参院選特集番組におけるタレントの若槻千夏氏の発言が物議を醸しています。

「もし子どもが帰ってくるのが遅くなって心配になって、見つからない時に学校に電話をするのが親だと思う。それも対応してくれないってことですか」とする主張です。

若槻は、教員不足問題を特集した21日放送の日本テレビ系「newszero」に出演。

全国の小中学校で教員が不足し、1人の教員に業務が集中し、勤務時間外もプライベートの時間も削って対応するなど深刻な状況が紹介される中、若槻は、スタジオ出演した現役小学校教師が負担を減らすために勤務時間外の18時以降は電話に出ないなどの対応策を講じていると発言したのに対し、「何かあったらどうするんですか? もし子どもが帰ってくるのが遅くなって心配になって、見つからない時に学校に電話をするのが親だと思う。それも対応してくれないってことですか」と反論。

教師が「子どもが帰ってこないのであれば警察が対応しますし」と説明すると、「えー、寂しい」と嘆いた。

https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201907220000234.html

お世話になっている学校の先生と話していても、教師の多忙さは伝わってきます。

先のG20大阪サミットで学校が休校になった期間は、自宅で作業していた話を聞きました。「4日間も出勤せずに済み、作業が捗った」と話していました。

大阪市立学校は留守番電話を導入

忙しい中で時間を割かれ、かつストレスが溜まりやすいのは「電話応対」でしょう。

保護者から掛かってくる電話は重要な物が多い一方、中には重要度が低い内容もあります。特に何らかの締切や次の予定が迫っていると、電話に要する時間が勿体なく感じるでしょう。

こうした事態に対応すべく、大阪市立学校は一定の時間外に掛かってきた電話には留守番電話で応答しています。

音声応答装置による音声ガイダンスの設定時間
小学校:平日の午後6時から午前8時まで及び土曜日・日曜日・祝日
中学校:平日の午後6時30分から午前8時まで及び土曜日・日曜日・祝日

https://yodokikaku.net/?p=20878

しかしながら、中にはどうしても18時以降に学校へ電話で連絡したい事もあるかもしれません。

学校からは「教育委員会に電話してくれれば、然るべきルートから校長等へ連絡が届きます。」と聞きました。それでも「本当に伝わるだろうか?」という不安は拭えません。

1学期で18時以降に電話しようか迷ったのは、クラスメイトの宿題用ノートを間違えて持ち帰ってきた時でした。

18時前だったら「我が家で預かっているので、先方にお伝え下さい。」と電話したかもしれません。ただ、既に学校に電話が繋がらない時間帯だったので、そのまま翌日に学校へ持たせました。

登下校時の不審者事案は学校の対応業務

重大な事態が発生して学校に電話する必要が生じそうなのは「学校から帰ってこない」時ですね。識者も指摘しています。

 今回の若槻さんらの発言を参考にしつつ、発言にはないことも含めて、具体的な場面を想像してみます。

1)子どもが学校から帰ってきていない。時計の針は18時をまわっている。学校に電話したが、留守番電話になり、「明朝おかけなおしください。」となる。え~、どうしよう!?

2)下校途中のコンビニで、中学生(高校生でも小学生でもよい、以下同じ)が近隣校の生徒とケンカして怪我をさせた。制服から学校名が分かり、コンビニとしては、学校に電話した。勤務時間内であるが、教師は駆けつけるべきか?

3)夏の風物詩の花火大会(または夏祭り)。数年前、ある中学生がトラブルを起こしたということで、中学校の教師は、土日だというのにパトロール(見回り)をしている。校長としては働き方改革もあって、断りたいが、すぐには言い出しづらい。どう考えたらよいか? (中略)

答えとしては、1)~3)のいずれのケースでも、学校、教師は対応する「責任はありません」、と考えるのが妥当です。

https://news.yahoo.co.jp/byline/senoomasatoshi/20190722-00135214/

私がそれぞれの立場なら、(1)は「(保護者として)繋がらないと困る!」、(2)は「(コンビニとして)すぐに駆けつけて欲しい」、(3)は「(校長として)夏祭り等のパトロールは業務外」、と考えます。

(1)(2)はいずれも下校中のトラブルです。学校の管理下にないとは言え、「学校はノータッチです」と言われるのも無責任だと感じます。

識者が引用している学校保健安全法は「校長は(中略)危険等発生時において職員が適切に対処するために必要な措置を講ずるものとする」としています。

(学校安全計画の策定等)
第二十七条 学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、当該学校の施設及び設備の安全点検、児童生徒等に対する通学を含めた学校生活その他の日常生活における安全に関する指導、職員の研修その他学校における安全に関する事項について計画を策定し、これを実施しなければならない。

第二十九条 学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、当該学校の実情に応じて、危険等発生時において当該学校の職員がとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた対処要領(次項において「危険等発生時対処要領」という。)を作成するものとする。
2 校長は、危険等発生時対処要領の職員に対する周知、訓練の実施その他の危険等発生時において職員が適切に対処するために必要な措置を講ずるものとする。

(地域の関係機関等との連携)
第三十条 学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、児童生徒等の保護者との連携を図るとともに、当該学校が所在する地域の実情に応じて、当該地域を管轄する警察署その他の関係機関、地域の安全を確保するための活動を行う団体その他の関係団体、当該地域の住民その他の関係者との連携を図るよう努めるものとする。

学校保健安全法

文部科学省は「危険等発生時対処要領(危機管理マニュアル)の作成の手引き」を公表しています。

ここには「登下校時の不審者事案などの緊急事態」と明記されています。

登下校時の不審者事案などの緊急事態が発生した場合も適切に対応できるよう、教職員体制が通常と異なる場合の役割分担、教職員間の連絡体制や保護者・関係機関等との緊急連絡体制を整備するとともに、学校の危機管理マニュアルを地域の方々へも周知するなど、協力体制を整備しておくことが重要です。

https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/aratanakikijisyou_all.pdf#page=34

子供が学校から帰ってこない時、保護者が真っ先に心配するのは「事故に遭ったかも?」「不審者に連れ去られたかも?」でしょう。私も同じです。

ここで学校に「関係ない」と言われたら、それこそ無責任です。学校に連絡するのではなく、先に110番通報すべきなのでしょうか?

コンビニでの騒動では、学生の身元を確認できるのは学校だから電話しています。

コンビニは警察へ連絡する事もできます。しかし、大事にせず、学校や保護者等の間で穏便に済ませて欲しいという願いもあるのでしょう。

教師が来なければ、コンビニは警察へ連絡せざるを得ません。

働き方改革は重要

学校の先生の仕事は本当に大変だと感じています。

単に授業を行っているだけではありません。授業準備や宿題の丸付け、生活指導、事務、保護者対応、教育委員会・区役所・警察署等との対応等、業務は多岐に渡るでしょう。

これらは「教育職」とは思えないほどの所掌業務です。子供が学校へ通うまで、全く気づきませんでした。

とは言え学校外のトラブル、しかも登下校中のトラブルに対応しないのは困ります。

また、保護者から警察へ連絡しても、まともにとりあってくれない事も少なくありません。しかし、学校からの連絡ならば、警察は真摯に対応するでしょう。

教師の働き方改革は重要です。特に教師は残業手当が支給されず(代わりに4%程度を給与に上乗せ)、「定額働き放題」となりがちです。

業務の重要性の観点から、適切に対応してもらえればと思います。

保護者として最も願うのは「子供が無事に帰宅する」ことです。帰ってこなければ、真っ先に学校へ電話します。