保育所へ入所した後は、保育の必要性が全く無くなった等の事情変化が無い限り、卒園まで在園できるのが一般的です。

極一部の自治体では育児休業を取得したら退園するように求めています。昨年は所沢市での育休退園制度が大きな問題となりました。

【ニュース・所沢育休退園】原告2人に通園継続認める 埼玉県所沢市

こうした運用に対しては、安定的な保育を欠く・子供に悪影響を与える・親の意思にそぐわない等の否定的な意見が少なくありません。その為、在園中に退園を求めている自治体は殆ど無いそうです。

しかし、例外があります。沖縄県の一部の自治体です。今年4月以降に59人が継続在園できず、保育所からの対処を迫られたそうです。いわゆる「在園児選考」と呼ばれるシステムです。

 認可保育園の入所選定で、すでに在籍している園児を新規に申し込んだ乳幼児と同列で再選考する自治体が県内に11市町村あり、選定指標となる「基準点数」の合計が新規申込者より低くなるなどして退所を迫られた園児が本年度、5市町で計59人いたことが沖縄タイムスの調べで分かった。保育の必要度の高い人を優先するための措置だが、厚生労働省の担当者は「安定的な保育環境を提供する観点から望ましいとはいえない」との見解を示している。

「在園児選考」をしていると回答したのは、石垣市、うるま市、今帰仁村、金武町、読谷村、嘉手納町、北谷町、中城村、西原町、南風原町、八重瀬町。

「子ども・子育て支援法」は保育認定の有効期間を原則3年と定めており、厚労省保育課は「市町村の権限で保育の必要性の高い人を優先させることは違法ではないが、1年ごとに再選考するのはやり過ぎだと感じる」と指摘する。

宮古島市は待機児童が増加傾向にあるとして、「来年度分から在園児選考を検討している」と回答。豊見城市は昨年まで在園児選考し、本年度10人が退所したが「児童の生活環境が途中で変わるのは良くない」との判断で在園児優先方針に変えた。

継続できなかった園児が23人と最多の八重瀬町は「年齢が上がると入所枠が減る園もあり、必ずしも全員が継続できるわけではない」とした。

在園児に関する考え方は市町村でばらつきがある。

再選考している市町村では、基準点数の在園児加算の配点が0~30点と幅広い。加点が低い自治体ほど、家庭状況や所得などで点数の高い申込者がいた場合、相対的に優先順位が下がり退所せざるを得ない在園児が出る可能性が高くなる。

一方、那覇市や浦添市、北中城村などは、親の就労状況に変更がなければ、在園児は継続の方針で人数を確定させ、空いた枠内で新規を選定している。

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/171169

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/171197

「在園児選考」とは、前年から在園している児童と新たに申し込んだ児童を同じ基準で利用調整する仕組みです。

在園児には何らかの加点が加えられるのが専らです。が、新規入所希望者より点数が低い在園者の中には年度末で退所を迫られてしまう児童もいるそうです。

在園児選考が行われているのは主に町村だそうです。選考の結果、八重瀬町・南風原町・豊見城市といった島尻地区、嘉手納町や金武町といった米軍施設がある自治体等で継続在園できなかった多くの児童が生じています。

保育所を利用している保護者の視点からは、こうした制度は非常に当惑してしまいます。毎年選考が行われるという事は、いつ退所を迫られてもおかしくありません。この保育所にずっと在園できるか、落ち着かない毎日が続きます。

中には入所後に転職等をし、就労時間が大幅に減る保護者もいます。お世話になっている保育所でも、入所後に育児と仕事の両立に困難を覚え、少し負荷が軽い職場へ移った方がいます。

しかし、在園児選考が行われるのであれば、点数が下がってしまう様な転職には大きなブレーキが掛かってしまうでしょう。

一方、入所を希望している保護者の視点からは「我が家の方が保育の必要性や点数が高いのに、どうして在園児が優先されるのか」という思いもあるでしょう。

「保育園へ16時頃に迎えに来ている家庭が多いのに、どうして18時過ぎまで働いている我が家の子供が入所できないのか、おかしい。」と感じるのは当然です。

掲載されている自治体の募集要項を見ていると、「年齢毎の定員数が均衡していない」のが気になりました。例えば八重瀬町のとある保育所の定員は下記の通りとなっています。

年齢定員
0歳児15名
1歳児18名
2歳児18名
3歳児18名
4歳児16名
5歳児15名
合計100名

0歳児は15名が新規入所できます。しかし、在園児選考が無い限り、1歳児は3名の入所枠しかありません。

また、4歳児・5歳児は3歳児クラスより定員数が減少しています。全員が継続在園を希望しても、誰かが弾き出されてしまう可能性が高いでしょう(幼稚園へ進学する4-5歳児が多い為、実際には大丈夫だそうですが)。

在園児と新規入所希望者のバランスを図るという考えであったとしても、元はといえばこうした定員設定に大きな問題があります。

年齢毎の定員・募集数の不均衡は、大阪市でも生じています。0歳児クラスはフルタイム共働きなら入所できるのに、1歳児クラスは何らかの加点がない限り入所できそうもない保育所が少なくありません。

根本的な原因は「保育所不足」です。十分な保育所が整備されていれば、在園児選考を行う必要はなくなります。

保育所を利用している保護者・児童にとって、在園児選考は非常に落ち着かない制度です。大阪市で導入されていなくて良かった、とほっとするぐらいです。