に進学する為に利用される傾向が強い、と指摘されています。

これは私の実感と合致しています。

学力テストの点数が高い学校は、市内中心部にある小中学校が大半を占めています。こうした地域は人口流入も盛んです。

中心部は地価が高い事から、一定以上の世帯所得を有する子育て世帯が多いのも特徴的です。

こうした世帯が職住近接が可能な市内中心部に集住し、教育熱や学歴が高い両親の考え方に影響され、当該地域にある学校での学力テストの結果も良好となっているのでしょう。

また、学校選択制を利用するにあたっては、周囲から「学力が高いから選んだ」という話は聞きませんでした(話しづらいからかもしれません)。

学区外の学校を選んだ理由は、同じ保育所や幼稚園からたくさんの友達が進学する、学区内より隣接学区の学校の方が近い、単学級より複数学級の学校が良い、という意見が殆どでした。

大阪市内において、各校の学力格差は固定化されています。年が変わっても各校の順位は入れ替わっていません。

大規模再開発で学力向上?

入れ替わる可能性があるのは、例えば「市内中心部への交通利便性が良い場所での再開発」です。
具体的な学校名は控えますが、市内中心部に隣接したとある小学校の学力テストでは世帯の平均所得や両親の学歴から想定される点数を大きく上回る結果が表れました。

小学校の指導力が飛躍的に向上したかと思って原因を探っていたところ、当該地区では5~10年ほど前に大規模な再開発が実施され、数多くの大型マンションが建設されていました。

しかし、これは「学力向上」とは言いにくい現象です。スラムクリアランスが実施され、ジェントリフィケーションが生じた結果です。

大阪市はどちらへ進むのでしょうか。そして子育て家庭は、何に重きを置いて子育てすべきでしょうか。難しい課題です。