大阪から少し離れた沖縄県での話です。

しかし、対岸の火事ではありません。保育施設の急な閉園は今後も続出する恐れがあります。

沖縄・浦添市の認可外保育園が来月末に閉園…園児94人の預け先検討へ 資金のめどなく認可化できず
2019年6月21日 06:30

 浦添市伊祖の認可外保育施設・美咲保育園(銘苅秀人代表理事)は20日までに、7月末で閉園することを決めた。新たな園舎建設を計画して認可園化する準備をしていたが、必要な資金のめどが立たなかった。現在は94人(うち市内77人)が在園しているが市と園は協力して次の預け先を確保する予定だ。保護者には19日に文書で通知し、21日に同園で説明会を開く。学童クラブは継続する方針。

 園は1988年に設立された。職員は保育士4人、保育従事者14人など約25人。園によると20年近く赤字が続いているという。融資や個人資金で穴埋めしてきたが補えなくなり、閉鎖回避のため2018年4月、周囲の認可外施設を集約し、認可園化を目指して浦添市に相談した。しかし市と園の調整が進まないまま、経営状態が悪化した同年11月、12月末での閉鎖を市に伝えた。園舎新築や仮設プレハブ園舎などの計画を立てていたが、建設ラッシュで建築確認申請が半年以上かかると指摘され、その間の資金繰りができないと判断したという。

 一方、市こども政策課は資金面の課題や園が計画する定員数と完成後の需要が見合わないことなどを指摘してきたと主張する。園側が今年6月初めにプレハブを建設せず、周囲の施設に園児を分散させる計画を示したことに市は「分散すると、新施設の開園後に園児や保育士が集まらないのでは」と認可化への懸念を伝えた。園側は計画遅延で「これ以上の赤字を補填(ほてん)できず、信頼が落ちて継続できない」と閉園を決めた。こども政策課の知花優子課長は「市は安定経営を心配して、当初から指摘してきた」と話すが、園側は昨年4月の相談時から同11月まで連絡が少なかったとしている。

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-940329.html

美咲保育園は沖縄県浦添市伊祖4-4-9にあります。

沖縄本島の中心部を南北に連なる国道330号線や浦添市陸上競技場等に近く、周囲には住宅街が広がっています。

下のストリートビューを見て、「認可外保育所とは思えない規模だ」と驚かれる方も少なくないでしょう。

半数近くが認可外保育施設

実は沖縄県は認可外保育施設が非常に多い地域です。2014年までは、認可保育所より多い認可外保育施設が設置されていました。

沖縄県内の認可保育園、初の過半数超え 新制度で対象増加
2016年9月3日 10:26

 沖縄県内の全保育施設に占める認可保育園の割合が2015年度に50・3%となり、初めて認可外保育園を上回っていたことが2日、分かった。認可保育園に入れない「待機児童」を減らすため、県が一括交付金事業などで進める認可化の取り組みに加え、同年度からスタートした政府の子ども・子育て支援新制度で事業所内保育所や児童19人以下の小規模保育所などが新たに認可の対象に加わったことが割合逆転の主な要因だ。(以下省略)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/60451

沖縄戦・米軍統治・本土復帰等、様々な理由が指摘されています。

その中で説得力がある理由を見つけました。「延長保育の不実施や保育料の高さ等、認可保育所は保護者ニーズに合致していなかった」とするものです。

沖縄での保育園選びから引用します。

〇認可外保育園の方が保育料が安い
〇認可保育園は5時半までなので預けられない

当時は無認可保育園に対して「定員」を定める法はなかったので、いくらでも子どもを入れることができました。結果、認可保育園よりも子どもを多く受け入れることで、保育料を下げるということができたのです。

また認可保育園はほとんどが延長保育を行わず、保護者も預けようにも時間が合わずに預けられないという状況が生まれています。7時ぐらいまで子どもを預けなければいけない親が認可外保育園を選ぶのは自然な流れです。

何故、認可保育園は延長保育に踏み切らなかったのでしょうか? 昭和58年から8年経った平成3年の時点で14園の認可保育園しか延長保育を行っていません。

認可保育園自体、延長保育には反対の立場だったようです。

というのも、昭和57年の沖縄県児童福祉審議会において「保護者の都合で、子どもを8時間以上保育するのは、長時間の母子分離によって子どもの発達に悪影響を及ぼす恐れがある」と報告しています。

そのために夜7時ごろまで保育を行う認可外保育園に対して、「親の都合に合わせて、子どものことを考えていない」という認可保育園からの批判があったと言われています。

https://ameblo.jp/okinawahoikuenerabi/entry-11596876629.html

しかし、近年は延長保育を実施する認可保育所も増えてきました。

一定の安全基準をクリアしている認可保育所を希望する保護者が徐々に増え、認可外保育施設の経営が苦しさを増していったと想像できます。

認可化の不調

そうした中、美咲保育園は打開策として「認可化」を目指してきました。

認可保育所を設置する場合、何度も行政と打ち合わせを行い、財務状況や保育ニーズ等を確認するのが一般的です。最終的に認可が下り、認可保育所としての運営が始まります。

同園も浦添市と何度も協議を進めていたと伝えられています。

しかし、両者の間に行き違いがあったのでしょう。協議は決裂し、同園は6月20日までに「7月末で閉園する」と発表しました。

年度途中での急な閉園に対して、怒りが収まらないのは保護者です。同園と浦添市に対し、激しい矛先が向いています。

浦添市伊祖の認可外保育施設「美咲保育園」(銘苅秀人代表理事)が7月末の閉園を決めた問題で、同園は21日夜、同園体育館で保護者説明会を開き、閉園を決断した経緯を説明し、謝罪した。市の担当者も同席し、園児の受け皿確保に全力を挙げる方針を説明した。

保護者ら約100人は「一番の被害者は子どもたちだ。来年3月まででも続けられないのか」「納得できない」など園、市双方への怒りや不安の声が相次ぎ、会は4時間近くに及んだ。

 同園には0~5歳の94人(市内77人)が通う。園側は保護者からの要望を受け、来年3月までの継続を模索する方針を示した。

 園側の説明によると、昨年春から認可化に向けて市と協議する中、資金難などに直面。連絡が長期間途絶えるなど「市への不信」を理由に閉園を決断した、と述べた。

 市側は「この間、多くを認可園化してきた。(美咲保育園にも)同じように対応している」と強調し、市内保育施設の空き状況を紹介。待機児童の存在を理由に「特別扱い」はできないとする市に対し、保護者からは「市民を守るのが役所の仕事だ。希望する園に入れるよう対応をお願いしたい」との声が上がり、拍手が続いた。

 会場では市、園双方に時折、怒声が飛んだ。そんな中、「誰が悪いとか聞きたくない。いさかいをやめて、一人残らず(他の保育施設に)入れるよう尽力してほしい」と涙ながらに訴える保護者もいた。

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-941583.html

焦点は「閉園するに至った本当に理由」でしょう。

同園は「浦添市への不信」「園舎新築等に伴う資金繰りの悪化」を主張しています。が、俄には信じがたいです。行政への不信と閉園は関係なく、まだ園舎新築工事は始まっていません。

もしも閉園する理由が「20年近くの赤字が積み重なり、金融機関からの資金供給が止まり、資金繰りのメドが立たなくなった」であれば、理解できます。

閉園発表に対し、浦添市は「(園児を)特別扱いできない」と冷淡な態度を取っています。

閉園するのが認可保育所であれば、利用調整等を行った自治体が他園への優先的な入所を斡旋するのが一般的です。

高等森友保育園が休園した大阪市では、最優先で転所できる措置を行いました。

高等森友学園在籍児童への優先転所措置が公表

しかし、浦添市で閉園するのは「認可外保育施設」です。同市には85人の待機児童(4月現在)が存在し、それを上回る保留児童がいるでしょう。

これらを差し置いて、同園の園児を特別扱いするのは困難でしょう。

無償化で閉園する認可外が急増?

今年10月から「幼児教育・保育の無償化」が始まります。

【ニュース・速報】幼児教育・保育無償化法が成立、10月開始

これにより、閉園する認可外保育施設が続出する可能性が極めて高いと推測しています。少し心肺です。