先日、日本経済新聞に子供医療費の無償制度の弊害を指摘する記事が掲載されました。

広がる子供の医療費無料化、過剰受診も 見直しは進まず

子どもの医療費の無料化が過剰な受診を招いていることが実証研究でわかってきた。子育て支援策の一環として無料化する自治体は増え続けているが、膨らんだ医療費は国全体で負担することになる。横並び意識が強い自治体が自ら無料化をやめるのは難しく、国主導での見直しの必要性を指摘する声もある。(以下省略)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC151XJ0V10C23A1000000/

ここで指摘されている「実証研究」とは、東京大学の飯塚先生・重岡先生が発表された「子ども医療費「タダ」の落とし穴 ―医療需要における「ゼロ価格効果」を確認」でしょう。

子ども医療費「タダ」の落とし穴 ―医療需要における「ゼロ価格効果」を確認―

https://www.pp.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/2022/09/Is-Zero-a-Special-Price-Evidence-of-Child-Healthcare.pdf

Download (PDF, 383KB)

「ゼロ価格効果」とは、物やサービスの価格がごく僅かな金額(例えば10円)から無料(0円)になる事により、需要を大きく増やす可能性・効果です。ごく僅かな金額と無料が本質的に異なる可能性が指摘されています。

ポイントは下記の通りです。
・いずれの自己負担率の場合も、無料に比べ医療需要が減少している。
・少額の定額負担とより重い自己負担である定率負担では、需要の減少幅がさほど大きく異ならない。自己負担の有無は医療需要に大きな影響を及ぼすが、自己負担の大きさは
さほど需要に影響しないことが示唆される。
・自己負担率30%から200円(2.4%)の範囲では受診確率が概ね比例して変化しているが、自己負担率が0%になると受診確率が非連続的に増加(ジャンプ)している(=ゼロ価格効果)。
・1回200円といった少額でも、自己負担を課すと医療需要が大幅に減少する。
・少額負担でも健康状態が良くない子供の受診確率は減らないが、比較的健康にも関わらず頻繁に受診する子供の受診確率は大幅に減少する。
・少額の自己負担は不健康な子供に悪影響を及ぼす事なく、比較的健康な子供の過剰受診を減らす。


(縦軸が受診確率、横軸が自己負担率)

グラフの左上部、矢印が伸びている部分が「ゼロ価格効果」です。

当たり前と言えば当たり前の結論です。ただ、これを統計的・学術的に示した事には大きな意義があります。

大阪府は1医療機関あたり月1000円が上限、大阪市は18歳まで対象に

大阪府の乳幼児医療費助成制度は、小学校就学前までの子供について「1日・1医療機関あたり500円」もしくは「1医療機関へ月3回以上の通院」を超える医療費を公費で助成するものです。分かりやすく表すと、「1医療機関に家庭が支払う医療費の上限は月額1000円」となります。

自己負担額について(ひとり親家庭医療、乳幼児医療)
https://www.pref.osaka.lg.jp/kokuho/hukusiiryou2/jikofutan.html

また、一部の市町村は所得制限や年齢制限等を緩和し、独自の助成制度を運用しています。大阪市は12歳までは所得制限無し、12歳から18歳までは大阪府基準より緩い所得制限を設定てしています。

こどもの医療費を助成します
https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000369443.html

この制度には本当に助けられています。こうした制度がなければ、子供の発熱や鼻水によって頻繁に医療機関を受診するのを躊躇っていたでしょう。1回あたり500円(上限は月1000円)でしたら早めに受診できますが、2-3割負担(1回あたり2000円前後?)となると考えてしまいます。

また、大阪府・大阪市は医療費無料制度でありません。一定の自己負担が求められるので、受診するか否かを保護者が考える事になります。

もしも無料だったらありがたいのは確かですが、代わりに医療機関が混み合うのは間違いありません。小児科での待ち時間は本当に辛いです。大勢の子供が泣き叫びます。時間も掛かります。その後の家事に大きな支障も出ます。

一保護者としては、現行の大阪市の制度が適当だと考えています。医療が必要な子供は低額で何度も受診できますし、不要な方の受診を抑制する効果があります。

「子供の医療費無償化」は子育て世帯に心地よく聞こえる制度です。しかし、その弊害は無視できません。医療を必要な子供がすぐに受診できる制度が求められます。