幼児教育・保育の無償化策で焦点の一つだったのが「認可外保育施設の無償化範囲」です。

「3-5歳児は月3.7万円まで、0-2歳児(住民税非課税世帯に限る)は4.2万円まで無償」とする、有識者会議の報告書がまとまりました。

 政府は31日、2019年10月から始める幼児教育・保育の「無償化」の詳細をまとめた。自治体から「保育が必要」と認定された世帯について、認可保育所のほか、ベビーシッターなど幅広い認可外のサービスも支援の対象とする。ただ認可外の支援には上限を設け、住民税非課税世帯の0~2歳児は月4.2万円、3~5歳児は月3.7万円とする。子育て世帯の負担軽減策が前に進む。

「無償化」の仕組みは、国が認可した施設やサービスかどうかで大別される。例えば、3~5歳児を認可保育所や認定こども園に預ける世帯は保育料の負担がなくなる。一方で幼稚園や、自治体が独自で認証した認可外の保育サービスへの支援は上限付きだ。

認可外の保育サービスには、手厚い内容で利用料が高額なケースがある。政府による財政支援の公平性を考慮し、認可外のサービスへの補助額は、全国の認可保育所の平均保育料(3.7万円)を上限にした。幼稚園は月2.57万円が上限だ。通園送迎や昼食の材料は補助の対象に含まない。

厚生労働省によると、3歳児の認可外保育施設の利用者負担の平均額は月4万円。新たな仕組みで補助を受けても、月3千円が自己負担になる計算だ。待機児童の多い東京都内では保育料が月10万円を超える認可外保育もある。「無償化」というものの、都市部を中心に一定の負担は残る。

対象となる認可外サービスには、ベビーシッターやベビーホテル、事業所内保育所などほぼ全てが含まれる。幼稚園の預かり保育も対象だ。認可外の施設は届け出があるものだけで約1万1千カ所。国の監督基準を満たしていなくても、自治体への届け出と立ち入り検査を受けることを条件に認めた。5年間で監督基準を満たすよう求める。

もっとも、恩恵を受けるのは「保育の必要」を認定された世帯だ。利用者の申請に応じて、市区町村が各世帯について共働きやひとり親で働いているといった就労状況、介護が必要な家族がいるか、妊娠中や出産直後かといった事情などを調査。「保育の必要」があるかどうかを判断する。

認可サービスの利用者はすでに「保育の必要」を認定されているため、そのまま保育料の支払いが不要になる。認可外サービスの利用者は保育料をこれまで通り払い、数カ月に一度、自治体に申請して補助金を受け取る仕組みだ。複数の施設やサービスを使っている場合でも、上限範囲内なら補助を受けられる。

「無償化」の財源は19年10月に予定する消費増税による増収分を使う。認可と認可外を合わせた幼児教育・保育無償化には8千億円規模を投じる見通しだ。ただ、認可保育所などに入れない待機児童はいまだ増加傾向にある。保育サービスの供給不足や地域ごとの偏りが大きいためで、「無償化」によって潜在的な需要が掘り起こされれば、待機児童問題が一段と深刻になる恐れもある。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3121374031052018EE8000/

無償化自体は歓迎します。一方、無償化の対象となる人や外れてしまう人、金額の多寡、保育施設の不足感を煽る等、様々な歪みや副作用が予想されます。

また、無償化できる財源があれば、更によりよい子育て支援施策も展開できるでしょう。多くの子育て世帯にとって、悩みの種は「高等教育費」ではないでしょうか。

認可外保育施設の無償化案をまとめた報告書は、内閣官房(内閣府では無い)のウェブサイトに掲載されています。

幼稚園、保育所、認定こども園以外の無償化措置の対象範囲等に関する検討会報告書

骨子は下記の通りです。
・認可施設の利用者との公平性の観点から、保育の必要性を満たす認可外保育サービスの利用者も無償化の対象とする
・質の確保の観点から、認可外保育施設の届出及び指導監督基準を無償化の要件とする
・但し利用者の公平性及び質の向上を促進する観点から、5年間は指導監督基準の有無を問わない(経過措置)
・幼稚園の預かり保育の利用者も保育の必要性の認定を受ける事を条件とする
・通園送迎費、食材料費、行事費等は無償化対象から除く

無償化をイメージ化した図表も掲載されています。

幼児教育・保育無償化の問題点は、日本総研の池本美香氏のレポートがコンパクトにまとまっています。

【日本総研より】幼児教育無償化の問題点(池本美香氏)

焦点の一つとなるのは「無償化対象となる認可外保育施設は、指導監督基準を満たした施設に限るか否か」という点です。保育の質を担保するという観点から、「指導監督基準の遵守は不可欠である」という意見が主張されています。

私も同感です。指導監督基準を満たない施設も無償化対象とすれば、たとえ経過措置であったとしても問題がある施設を温存しかねません。「必要悪」とは言えません。

この点につき、一定の要件を満たした児童が通う認可外保育施設を無償化する施策を始めた大阪市は、「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書等(以下、「証明書等」とする。)を交付されている認可外保育施設を利用する」と明示しています。

【大阪市政】認可外保育施設(基準あり)も4-5歳児教育費無償化へ

有識者会議でも先行事例として参考にしたのでしょう。しかし、どうして経過措置を設けてしまったのでしょうか。ヒアリング内容では、指導監督基準等に関して言及されている部分があります。

無償化について、 「全ての子供」と言って いるのに 、認可外 は対象ではない と言 われると、当事者の人は 「何で ?」と思う 。このよう なしっかりとした 検討の 場 は、とてもありがたい。家庭にとっては、 喜んで 認可外に 行っているわけではな いこともある。 認可保育所に入れなかったからということもあるし、 例えば夜の 仕事をしていて、 24 時間保育に入られている方は認可外のことが多い。そういう 人が無償化の対象からこぼれてしまうというのは どうなのか

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mushouka/dai1/gijiyousi.pdf

認可外保育施設は 、待機児童の受け皿だけではなく 、 認可保育所等では 実施が困難な夜間や休日の 保育 ニーズに対応している という実態があり 、 その役割は非常 に大きいものがある。一方で、指導監督基準を満たさない施設もあり 、 無償化をするとい うことになれば、その対象範囲については、例えば 、 子供の安全に関する基準が確保され ていることを求めるなど、一定の条件を付することが必要ではないかと考えて いる。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mushouka/dai6/gijiyousi.pdf

ざっと見た限り、「指導監督基準を満たしていない施設も経過措置を設けて無償化対象とすべき」という指摘は見つかりませんでした。誰が「経過措置」という文言を加えたのでしょうか。