平成26年度保育所入所申込状況の分析、1回目は大阪市全体を対象として検討します。
大阪市全体や各区毎のざっくりとした状況、具体的には前年からの変化や新設保育所の影響を見ていきます。

大阪市から発表された平成26年4月入所申込者数及び募集数に基づき、一斉入所申込に掛かる区別・年齢別・年度別一覧表を作成しました。

H26_nyuusyo_bunseki1
H26_nyuusyo_bunseki1.pdf
(両方とも同じデータです、見やすい方をご覧下さい。)

昨年(平成25年度)と比較し、入所倍率が0.1倍以上増加した箇所はオレンジ、逆に0.1倍以上減少した区は水色で表示しています。

【大阪市全体】
申込数が13357人から13954人と597人増える一方、募集数は11238人から12055人へと817人増え、全体の倍率は1.19から1.16へと0.03倍下がっています。
申込数が増えた主たる原因は0歳児(+260人)及び1歳児(+260人)の増加です。
特に0歳児は募集数の増加数(+152人)を大きく上回っています。
募集数が増えた最大の原因は保育所の新設でしょう(詳しくは各区毎の詳細分析で触れる予定です)。

【年齢別】
上でも触れた通り、0歳児(H25:2961人→H26:3221人、以下同じ)及び1歳児(4940→5200)の申込数が激増しています。
1歳児の募集数は432人増えているので追いついている形ですが、0歳児は全く追いついていません。
また、1歳児の入所倍率は1.56→1.44倍、2歳児は1.67→1.60倍と、昨年より0.1倍ほど下がりながらも高止まりしています。
そして、0歳児も0.97→1.00倍となり、ほぼ募集数=申込数となりました。
これだけ保育所を新設しても、市全体としては待機児童問題の解決には至っていないと推測されます。

【区毎】
ただ、保育所が新たに設置される区を見ると、その効果は大きいものと考えられます。
典型的なのが申込数以上に募集数が増えている北区です。
全ての年齢で入所倍率が低下し、全体でも-0.58倍となっています。
都島区・福島区・天王寺区も同じ様な状況です。

新設保育所を集中的に設置したにも関わらず、入所倍率が上がってしまっているのが中央区及び西区という人気エリアです。
特に中央区は酷く、0歳児が0.83→1.35倍、2歳児が2.00→5.07倍となっています。
(※ただ、両区とも募集数が昨年と変わっていないので、新設保育所が含まれていない数字かもしれません、結論はちょっと保留します)

また、淀川区も新設したにも関わらず倍率が+0.1倍となってしまっています。
募集数が51人増えたにもかかわらず、申込数が129人も増えてしまっているのが原因です。
旭区は募集数が37人減少する一方、申込数が44人増えて倍率が1.19→1.47倍と跳ね上がっています。
保育所の新設予定がずれ込んでしまった阿倍野区は1.59→1.64倍と高止まりしたままです。

区全体の入所倍率を高い順から並べると、下記の表の様になります。
選考点数等の関係で入所するのが単純に難しい順序で並んでいるわけではありませんが、ある程度の参考になるかと思います。
中央・西・阿倍野の倍率が上昇しているのは、保育所の新設が予定通りに進まなかったのが大きな原因です(平成26年度中には予定に追いつきそうです)。

H25H26差異
中央1.421.80+0.38
西1.591.73+0.13
阿倍野1.591.64+0.05
住吉1.411.48+0.07
1.191.47+0.28
福島1.721.40-0.32
天王寺1.931.39-0.54
西淀川1.271.36+0.09
此花1.341.30-0.04
淀川1.201.30+0.10
1.861.28-0.58
浪速1.611.25-0.36
鶴見1.231.19-0.04
住之江1.151.17+0.02
東成1.151.14-0.01
1.321.09-0.22
東淀川1.171.06-0.11
東住吉0.831.04+0.21
城東1.201.03-0.18
都島1.501.03-0.47
大正0.980.95-0.03
西成0.770.89+0.13
平野0.900.85-0.05
生野0.790.82+0.03
大阪市1.191.16-0.03

うーん、これだけ新設しても、なかなか需要には追いつかない様子です。
一方、4歳児・5歳児(特に新設保育所)は大きく募集割れしてしまっています。
恐らくは保育所から幼稚園へ入園する児童が少なくないからでしょう。
4歳児・5歳児(及び相対的に余裕がある0歳児)の定員を減らし、1歳児・2歳児の募集枠に振り替えられれば良いのですが、施設や保育士の人員配置の関係で難しいのかもしれません。

これについては埼玉県朝霞市の事例が参考になりそうなので、ご紹介します。

その上で新たに待機児童対策として、定員調整が提案され了承されています。
朝霞市の待機児童問題は、1~2歳児が深刻な状況で、3~5歳には逆に大きな余裕があります。
そうしたなかで、漫然と待機児童対策として保育園を増やすだけの対策を行えば、3~5歳の定員がだぶつき、1歳~2歳児の保育需要が解決しない一方で、3~5歳児には定員割れというミスマッチが起きてきます。それは保育事業者と福祉予算を痛めつけることになります。私はここ1年、年齢別の不均衡問題を解決するよう市に伝えていました。
今回の提案では、毎年の新たに開く保育園は、新設の段階で1~2歳はすぐ埋まる一方、4~5歳児が著しい定員割れでスタートし、せっかくの施設や職員がもったいないことと、保育園側も経営的に苦労していたことに着目した対策が打たれます。
来年2014年4月に開く、あさしがおか保育園(浜崎団地向かい)と、仲町どろんこ保育園では、4~5歳児の募集はせず、その分の施設と職員を、1年目は1歳児、2年目はそのまま持ち上がって2歳児の受け入れ枠に振り向けます。
そのようにして超過受け入れした子について、3歳児からは市内全体で余裕があるので、近隣保育園等に優先転園してもらう運用をすることが始まります。
これによって、2歳児の大半は待機児童問題が解消し、夫婦ともにフルタイム、あるいはひとり親のフルタイムの場合でも、園の選択で厳しい条件を出さなければ入ることができる可能性が見えてきました。1歳児については待機児童数を大幅に削減できる見込みです。保育の連続性については課題ですが、どうしようもない状況よりはましになるのではないかと思われます(まだそれでも1歳児は年度途中入所はまだ厳しい状況が続きます)。
ただしこの制度は、①追加枠がなくなる再来年にどうするのか、②2歳児が終わった後の転園がスムースに行くのか、が課題になります。もちろん3歳児からは定員に余裕があるので、数理上は可能でしょうし、事前了解事項として入所させるのでしょうが、2年たった後に軋轢になるかも知れません。
きょうも歩く くろかわしげる(黒川滋)の活動日記&報告です。

次回は各区毎・地域毎の状況をより具体的に分析していきたいと思います。
面接が迫っているので、何とか今週中には・・・・という予定でいます。