待機児童を大きく減らした大阪市が、今度は1-2歳児を対象とした「期間限定保育」を導入すると公表しました。また、「大阪市立保育所における紙オムツの自園処理」も検討しています。
大阪市、1~2歳児「期間限定保育」待機児童ゼロへ来年4月から導入
大阪市は11日、待機児童の解消に向けて検討していた、空きスペースのある保育施設で1~2歳児を最大2年間限定で受け入れる「期間限定保育」の制度について、来年4月から実施する方針を明らかにした。吉村洋文市長は「市の状況に合致する取り組みで、うまく空きスペースを活用するのは有効だ」としている。
市の待機児童数65人(4月時点)のうち、半数以上が1~2歳児であることから、導入を検討。同日、市役所で開かれた待機児童解消に向けた会議で、方向性が示された。
市の案では、待機児童が少ない4~5歳児クラスの教室に空きスペースがある認可保育園や認定こども園を活用。原則、市内在住の満1歳児を最大2年間受け入れる。今後、保育事業者から意見などを聞き、来年4月から実施を目指すとしている。
また、会議では多くの市立保育園で使用済みの紙おむつを保育士が園児ごとに分け、保護者に持ち帰らせている現状について、吉村市長は「合理性がない」と指摘。保育士の負担軽減につながるとして、園での処理を検討するよう指示した。
https://www.sankei.com/west/news/180912/wst1809120062-n1.html
市役所で開かれた会議とは、市長・副市長・各区長・こども青少年局担当者で構成される「第8回大阪市待機児童解消特別チーム会議」です。
同会議では、「新たな待機児童対策(第7回会議にて確認済の取組)の進捗状況等」について報告が行われました。
実は第7回会議で1-2歳児期間限定保育が検討されていました。同会議で検討された内容は、以前に当ウェブサイトでも取り上げました。
残念な事に、第7回会議の議事録・配付資料等は大阪市ウェブサイトに掲載されていません。
しかしながら、念入りに調査したところ、平成30年度第1回阿倍野区教育会議にて同じ資料が配付されいました。結合・向きを修正した資料を掲載します。
この資料には、大阪市の保育を巡る様々な数字が掲載されています。
淀川区1歳児待機児童22人の衝撃
衝撃的だったのは淀川区の1歳児待機児童です。21人の1歳児が「利用可能施設なし」という理由で待機児童となっていました(資料24ページ)。
これは登園可能な範囲(登園時間が概ね20-30分以内)で空き枠がある施設が皆無だった事を示しています。この背後には約120人にも及び1歳児利用保留児童も存在しています。
大量の待機児童が発生したのは、宮原・三国を中心とする淀川区北東部でしょう。実は今年2月、この地域にお住まいの方から数多くの相談メールを頂きました。数字で裏付けられた形です。
淀川区北東部は再開発が盛んに行われています。ファミリー層の転入が相次いでいるにも関わらず、新設された保育所はありません。隣接する新高地区にあるだけです。
この資料が掲載された阿倍野区教育会議でも話題になりました。
・やっぱり淀川区あたり22という数字がございますが、これは、先ほど区長がおっしゃられたように、区長の一生懸命の姿でしょうか、それとも、場所がないということでしょうか。ちょっとあまりにも大きな人数が待機であるということが。
・淀川区長も委員になっておられて、冒頭に、区長のおわびからこの会議が始まったというふうに聞いております。(※この会議=第7回待機児童解消チーム会議)
・先ほど待機児童が一番多いという結果になりました淀川区はと申しますと、6施設185人というところが淀川区になっております。待機児童が結局一番多かったのは、保育所の整備が行き届かなかったというのが、1つの理由になるのかなというふうになっております。
淀川区北東部の保育所整備が軽視された事態は、平成31年度一斉入所にも影響するでしょう。深刻です。
期間限定保育とは
期間限定保育とは新設保育所において多くの4-5歳児入所枠が余っている事に着目し、これを1-2歳児保育に転用する制度です。
待機児童対策。大阪市の待機児童数は、過去最少の67人(旧基準37人)になったが、内訳を見ると0〜2歳で9割、1歳で5割。この割合は入所保留児童も同じ。異次元の新規保育所の増設を実行しているが、4、5歳児の枠が大きく余ってる。そこを1歳児の枠に使えるよう制度新設する。https://t.co/GW5EtYvfFQ
— 吉村洋文(大阪府知事) (@hiroyoshimura) May 14, 2018
仙台市・さいたま市・東京都文京区等で制度化されています。
実は大阪市の新設保育所では、0-3歳児と4-5歳児の充足率に非常に大きな差が生じています。
0-3歳児は87%なのに対し、4-5歳児は11%に過ぎません。4-5歳児は約1000人分もの入所枠が浮いてしまいました。勿体ない話です。
全ての新設保育所が対象となるわけでない様子です。4-5歳児用の保育室や保育士を浮いている、希望する保育所のみが対象となると推測されます。
また、小規模保育の卒園児と同じ加点(6点)を加える事により、卒園後にスムーズに転所できる制度とする方針です。同じ保育所に3歳児入所枠があれば、そのまま申込み・再入所できるでしょう。
ただ、4-5歳児と1-2歳児では、必要とする保育室・設備・備品等が大きく異なります。何らかの形で手当する必要があるでしょう。
市立保育所での紙オムツ自園処理を検討へ
第8回チーム会議では、紙オムツの処理方法についても議論に上がった様子です。これについて、今年3月の大阪市会で高見委員(維新)が取り上げました。
高見亮委員(維新)
○公立保育所における使用済み紙おむつの持ち帰りについて・現状どうなっているか?
→私立保育所で5割が自園処理、政令市では19市中6市、H30からの実施は見送り・オムツ持ち帰りは子供の保育環境、衛生面から重要
使用済みオムツについて保育士が行う作業は?
→蓋付き容器を児童毎に設置、オムツを園児毎に分けて保管し、保護者に持ち帰ってもらう、定期的に消毒・保育士の労働環境改善、保育環境改善に繋がる
・公立保育所で自園処理するのに必要な経費は?
→週3回のゴミ収集で年間約900万円・帰宅してから処分する保護者、保育士の業務負担を踏まえると、十分な効果がある
・オムツを自園処理している施設を保護者が自由に選べる状況か?
→自園処理している施設へ入所できない可能性もある・平成31年度実施へ向けた考えは?
→児童への関心、便の状況から健康状況を把握して欲しいので、使用済みオムツを持ち帰ってもらっている
→意義や効率性について意見が出ている、大半の施設で処理している状況ではなく、公立園での処理に到っていない
→新年度予算では午睡時の事故対策へ重点投資した・健康状態は他の方法で代替可能、子供の便を見ても分からない、口頭で伝わる
・便を見なかったら関心がない?感情的な議論
・前例に囚われず、取り組んで欲しい
大阪市の答弁は後ろ向きでした。しかし、吉村市長やチーム会議の判断で「自園処理」が検討される事になりました。
当方の試算によると、1人あたりの処理費用は月額250円です。仮に保護者負担となっても、保育所で処理して欲しいです。
また、公立保育所が自園処理を検討・実施するのであれば、私立保育所・地域型保育事業にも影響が及ぶでしょう。「公立保育所と同じ様に処理して欲しい」という声を無視するのは難しいです。
いずれの施策も子育て世帯の要望に沿った内容です。早期かつ積極的に進めて欲しいと思います。
淀川区北東部に住んでいます。
上の子は3月に小規模を卒園の為、一斉入所で3才クラス。下の子は1才クラスに申し込みをします。
1才クラスはもちろん激戦ですが、3才は元々募集枠が少ないのに小規模施設ばかり増やした結果、昨年は入所が決まらないお子さんが多く、近隣の幼稚園は兄弟枠や縁故枠でほぼ埋まってしまい入園が困難な状況です。
期間限定保育は、確かに空いている枠を活用出来ますが、3才の枠も同様に増やしていかなければ、益々状況が悪化するのではないかと思います。
コメントありがとうございます。
大阪市は小規模保育を充実させようとしていますが、結果として3歳児入所が著しく難しくなっていますね。
多くの保護者が入所を希望する保育所(6年保育)を新設するのが本筋でしょう。
保育園にも幼稚園にも入れないと、共働き家庭は本当に困ってしまいますね。
淀川区北東部は認可外保育も少ないです。
来春は東三国に新設保育所ができる予定ですが、第1希望が集中しそうです。
期間限定保育を行う施設では、開所2-3年目に外部から3歳児クラスへ入所するのは極めて厳しくなりますね。
2歳まで家庭で保育する家庭が、3歳児から保育所へ入るのは難しい時代です。