以前に『「認可外保育施設を公的保険の対象に」と願う署名活動が展開中です』という記事を掲載しました。
署名活動が実を結ぼうとしています。厚労省が認可保育所等と同じ災害共済給付制度の適用を検討しています。
認可外保育所にも公的補償
厚労省検討、けが・事故に見舞金厚生労働省は国の認可基準を満たさない認可外保育所に通う子どもを公的な損害保険制度の対象に加える検討に入った。子どもがけがや事故に遭った場合、認可保育所と同様に医療費や見舞金を受け取れるようにする。安心して子どもを預けられるようにすると同時に事業者の保険料負担や訴訟リスクを軽減、企業の参入も促し待機児童問題の改善につなげる。必要な法改正を経て、2017年度中にも実施する。
認可外保育所は広さや保育士の数、給食設備など国の定める保育所の認可基準を満たしていなかったり、都道府県による認可を受けていなかったりする保育施設。待機児童問題が深刻な都市部を中心に、預けられている子どもは15年3月時点で約28万人(事業所内保育所を含む)にのぼる。
内閣府によると、15年に起きた保育施設での死亡事故14件のうち10件が認可外保育所だった。認可外の事業者は補償に民間の損害保険を利用するケースが多い。民間の保険では事業者の過失が認められなければ補償はなく、訴訟などで救済が長引くとの指摘があった。
厚労省が認可外保育所への適用拡大を検討するのは、日本スポーツ振興センターが管理する災害共済給付制度だ。学校や幼稚園、認可保育所やミニ保育所向けの公的な損害保険で、子どもがケガをしたり亡くなったりする事故が起きたとき、保育者や施設の過失の有無にかかわらず医療費や見舞金を受け取れる。
保育中の事故で子どもを亡くした遺族や支援団体、弁護士らも「災害共済給付の加入対象をすべての保育施設や事業等に拡充を」(赤ちゃんの急死を考える会)と国に対して要望していた。
保険料は施設の種別と給付件数を考えて決めている。例えば認可保育所では子ども1人あたりの保険料は年間350円。このうちの6~9割を保護者が払い、残りは施設を運営している団体が負担している。
認可外保育所への保険の適用拡大に当たり、厚労省は今後、保育士数などに一定の基準を設けて対象をある程度絞る方向だ。認可外保育所は認可より事故の発生割合が高いといわれていることも考慮し、利用者が払う掛け金を高く設定することも検討する。
内閣府は昨年4月から一定の基準をみたせば認可並みの補助金が受け取れる「企業主導型保育所」の制度を始めた。17年度末までに5万人分の保育受け皿を確保する方針だ。企業主導型は認可外保育施設に分類され、安全性の問題を指摘する声もあったため、厚労省は公的な保険の適用対象に追加したい考えだ。
保険の対象拡大には独立行政法人日本スポーツ振興センター法など関連法の改正が必要だ。厚労省は文部科学省などと調整し、早ければ通常国会にも改正法案を出す。
日本スポーツ振興センターが管理している災害共済給付制度は、保育施設・保育者等の過失の有無にかかわらず、見舞金等が受給されます。
我が家でも受給した事があります。保育所内でケガをして何度か通院し、掛かった医療費(健保組合等の負担部分も含む)に対して概ね4割が見舞金等として支給されました。
記事によると、厚労省は「企業主導型保育所」への適用を検討している様子です。企業が保育所等を運営するにあたり、公的保険が適用されない点が高いハードルとなっているのではないでしょうか。
気掛かりなのは、拡大対象がどこまで広げられるかという点です。上記記事からは企業主導型はほぼ全面的に適用し、それ以外の認可外保育は一定の基準を満たした施設に限って適用する方向という趣旨が読み取れます。
少なくとも、児童福祉施設設備運営基準で定められた保育士配置基準(乳児3人つき保育従事者1人、1-2歳児6人につき同1人、3歳児20人につき同1人、4歳以上児30人につき同1人)を満たす施設が基準となるのではないでしょうか。
一方、こうした基準を満たしている施設は一定以上の保育従事者を配置しています。相対的に事故が多く発生しているのは、こうした基準を満たしておらず、指導・監督等を受けている施設ではないでしょうか。
適用対象を絞り込む事により、公的保険で救済されるべき児童がこぼれ落ちてしまう可能性があります。幅広い施設を適用対象とした上で、基準を満たしていない施設は事後的に一部負担を求める、という考え方もあるでしょう。
公的保険の目的は事業者のリスク低減では無く、あくまで利用者・国民の保護にあるでしょう。企業主導型保育所の参入を促し、劣悪な認可外保育施設を適用対象から排除する目的であれば本末転倒です。
記事を読む限り、細部は未だ詰め切れていない、もしくは読者等の反応を窺っている印象を受けました。今後、更なる検討が進められるのでは無いでしょうか。