市民から寄せられた切実な要望が掲載されているのが「大阪市民の声」です。今回は「ひとり親家庭の保育所入所の優先順位を見直してほしい」という意見を取り上げます。

市民の声
離婚に際して仕事を退職し、とある区へ引っ越しました。そのため、子供も保育園を退園、私は求職状態で、保育所への申込みをしました。
しかし、新設の保育所にも入れず、認可外に預けました。どのような形でも保育園にあずけていない子持ちをどこも雇ってはくれません。また、就職活動すら不可能です。
当該区は、一人親で求職活動中よりも、共働きで育児休業中でも在職している家庭が優先のようです。一人親で所得がなくても、仕事をしていないから点数が足らない。その一点張りです。
こんなことが許されるのでしょうか。
長年働いていたことも、直前まで保育園にあずけていたことも加点されない。有り得ないと思います。
他都市では一人親は最優先でした。保育園は生活に困窮している世帯が優先されるべき公的な場所であるはずです。
不信感しかありません。早急にお返事と、優先順位の見直しをお願いいたします。

市の考え方
保育施設等の利用申込みのあった世帯については、「保育利用調整基準」に基づき利用調整(入所選考)を行っています。この「保育利用調整基準」では、保育の必要性の高い世帯から順に利用決定がされるよう点数が設定されており、複数の世帯が同じ点数で並んだ場合には、順位表により優先順位を判断するものとしております。
本市では、ひとり親世帯が、保育が必要な事由として、就労、就労内定、就学、求職活動により申込みを行う場合については、同じ就労条件等で両親のいる世帯よりも高い点数を設定しており、就労している、もしくは就労する意思のあるひとり親世帯が保育施設等を優先的に利用できるよう配慮しています。
ただし求職活動については、就労や疾病・障がい等、その他の保育が必要な事由と比べて保育の必要性が高いとは言い難いため、保育利用調整基準においては低い点数を設定しています。ひとり親世帯の保護者が求職活動を理由に保育施設等の利用を希望する場合は、上記のとおり両親のいる世帯において保護者が求職活動をしている場合よりも優先度を高めており、両親のいる世帯において短時間の就労をしている場合と同様の点数としております。
なお、保護者の方の過去の勤務経歴等については、利用開始希望日時点における保育の必要性には直接的に関係するとはいえないことから、保育利用調整基準においては考慮しておりませんので、ご理解いただきますようお願いします。

http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000434992.html

大阪市の保育利用調整基準は、保育を必要とする理由や世帯の状況等に応じて細かく点数化しています。

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育児休業中であっても、共働き(フルタイム)であれば基本点数200点となります。一方、求職活動中のひとり親は160点(ひとり親100点+ひとり親の求職活動中60点)とされています。

こうした世帯が保育所等への入所で競合した場合、育児休業中のフルタイム共働き世帯が優先されます。

保育所等は「保育を必要とする児童」に対して保育を行う福祉施設というのが建前です。しかしながら、近年は都心部に住んで共働きしている世帯に対する「保育サービス」という側面が強くなっているのも事実です。

福祉施設という性質を強調するのであれば、強い支援を要するひとり親世帯を優先するという考え方に繋がります。一方、現に保育に欠ける児童への保育を優先するのであれば、フルタイム共働きで自宅を空ける世帯を優先する事になります。

大阪市に限らず、大半の自治体では「現に保育に欠けている、就労中の世帯」を優先する基準が採用されています。ひとり親家庭といえども、例外視されません。

とはいえ、大阪市の調整基準でひとり親世帯が優先されているのも事実です。月16日以上かつ週16時間以上又は週4日以上かつ日4時間以上働いていれば、100点(+ひとり親100点で合計200点)と評価されます。フルタイム共働きと同点数です。

更に、ひとり親がフルタイムで働いているのであれば、ひとり親100点+フルタイム就労100点+世帯状況(ひとり親)9点=209点となります。きょうだい加点・認可外加点を上回る点数となるので、募集枠があるほぼ全ての保育所へ入所できるでしょう。

敢えて市民の声を投稿した方のミスを指摘するのであれば、「離婚に際して仕事を退職し、とある区へ引っ越しました。そのため、子供も保育園を退園、私は求職状態で、保育所への申込みをしました。」という点でしょう。

退職と同時に転居・退所してしまったのが痛いです。保育所を一旦退所してしまうと、ひとり親・求職中という点数で再入所するのは容易ではありません。市の考え方にある通り、「過去の勤務歴」は考慮されません。

理想的な段取りは「退職→保育所へ登園しながら求職→内定→転所申請→転所内定→転居」という流れでした。切れ目無く保育所へ登園できたでしょう。

保育所在籍中の転居には細心の注意が必要です。転居先から転居元近くにある保育所へ登園し続け、転居先近くの保育所への入所内定を待つ方もいます。

お世話になっている保育所でも、ひとり親世帯の方は少なくありません。他の政令市等と比べ、大阪市はひとり親世帯が飛び抜けて多いという数字を実感します。ひとり親世帯やその子供が自立して生活する為に、様々な支援が必要なのは言うまでもありません。

ただ、過度な支援を行うと、世帯所得が高くて多額の納税を行っている世帯が不満感を募らせるという側面もあるでしょう。世帯毎の所得格差が非常に大きい、大阪市の現実です。