(6/6追記)
最終的に、3小学校が3~6段ピラミッドと3段タワーを実施しました。

 問題になったのは、6月1、2日に運動会を行った東大阪市立小学校3校。いずれも7段のピラミッドを予定し、1校は5段タワーも練習していたが、5月29日にツイッターに書き込まれた「子供の命を助けてほしい」とのメッセージが拡散され、騒動に。意見を求められた吉村洋文府知事は「重大な事故が起きている。やめるべきだ」と言い切った。結局、この3校はピラミッドを3~6段に、タワーを3段に減らして実施した。

https://www.sankei.com/life/news/190605/lif1906050018-n1.html

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平成28年3月25日に文部科学省スポーツ庁が「組体操等による事故の防止について」という通知を発しました。

Download (PDF, 1.79MB)

上記通知には、下記の様に記載があります。

各学校においては、タワーやピラミッド等の児童生徒が高い位置に上る技、跳んできた児童生徒を受け止める技、一人に多大な負荷のかかる技など、大きな事故につながる可能性がある組体操の技については、確実に安全な状態で実施できるかどうかをしっかりと確認し、できないと判断される場合には実施を見合わせること。

各小学校においては、組体操に関しては小学校での事故の件数が相対的に多いことや、小学校高学年は成長の途中で体格の格差が大きいことに鑑み、在籍する児童の状況を踏まえつつ、事故につながる可能性がある危険度の高い技については特に慎重に選択すること。

しかし、東大阪市のとある小学校で今週末に実施される運動会にて、この通達に反する恐れが強い組立体操が実施されようとしています。

事の発端はこのツイートでした。

7段ピラミッドはこの様なものです。

7段ピラミッドや5段タワーを実施する予定なのは、東大阪市立長堂小学校や布施小学校です。

長堂小学校のウェブサイトには「運動会は、6月2日(日)です。5月13日(月)から練習が始まります。」と記載されています。練習期間が非常に長いですね。

その後、共同通信が報じました。加盟社も一斉に報じています。

運動会で7段ピラミッドを予定

東大阪市立小、知事は反対

大阪府東大阪市の市立小学校で近く予定されている運動会の組み体操に、四つんばいの姿勢で積み重なってつくる7段の「ピラミッド」が含まれていることが30日、市教委への取材で分かった。

吉村洋文府知事は府庁で取材に応じ、「重大な事故が現実に起きている。考え直す時期だ」と反対の立場を示した。府教委が対応を検討する。

市教委によると、今週末に運動会を予定する市立小学校のうち3校が7段ピラミッドを実施する見込み。市立布施小では肩の上に立って塔をつくる4段の「タワー」にも挑戦する。

https://this.kiji.is/506769120660276321

大阪府の吉村知事は「(実施に)反対だ」と明言しました。

吉村知事は大阪市長時代に組み体操でのタワーとピラミッドを禁止しました。結果、骨折を伴う事故は激減しました。

組み体操の骨折事故53件→12件に激減 大技禁止の大阪市

2016.11.22 10:51

大阪市教育委員会は22日、今年度の市立小中学校の運動会で行われた組み体操で骨折を伴う事故は12件(昨年度53件)だったと明らかにした。昨年9月に大阪府八尾市の中学校で6人が重軽傷を負った事故を受け、「ピラミッド」などの大技は禁止したうえで実施の判断を各校に委ねた結果、大幅に減少した。

同日開かれた教育委員会会議で組み体操の実施状況が報告された。市教委によると、骨折を伴う事故12件はいずれも小学校(昨年度42件)で、中学校では0件(同11件)だった。「ピラミッド」と「タワー」のほか小学校では2人組の肩の上に人が立つ「灯台」も禁止に。主な技と注意点を記載したハンドブックを配布するなどし、禁止技抜きで実施する場合には安全への配慮の徹底を呼びかけていた。

組み体操を実施した学校数は小学校が昨年度の293校から201校、中学校は55校から24校にそれぞれ減少。市教委の担当者は「事故は減少したが、ゼロでなかったのは課題。一層の事故防止に取り組んでいく」としている。

https://www.sankei.com/west/news/161122/wst1611220029-n1.html

具体的な議論は、平成28年第3回教育委員会会議で行われています。

こうした方針を大阪市が決定した一因は、八尾市立大正中学校の体育大会における組立体操で6人が重軽傷を負った事故にあります。事故報告書が掲載されています。

驚くことに、大正中学校は「10段ピラミッド」を行いました。しかも疲労が蓄積している体育大会の最終段階というタイミングでした。

体育大会の最終プログラム「学年対抗リレー」の直前が組立体操であり、立体ピラミッドは組立体操の最後の演目であったため、生徒の緊張は続き疲労度も高まっていたと考えられる。ピラミッドが10段という段数であったことから、最下段の生徒にはかなりの負荷がかかっていたものと考えられ、1回目は10段目が上がる途中で崩れて失敗し、2回目の挑戦をしたが、10段目の生徒が一番上に上がったものの、中段あたりから崩れ、下から6番目にいた1年生男子が右腕部を骨折した。

https://www.city.yao.osaka.jp/cmsfiles/contents/0000035/35235/yaoshi_kumitate_houkokusyo.pdf

当時の映像が残っています。

ピラミッドが倒壊した後、痛みに苦しむ1人の生徒を複数の教職員が見守りながら引き上げました。生徒は見世物なのでしょうか?

また、組立体操は低い高さであっても危険があると指摘されています。

3段のタワーから墜落した小学校6年の男子児童に緊急の開頭手術をおこなった例などを報告した。庄古医師は、低い段数でも重症で運ばれてくる子どもが多くいて、しかも本人の過失がほとんどないと考えられることから、「学校での組体操の取り組みは、すぐに中止すべきである」と主張した。

https://news.yahoo.co.jp/byline/ryouchida/20160207-00054191/

大阪市長時代に教育課題に対して様々な主張を行って実施にこぎ着けた吉村知事が「反対」と明言した以上、予定通りに組み立て体操を実施するのは著しく困難になったと感じています。

ただ、運動会が実施されるのは今週末です。今からピラミッドの段数を減らして練習し直す時間はないでしょう。

恐らくは組立体操のプログラムからピラミッドを省いて実施するのではないでしょうか。

運動会・体育大会における児童・生徒の演目は、日々の教育と成長を披露する場所だと認識しています。「見世物」ではありません。

今週末も猛暑が予想されます。「感動」より「安全」でいきましょう。