「働き方改革」の一つとし、大阪市立の小中学校で「夜間・土日の電話対応」を廃止するそうです。
電話対応に掛かる教員の負荷減少を図る一方、「緊急時の対応への不安」や「より有効な負担軽減策を指摘」する声もあります。
大阪市教委 小中学校、14時間「留守電」 教員の負担減狙い
教員の長時間労働の解消につなげようと、大阪市教委は来月1日から、全市立小中学校で、勤務時間外の電話には自動の音声ガイダンスに切り替えることを決めた。負担減が期待される一方、保護者の急な相談に対応できなくなるとの困惑も広がっており、教育現場の「働き方改革」の難しさが浮き彫りになっている。
文部科学省の「教員勤務実態調査」(2016年度速報値)によると、教員の1週間の総勤務時間が60時間に達する割合は中学校で57・7%、小学校で33・5%。このため、中央教育審議会の特別部会は昨夏、留守電の設置を盛り込んだ緊急提言をまとめた。全市的な取り組みは少ないが、留守電などは広がりつつあるとみられる。
市教委が今月18日付で小中学校長に送付した文書では、災害時や緊急時を除き、原則小学校は午後6時~午前8時、中学校は午後6時半~午前8時の間、自動音声の対応にするよう求めた。この時間帯に電話しても、自動音声が「受け付け終了」を告げ、「平日の午前8時以降におかけ直しください」と促す。録音機能はない。
一方で、児童・生徒の欠席連絡は午前7時台、トラブルの連絡は子どもが帰宅した後の夜間になることが多い。市教委は設定時間をある程度、学校の運用に任せる方針。
市教委が保護者向けに作った案内文には、いじめや児童虐待などの相談窓口として、市こども相談センター(児童相談所)の教育相談や24時間対応の「児童虐待ホットライン」の連絡先を記載。市教委は「時間外はこちらにという意味ではない」とするが、センター内には「保護者は学校に聞いてほしいのではないか」と混乱を危惧する声もある。
ある市立小校長は、自動音声対応について「方向性は間違っていないが、多忙化の解消にはならない」と指摘。「学校は子どもの生活も含めたセーフティーネットの役割を果たしており、時間で割り切れるものではない」という。一方、中学校長は「給食費などの未納者への取り立てを第三者にやってもらう方が助かる」と明かした。
大阪市教育委員会のウェブサイトにプレスリリースが掲載されています。
大阪市では、大阪市立小学校・中学校の業務時間外の電話対応について、平成30年5月1日(火曜日)から音声ガイダンスによる対応を実施します。
この度、教員の長時間勤務の要因の一つである業務時間外の保護者等からの電話対応に対して、音声ガイダンスによる対応を行うことにより、業務時間外の電話対応の負担を軽減するものです。
音声ガイダンスの運用開始時期
平成30年5月1日(火曜日)から音声応答装置による音声ガイダンスの設定時間
小学校:平日の午後6時から午前8時まで及び土曜日・日曜日・祝日
中学校:平日の午後6時30分から午前8時まで及び土曜日・日曜日・祝日http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kyoiku/0000434005.html より引用
聞くところによると、音声ガイダンスに必要な工事は昨年度中に概ね完了していたそうです。年度始まりの多忙な時期を避けて導入する意図でしょう。
労働量削減は重要、せめて録音付きの留守番電話を
各地で教員の長時間労働が問題視されています。特に生徒・進路・部活動指導の重みが増す中学校では、多くの教員が過労死ラインで働いていると聞きます。
教員にとって電話対応は重要な業務でしょう。しかし、長時間対応を余儀なくされる・集中している業務が止まる・職員室から離れている教員を探す等、デメリットは少なくありません。
大阪市立小中学校が夜間・土日の電話対応を廃止する事により、少なくとも夜間時間帯における電話応対に掛かる時間・労力は大幅に減少しそうです。集中して残業し、以前より早く帰宅できる効果があるでしょう。
一方、保護者にとっては不安も残ります。急に連絡・確認したい事があって学校へ電話しても、業務終了を告げるメッセージが流れると落胆してしまいます。仕方なく学校へ出向いてチャイムを鳴らすケースも生じるでしょう。
少なくとも録音機能が付いた留守番電話の導入とセットにすべきです。SIが提案しなかったか、それとも不要と判断されたのでしょうか。
そもそも電話対応が多すぎる?
そもそも論として、夜間・日中を問わず、教員にとって電話応対業務は負担が掛かるでしょう。短い時間で行うべき作業が出来ず、電話中は児童を放置しかねません。
であれば、「学校へ掛かってくる電話の総量を減らす」事に重点を置くべきではないでしょうか。例えば欠席連絡や返答不要の連絡にメールフォームを利用するだけで大きな効果があるでしょう。学校ウェブサイトがあるのに勿体ない話です。
また、電話対応・事務作業・出納業務等を専任で行う事務職員を増員するのも有効でしょう。教員が教育に集中でき、労働時間も減少するでしょう。
教員の働き方改革は必要不可欠です。しかし、様々な事情を抱える家庭が非常に多い大阪市の現状を鑑みると、様々な不都合が生じるのは避けられないでしょう。プレスリリースから1週間で導入するのではなく、各家庭の意見を聞いてからでも遅くないのではないでしょうか。