(自民党ウェブサイトより)
久しぶりに大阪市の保育所等について記事を作成しようとしたところ、またしても子育てに関する政治家の発言が飛び込んできました。
自民党の二階俊博幹事長は26日、東京都内で講演し、「子どもを産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考えて(いる人がいる)」「皆が幸せになるためには子どもをたくさん産んで、国も栄えていく」などと述べた。子どもを持たない家庭を批判したとも受け取れる発言だ。(以下略)
こうした発言は「前後の文脈」が重要です。さもなくば、「一部のみを切り出して批判している」という指摘を受けます。
session22(TBSラジオ)のウェブサイトにて、当該部分の文字起こしが掲載されています。
出席者の質問:自民党と政府が一体になって、早く結婚して早く子どもを産むように促進してもらいたい。
二階幹事長:大変、素晴らしいご提案だと思います。そのことに尽きると思うんですよね。しかし、戦前の、みんな食うや食わずで、戦中、戦後ね、そういう時代に、「子どもを産んだら大変だから、子どもを産まないようにしよう」といった人はないんだよ。この頃はね、「子どもを産まない方が幸せに送れるんじゃないか」と勝手なことを自分で考えてね。国全体が、この国の一員として、この船に乗っているんだからお互いに。だから、みんなが幸せになるためには、これは、やっぱり、子どもをたくさんを産んで、そして、国も栄えていくと、発展していくという方向にみんながしようじゃないかと。その方向付けですね。みんなで頑張ろうじゃないですか。食べるに困る家は実際はないんですよ。一応はいろいろと言いますけどね。「今晩、飯を炊くのにお米が用意できない」という家は日本中にはないんですよ。だから、こんな素晴らしいというか、幸せな国はないんだから。自信持ってねという風にしたいもんですね。
https://www.tbsradio.jp/266680(リンク先に音声あり)
発言の問題点はシンプルです。
産む・産まないは個人や家庭の選択、政治家が命令・批難する話ではない
出産は極めてプライベートな領域に関する話です。
権力者が「もっと産むべき」「産まない方が幸せと考えるのは勝手なこと」と指摘するのは、大きなお世話です。ほっといて下さい。親戚のおっさんに言われても嫌です。
政治家の大きな仕事の一つは「結婚したい人が結婚できる、産みたい人が産め育てやすい世の中を作る」事でしょう。しかし、これを蔑ろにし続けたのが平成の世の中です。
産みたくても産めない社会
子どもを産み育てたい、もう1人欲しいと思っても、上がる見込みが無い給与・膨れあがる生活費や教育費を鑑みると二の足を踏んでしまいます。
つい先日、「年収800万円以上でも、7割弱の家庭が次の子どもは難しいと考えている」という調査結果が発表されました。
0~1歳児の親で、金銭的な理由から「子どもをもっとほしいが難しい」と考える人は、年収400万円未満だと約91%、同800万円以上でも約68%いることが、ベネッセグループと東京大学の調査でわかった。秋田喜代美・東大教授は「育児にお金がかかるだけでなく、将来が具体的に見えない不安も現れているのではないか」と話す。
ベネッセ教育総合研究所と東大・発達保育実践政策学センターが20日、「乳幼児の生活と育ちに関する調査2017」として報告した。全国の0~1歳児を持つ家庭約3千世帯が回答し、母親の約74%は「子どもをもっとほしい」と考えていた。現在子ども1人の母は約90%が、2人の母は約64%が、それぞれ次の子を望んでいた。
一方で、「子どもをもっとほしいが難しい」と考える母親に理由(複数回答)を尋ねると、「子育てや教育にお金がかかる」が約81%で最も多かった。次いで、「子育ての身体的な負担が大きい」約50%、「子育てと仕事の両立が難しい」約37%と続いた。
「お金がかかる」を選んだ人を世帯年収別にみると、「400万円未満」約91%、「400~600万円未満」約85%、「600~800万円未満」約78%と、年収が増えるにつれて比率は下がった。一方で、「800万円以上」でも約68%が金銭的な理由を挙げた。(以下略)
上記報告書はウェブサイトで公開されています。
東京大学Cedep・ベネッセ教育総合研究所 共同研究「乳幼児の生活と育ちに関する調査2017」https://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=5290
子育て世帯以上に厳しいのは、非正規雇用の単身者世帯
子育てしている家庭以上に厳しいのは、非正規雇用・低所得等を理由として結婚していない単身者の増加です。様々な調査結果を見る限り、近い将来、生涯未婚率は男性35%・女性25%に達しそうです。3分の1が結婚できない世の中となりそうです。
政治家が「もっと子どもを産んで欲しい」と考えるのであれば、若者が十分な稼ぎを得て結婚し、産み育てやすい世の中を作るのが大切でしょう。
経済状況が好転しているここ数年の間に就職した若者は、恐らく結婚・出産する人は以前より増えるのではないかと感じています。
しかし、リーマンショック後や就職氷河期に社会に出ても望む仕事に就けなかった世代は、極めて厳しいのが実情です。既に政治は見捨てている、目の中に入っていないと感じています。
食べるに困る家も多い
二階幹事長の発言には、別の問題点もあります。「食べるに困る家はない、お米が用意できないという家は日本にはない」という部分です。
経済的に余裕が無い子育て世帯が非常に多くなっています。特に全国有数の貧困地域とも揶揄される大阪市に住んでいると、現実を実感させられる機会が多いです。
特に強く感じるのは「ひとり親世帯の貧困」です。ひとり親世帯の貧困率は50.8%(2015年調査、2016年分は近日中に発表)に達しています
厚生労働省が27日発表した2016年の国民生活基礎調査で、ひとり親と暮らす子どもへの支援の必要性が改めて浮かび上がった。3年に1度調べる貧困率(15年)で、ひとり親世帯は50・8%に上った。子どもの貧困率全体は13・9%で12年ぶりに改善したが、子どもをめぐる環境はまだ厳しい。(以下略)
ここ数年の景気回復により、貧困率は徐々に改善しています。しかし、依然として厳しい世帯が多いのが実情です。
政治家のこうした発言は、経済的に困っている子育て世帯や若者等を無視し、見捨てている様に感じます。残念です。