新年のといえば初詣です。とある寺がベビーカーの利用自粛をお願いし、物議を醸しています。
経緯はj-castニュースの記事に詳しく掲載されています。
発端となったのは東京板橋区の乗蓮寺が「ベビーカーご利用自粛のお願い」の看板を出した、とツイートされたこと。乗蓮寺は2年前まではベビーカー優先の寺だった。看板を出したことであらぬ方向まで話題が沸騰していることに住職は頭を抱えている。
(中略)
看板を出した乗蓮寺は、徳川家康から10石の朱印地を寄進された寺で、高さ13メートル、重さが32トンの「東京大仏」がある人気スポット。新東京百景にも選ばれている。どうしてベビーカー自粛を呼びかけたのかといえば、実はベビーカー優先にしていたことが発端、という皮肉な結果になっていたようだ。J-CASTニュースが1月5日、寺に話を聞いてみた。寺の住職によれば、2年前まではベビーカー、車椅子での参拝を優先させていて、専用通路を作り、係員を配置し安全に努めるという布陣を取っていた。ところが思わぬトラブルが起こる。ベビーカー1台にファミリーが5人、10人と付いてきて専用通路を通り参拝し始めたのだ。混んでいる時にはお参りするまで1時間待たなければならないため、それを見た参拝客が腹を立て「なんだあいつらは!!」と寺の担当者と小競り合いになった。
また、ベビーカーがあれば優遇される寺ということが知れ渡り、小学5年生くらいの子供をベビーカーに乗せて現れる親が相次ぐことになった。親は優先通路に入るとベビーカーをたたみ、降りた子供は敷地内を駆け回った。そこで寺は優先通路を通れるのは押している1人だけ、という制限を設けた。ところが、ファミリーは2手に分かれて参拝することになり、先に参拝を終えたベビーカー組の中には境内近くで合流のため待機する、ということが起こった。
そしてとうとう一昨年(2015年)、お年寄りがベビーカーに躓き、ベビーカーに抱き着く形で倒れてしまった。幸い軽傷で済んだのだがけが人を出したことには変わりがなく、「警察からの要請」もあり、昨年から「ベビーカーご利用自粛」の看板を出すことになった、という。取材に対し住職は、自分も孫をベビーカーに乗せて散歩に行くのが楽しみなため、自粛の看板を出すのはとても残念だった、としたうえで、ネット上で今回の件が「差別」や「少子化」問題になるのは想像もつかなかったし、それが寺に対する批判にも繋がっているとし頭を抱えていた。
上記記事にある通り、乗蓮寺が自粛をお願いしたのはベビーカー優遇措置を悪用する参拝客が相次いだ・ベビーカーを巻き込む転倒事故があった・警察からの要請があったのが理由です。
「混雑時のベビーカーでの初詣」に否定的です
初詣に行く行かないは個人の価値観や内心の問題です。他人がとやかく言うべきでは無いでしょう。しかし、「混雑している時にベビーカーを押して参拝する」のは別の話です。
ベビーカーを利用して子育てを行う当事者として、「混雑している初詣でのベビーカーの利用自粛は当然」だと考えています。理由は単純明快です。
○人混みは危険
最大の理由です。初詣はただの混雑ではありません。特に多くの参拝客が訪れる寺社では、身動きが取れないほどの混雑となるでしょう。
混雑に巻き込まれたベビーカーは身動きが取れません。特に危ないのは、周囲からベビーカーの存在が認知されない点です。夜間なら尚更でしょう。
混雑時には目線が上を向くので、目線の下にあるベビーカーは気づきにくいです。私自身、気づかずに他人のベビーカーを蹴ってしまった経験があります。
ただ、少しずつでも前方へ向かってゆっくり前進している状況なら救いがあります。止まる・進むを繰り返し、時には横から圧力が掛かる様な混み具合は極めて危険です。
実は以前にこうした経験をした事があります。関西有数の、とある祭です。さほど混んでいない筈だからベビーカーで進んでも大丈夫だと油断したところ、全く身動きが取れないほどの混雑に巻き込まれてしまいました。
戻ろうにも戻れず、進むしかありません。前が動かなくても、後ろからは続々と人がやってきて圧力を掛けてきます。時には横から人がのし掛かってきました。
ベビーカーが横倒しになったら子どもの命はないでしょう。ベビーカーの存在を叫んでも、周囲の喧噪で聞こえません。混雑した箇所を抜けるまで、身体を呈してベビーカーを守りました。
流石に反省しました。以後、その祭に出かける際は中心部を避け、人通りが少ない時間帯・場所を慎重に選ぶ様になりました。
○階段や砂利は大敵
寺社の構造その物もベビーカーに優しくありません。代表的なのは「階段」です。
当然ながらベビーカーは階段を越えられません。一時的に畳むか、数人で持ち上げるしかないでしょう。いずれにしても子供を降ろしで抱っこしなければなりません。大きなスペースを必要とします。
また、砂利道も大敵です。誰も乗っていないベビーカーであれば進みますが、子供や荷物が載っているベビーカーは砂利道に食い込みます。思う様に進みません。無理に押すと車輪が破損する危険性もあります。
それ以外にも神社にはちょっとした段差が数多く存在します。気づかずに引っかかると、ベビーカーが倒れてしまうリスクがあるでしょう。
○オムツ替えスペースが無い
ベビーカーを利用する乳幼児は、大半がオムツが外れていないでしょう。定期的にオムツを替える必要があります。おしっこならまだしも、ウンチをしたら即座に替えなければなりません。放置しても周囲はすぐに気づきます。
しかしながら、大半の寺社にはオムツを替えられるスペースは無いでしょう。仮にあったとしても、混雑している初詣シーズンにたどり着いて利用するのは容易ではありません。
○寒い
初詣シーズンは正月です。例年と比べて今年の正月はやや暖かった気がしますが、普段はより冷え込んでいます。特に夜間は尚更です。こうした時期にベビーカーで外出すると、子供に負担を掛けてしまいます。
○病気
寒い中、人混みに晒された時に危惧されるのは、病気に罹ってしまう事です。インフルエンザ等が猛威を振るっています。
また、年末年始は殆どの病院・診療所が休診しています。頼れるのは休日診療所のみです。この時期は5時間待ちも当たり前だと聞いています。親・子供、共に疲れ果ててしまうでしょう。
では、初詣に行きたい子育て世帯はどうすればよいのでしょうか。祖父母等に一時的に観てもらうのが簡単ですが、できない世帯もあるでしょう。抱っこ紐を使う方法もありますが、オムツ替え・寒さ・病気等のリスクから避けられません。