H30保育所等一斉入所結果分析、3回目は予定を変更し、各区毎・0-1歳児の入所保留率見ていきます。なお、昨年の分析記事はこちらからご覧下さい。

過去の記事を見直している最中、「区毎・年齢毎の入所保留率が簡単に算出できるのに、分析記事で掲載した覚えが無い」という事に気づきました。

保育所等への入所を考えている方にとって、住んでいる区で入所を申し込んだ児童の何パーセントが入所決定しているかは非常に気になるでしょう。大阪市が公表しているデータから作成しました。


大阪市の保育所入所待機児童数について(平成30年4月1日現在)より作成(以下同じ)

入所保留率は区によって大きな違いがあります。

最高が中央区の28.0%、最低が浪速区・東成区の9.1%でした。中央区は申し込んだ児童の約3割が、浪速区・東成区は1割弱が入所保留だった計算となります。

しかし、年齢毎の入所保留率を見ていくと、違った姿が見えてきます。

0歳児保留率は10.4%、此花区・大正区が20%超

まずは0歳児です。大阪市全体の0歳児保留率は10.4%でした。

特に保留率が低かったのは、意外な事に中央区・都島区・福島区と言った都心部でした。こうした地域は保育施設、特に地域型保育事業が急増しています。0歳児募集数も急増し、同時に保育施設の設置密度も高くなっています。

特定の保育所等に限らず、一定の地理的範囲内にある保育所等のどこかに入所できれば良いと考えた方も多いのではないでしょうか。

反対に高かったのは、此花区(28.2%)・大正区(22.1%)でした。

此花区は申込数85人に対し、利用数は61人に留まっています。H30申込分析記事によると、しんが保育園高見町保育所秀野保育園の申込数が募集数を大きく上回っていました。

しんが保育園の隣接園は1駅先、高見町保育所や秀野保育園の近接園も0歳児申込数が多くなっています。自宅から登園できる数少ない保育所を希望したが、全てで入所できなかった0歳児が少なくなったと推測されます。

特定保育所への申込みが偏っているのは、大正区も同じです。分析記事によると、同区の0歳児申込は千島保育所大正保育所大正北保育所大浪保育所という公立保育所等へ集中しています。

実は同区の0歳児申込募集数の内、約半数を鶴町学園が占めています。しかし、同学園は大正区中心部から離れた鶴浜地区(IKEAが近い)にあり、中心部から登園するのは非常に難しい場所となっています。

その為、大正区全体で見ると0歳児募集数は多いのですが、登園・通勤しやすい場所にある保育所等は限られているのが実情です。区全体の数字を見るだけで無く、地域毎の細かい数字も見ていく必要があるという一例です。

1歳児保留率は21.4%、北区・中央区・天王寺区・淀川区が3割超!

待機児童問題が最も深刻なのは1歳児です。数字からも読み取れます。大阪市全体の入所保留率は21.4%に達しています。申込者の内、2割が保留となった計算です。

特に高いのは市内中心部です。最も高いのは中央区(35.8%)、次いで天王寺区(34.6%)、北区(33.0%)、淀川区(32.2%)となっています。1歳児申込者の内、3人に1人は保留となった計算です。

これらの区は交通や生活の利便性が高く、ファミリー向けのマンション開発が盛んに行われている地域です。その為、保育を必要とする子育て世帯が多く転入しています。

中央区は保育所の新設が行われなかったのが大きな理由の一つでしょう。中間発表段階では大半の保育所の入所倍率が3倍を大きく超えていました。区全域(旧南区を除く)で保育所が非常に不足しています。

また、同区の保育所は「0歳児募集数が非常に多く、1歳児は少ない」のも影響しています。

大半の保育所が0歳児募集数を多くして園児を早期に確保する一方、1歳児募集数は低く抑えている様子が読み取れます。0歳児募集数を増やすよう、大阪市役所・中央区役所が指導すべきではないでしょうか。酷すぎます。

天王寺区も非常に深刻です。6年保育を行う保育所に申込みが集中し、更には地域型保育事業も決して多くありません。入所保留となり、認可外保育施設を用いる児童が少なくないでしょう。

同区は入所者の平均点が非常に高いのも特徴的です。ここ数年の間、天王寺区は常に入所者平均点が上位3区に位置していたと記憶しています。所得が高い共働き世帯が多く、入所できなくても認可外保育施設を利用して空きを待つ家庭が多い為でしょう。また、単身赴任加点がある家庭も少なくないと聞きます。

同区ではこの春に2保育所を開所し、今夏~秋に掛けては更に2保育所を開所します。しかし、それでも区全域で保育所が足りません。

この2区と異なり、申込数が年々増加しているのが北区です。中央区の様に、0歳児募集数の方が多い保育所が一部に留まっているのが良心的です(それでも何カ所かありますが)。

実は北区では5箇所の保育所を新設しました。5保育所の1歳児募集数は63人でした。しかしながら、1歳児申込数の伸びに追いつかず、多くの保留児童が生じてしまいました。

H31の保育所新設が難航した場合、同年度の1歳児入所は非常に難しくなる事が予想されます。「とにかく保育所が足りない」という一言に尽きます。

再開発の波は、淀川を越えた淀川区にも押し寄せています。数年前から淀川区北部(主に三国・宮原地域)では大規模な再開発が進展しています。

この地域では1歳児入所倍率が3倍を超えた保育所が多くなっています。問題を深刻化しているのは「地域型保育事業の少なさ」です。待機児童問題が深刻な市内中心部では、地域型保育事業は一定の存在感があります。しかし、淀川区北部にある地域型保育事業は決して多くありません。

その為か、「フルタイム共働きで200点ある、でも一次調整で保育所も地域型保育事業も決まらなかった」という話を複数聞きました。中央区と同じ様に、0歳児募集数が多い保育所の存在も無視できません。

1歳児保留率が低かったのは、東成・浪速・生野区

反対に1歳児保留率が低かったのは、東成区(9.1%)、浪速区(11.0%)、生野区(11.5%)でした。

東成区は北中本保育園の1歳児入所倍率が4倍だったのを除くと、概ね申込数と募集数が均衡しています。

1歳児募集数が多い保育所が大半を占めるのに加え、東成かいせい保育園・あいあい保育園新深江園の新設が効いています。

浪速区は、区保育部にある桜川保育園・ソフィア稲荷町保育園へ申込みが殺到しました。

1歳児保留者の大半は、この2園を第1希望とした方でしょう。この内、半数が他の保育所等へ内定、残り半数が入所保留になった計算です。

生野区は1歳児入所倍率が2倍を超える保育所と、1倍を大きく割る保育所等が混在しています。

ただ、地理的な偏りがあまりないので、第1希望で内定せずとも第2希望以下の保育所等へ内定した方が少なくないでしょう。

西区・阿倍野区は大幅に改善

昨年と比較できる数字は出していませんが、保留率が肌感覚で著しく低下した区があります。西区(27.5%)と阿倍野区(24.9%)です。

両区は大阪市内で最も入所しくい区に分類されていました。何らかの加点がある1歳児でも入所できないケースが少なくなく、待機児童問題が極めて深刻になっていました。

しかし、今年は数多くの保育所等が新設されました。結果、1歳児を中心に大幅に入所しやすくなっています。西区は東部、阿倍野区は北部で入所しづらい傾向が未だにありますが、昨年とは雲泥の差です。

心配なのは来年です。保育所等を新設するペースが急激に緩むと、反動で入所しづらくなる恐れがあります。

次回は区毎・2-5歳児の入所保留率

次回は続きです。区毎・2-5歳児の入所保留率を掘り下げていきます。

ざっと見た限り、2歳児は1歳児と似た傾向、3歳児は0歳児並みに入りやすい、4-5歳児はバラツキが大きくなっています。