大阪市の認可保育所への入所選考や中間発表等につき、産経新聞が記事化しています。
産経新聞は大阪市の認可保育所や待機児童問題に関係する記事を何度も掲載しており、関心の強さが窺えます。
西区や浪速区の事例が多いのは、同社の大阪本社が浪速区湊町にあるからでしょう。
「入れる? 入れない?」保育所選考 透明化半ば 中間発表・点数制 大阪市が試行錯誤
2013.12.28 14:52
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/131228/wlf13122814570018-n1.htm(以下、引用部分は全て同じ)来年4月の保育所入所に向け各地の自治体で、選考の作業が進んでいる。希望する保育所に入所できるのか、やきもきした日々を送っている保護者に向けて、多くの待機児童を抱える大阪市は選考作業の可視化を進めている。選考結果だけでなく、応募状況の中間発表も行うのが特徴で「見える化」が進んだと評価の声もあがるが、こうした市の取り組みが保護者に十分に浸透していない現状もある。今年4月の待機児童数も287人とまだまだ多く、課題解決に向けたの道のりは険しそうだ。
■HPを活用
大阪市は今年11月、保育所選考の中間発表を開示した。関係者はホームページの画面を食い入るように見入っていた。
「想像していたほどの倍率じゃなかった。第2希望もあるし、どこかには入所できそう」
大阪市浪速区の会社員、小寺ゆきさん(36)は、ほっとした表情を見せた。希望したのは区内でも人気が高い保育所。15人の募集に22人が応募していたが、「ほかの地域に比べればましだった」という。
大阪市中央区の女性会社員(28)は第1希望と第2希望の保育所の順番を入れ替えようか悩んだ。来春2歳になる長女を預けたいが、どちらの保育所も2歳児の新規応募枠はゼロ。転出などによる「空き待ち」の状態だったが、第2希望の保育所の方が応募者が少なかった。入所できなければ、現在通っている無認可保育所に預けながら「空き」を待つことになる。結局「保育内容や自分の条件を考えて」希望順位は変えなかったが、「過程が分かれば納得のいく判断ができる」と話す。
中間発表で、市が申込者数に見合う募集枠を用意できたのは24区中4区だけ。最激戦区は、248人に対し435人の応募があった中央区だった。
浪速区の事例で紹介されている方が第1希望として申し込んでいるのは区内北部にある保育所と推測され、記事中にある通り、区内では最も人気が高い保育所の1つです(浪速区の分析内容はこちら)。
最激戦区は記事の通り中央区、続いて西区・阿倍野区となっています(詳しくはこちら)。
再開発によるファミリー層の流入と御堂筋本町ちどり保育園の開所が平成26年4月に間に合わなかったのが、中央区が最激戦区となった大きな原因です。
西区・阿倍野区も概ね同じ原因であり、一方で入所倍率が大きく下がった北区・福島区・都島区・天王寺区は保育所の新設が効いています。
中央区の2歳児は入所するのが最も困難な地域・年齢で、今年の入所倍率は5.07倍です(中央区の分析結果はこちら)。
夫婦共働きかつ何らかの加算点(兄姉加算や認可外保育施設加算等)で201点以上なければ、入所するのは恐らく極めて困難でしょう。
こうした激戦区では、比較的入所倍率が低い0歳児で入所するのが手堅い方法です。
ただ、それが出来るのは4-9月生まれの場合であり、10-3月生まれの場合は原則として入所倍率が激増する1歳児入所となってしまいます。
「申込者数に見合う募集枠を用意できた4区」は大正・西成・平野・生野区です。
これら4区は保育所在籍率(保育所在籍児童/全未就学児)が概ね50%であり、既に住民ニーズを満たすだけの保育所が設置されていると考えられます。
ただ、大正・平野・生野区は決して交通の便が良いとは言いがたく、市内中心部へ通勤するには時間が掛かってしまいます。
一方、西成区は市内中央部へ直通する地下鉄四つ橋線(大国町駅での御堂筋線への乗り換えも便利)や堺筋線、南海本線・高野線が区内を通過しており、市内中心部へ通勤するには便利な地域となっています。
入所可能性と利便性という観点から、西成区は穴場的な地域かもしれません(入所基準点にかんする分析記事はこちらです)。
■変更も可能こうした中間発表の仕組みが導入されたのは平成25年度入所の前回選考からだ。全国的にも珍しい試みで、中間発表で途中経過が分かることによって、早めに見通しが分かるほか、倍率が高いケースなら希望の保育所を変更することができるメリットがある。
大阪市では10月から選考を開始し、11月に中間発表。12月と翌年1月に選考が行われ、2月半ばまでに入所する保育所が決まる。選考開始から決定まで5カ月を要する長丁場の“戦い”だ。
選考は保護者の就労状況などを考慮して決められるが、以前は明確な基準が明らかにされていなかった。選考に落ちたときは個別に問い合わせをすれば、市の担当者が理由を説明してはいたが、保護者にとって選考の全体像は分からないまま。市保育企画課の多田勝哉課長は「プロセスがわかりにくく、結果が納得できないというご意見があった」と振り返る。
■市長の一声
制度改善のきっかけは、「選考過程を透明化するべきだ」という橋下徹市長の指示だった。
25年4月入所の選考からは、途中経過の公表だけでなく、入所の必要性を点数で示す制度も導入された。
例えば、保護者が週5日以上かつ日8時間以上働いている=100点▽国内の単身赴任=6点▽65歳未満の祖父母に預けられる=マイナス3点、といった具合に点数をつけ、高得点世帯から入所が決まる。選考終了後には入所決定者の点数分布も公開。入所できなかった場合も何点足りなかったのかが分かる。
それでも、初年度には「機械的だ」「就労状況を点数にするのはおかしくないか」といった批判も浮上。26年度からはきょうだいそろっての入所希望者には点数を増やすなどの修正も行ったという。
可視化の取り組みについて多田課長は「就労状況を点数でどこまで示せるのかという課題もあり、これが最善と思っているわけではない。改善を重ねながらよりよい制度に変えていきたい」と話している。
記事中で「倍率が高いケースなら希望の保育所を変更することができる」とありますが、実際には変更しても影響がないケースが多いと考えられます。
その理由は入所選考方法にあります。
当該保育所を第1希望とする児童の中から点数が高い順に決まるのではなく、市全体(ないしは区全体)において点数が高い児童から入所が決定していく流れとなっています。
希望保育所を変更しても全体に於ける順位に変動はありません。
保育所の希望順位付けは倍率に関係なく、あくまで保育方針や登園の利便性等を基に決められるのが良いと思います。
一方、倍率は入所できるか否かの判断を行う上で重要な目安となります。
昨年より入所倍率が上がっていれば入所最低点は高く、逆に下がっていれば低くなる可能性が高いと考えられます。
点数制については賛否両論を含めて様々な声を聞きます。
決して完璧な制度ではありませんが、保育の必要性や入所の可否を客観的に判断できる基準として極めて有用だと考えています。
一方で全てのケースを想定して点数に落とし込むのは困難でしょう。
例えば1日4時間は介護、4時間は外で就労している場合は現行の点数制度からは正当に評価されないと推測されます。
また、点数制導入(平成24年度)以前は明確に最優先と位置づけられていたひとり親世帯に対する評価が、点数制導入以後は他の世帯と同様に200点をベースとして計算されている点も実情とそぐわない様に感じます。
■待機児童解消遠く
可視化を進めることで、公平性を高めようという大阪市の試みだが、保育所の入所希望者に、こうした市の取り組みについて尋ねたところ、意外にも「知らなかった」と答えた保護者も少なくない。浸透度はまだ十分とはいえないようだ。
2歳の次男の選考面接のため区役所を訪れた大阪市浪速区の主婦(34)は「中間発表があるなんて知らなかったし、面接でも教えてくれなかった。情報を公開しているという実感はなかった」。また、4カ月の次女を入所させたい別の主婦(33)も「点数化の取り組みは聞いていたが、ホームページに中間発表が載っているのは気づかなかった」と話していた。
また、「選考透明化」の動きには評価の声があがる半面、「保育所に入れなければ意味がない」という厳しい声がある。大阪市の待機児童は今年4月で287人とまだ多く、「根本的解決を急いでほしい」という要望は根強い。
市は民間事業者の保育所事業参入を促すなどして、保育所増設も進め、26年4月には19カ所で保育所を新設するなどの対応策もとっている。
ただ、待機児童が多い都心部の地域では用地確保が難しく新規参入が難しいという事情もあり、同課は「民間参入のめどが立ちやすいような工夫を考え、市民のニーズに応える保育環境づくりを進めたい」と話している。
中間発表が行われている事を知らなかった方は確かに多いです。
知る限り、私の周囲では知っている方が少数派でした。
申込に関する大阪市HPや入所案内に記載が見つからず、情報提供不足が感じられます。
入所案内1ページ目の「受付期間」の下に「中間発表:平成25年11月12日予定」と記載されていれば、より多くの方が気付いたでしょう。
なお、H26一斉入所に関する当ホームページ上での分析は、原則として全て中間発表をベースに行っています。
中間発表後に希望保育所を変更・追加される方はごく一部なのでしょうか、それとも意外と多いのでしょうか。
面接時に追加を促すケースは頻繁に聞くので、追加される方は多いかもしれません。
記事で「大阪市の待機児童は今年(平成25年)4月で287人」とありますが、これは保育所へ入所できなかった入所保留児童から特定保育所希望・自宅で求職中・転所希望等を除いた数字です。
これらを除かない入所保留児童数は3070人でした(詳細はこちら)。
新規入所申込者の内、約25%に該当します。
待機児童問題は深刻ですが、一方で保育所を増設するのが容易ではないという事情も理解できます。
用地不足に加え、職人不足・資材の高騰等により、平成26年4月に保育所を新たに開所する予定が延期されているケースが少なくありません。
市内中心部を中心に更なる増設が望まれる一方、そうした地域は増設が容易でなく入所するのに高い選考点数が必要です。
世帯の点数に応じて保育所へ入所できそうな地域に居住するというのも一つの考え方でしょう。
特にこれからは年度末の引越シーズンを迎え、大阪市内の保育所事情等を知りたい方も少なくないかと思います。
保育所や幼稚園の存在を調べても、入所できるか否かまでを調べる方は決して多くないでしょう。
保育所入所の見通しや事情等について知りたい方は、各種お問い合わせからお気軽にお問い合わせ下さい。
また、不動産業関係の方からの問い合わせも随時受けております。