テレビニュースを見て「えっ」と声を上げてしまいました。

2017年1年間に生まれた赤ちゃんは、94万1,000人と過去最少となり、2016年に続き、2年連続で100万人を下回る見通し。
厚生労働省によると、2017年1年間に生まれた赤ちゃんの数は、過去最少だった2016年を、およそ3万6,000人下回り、94万1,000人と推計されるという。
減少傾向にある出生数は、2016年に続き、2年連続で100万人を割った。
また、死亡数から出生数を引いた人口の自然減は、11年連続となり、過去最大の40万3,000人と、1899年の統計開始以来、初めて40万人を超える見通しで、日本の人口減少の加速化が、あらためて浮き彫りとなった。

http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00380136.html

元資料は平成29年(2017)人口動態統計の年間推計です。

出生数は昭和23年(第1次ベビーブーム)に2,681,624人、 昭和48年(第2次ベビーブーム)に2,091,983人でした。それから43年、第3次ベビーブームは到来せず、出生数は94万1,000人まで落ち込みました。

第3次ベビーブームがやって来なかった理由は明白です。この世代(若干後の世代も含む)は就職氷河期が直撃したからです。今になっても思うような収入が得られず、結婚・出産する機会を完全に逃してしまった人間が非常に多くなっています。

第2次ベビーブーム世代が高齢者となる20年後には、社会保障等の分野で非常に大きな問題となるのは間違いないでしょう。

25-39歳女性人口が1年で約26万人減少

それはさておき、ここでは出生数が94万1,000人まで落ち込んだ理由を少し探ってみます。仮説の一つは「出産適齢期人口の減少」です。

厚労省は「出産適齢期である25歳から39歳の女性の人口の減少が大きな要因の1つ」と分析しています。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3246671.html

2016年の調査(母の年齢別にみた年次別出生数・百分率及び出生率)によると、出産する女性の約85%が25歳~39歳でした。内訳は25-29歳が25.7%、30-34歳が36.3%、35-39歳が22.9%です。徐々に29歳未満での出産が減り、代わりに35歳以上の出産が増加しています。

では、この1年では25-39歳の女性人口はどれだけ減ったのでしょうか。約1年前、平成28年10月1日時点での年齢別人口から算出します。

昨年10月時点では、25歳~39歳の女性人口は約1035万4000人でした。一方、今年10月に25歳~39歳である女性人口(昨年の24~38歳人口)は、1009万5000人となりました。出産適齢期である女性人口が、1年間で25万9000人も減少しています。

理由は40歳と25歳の女性人口の違いです。今年10月に40歳である女性人口は83.2万人です。反面、25歳は57.3万人しかいません。第2次ベビーブームとその後の世代では、人口が2/3も違っているのです。

出産適齢期の女性人口は今後も減り続けます。今後10年間は、年間10万人以上は減少する見通しです。これに比例する形で出生数も減り続けるでしょう。

第2子・第3子出生割合はやや上昇?

次の仮説は「第2子以降の出産が減少」です。都内の病院が指摘しています。

病院からの声「第2子以降の出産が減少」
東京 板橋区の総合病院では、年間1000人余りの出産を受け入れています。受け入れ数に大きな変化はありませんが、第2子、第3子を産む人が少なくなっているといいます。

今月16日に2人目の子どもを出産した36歳の女性は「公園で遊ぶ子どもの声がうるさいと言われることもあるので、子育てしやすい環境になってほしい」と話していました。

板橋中央総合病院の石田友彦副院長は「出産する女性の年齢が高くなっているうえ、2人以上産む人が少なくなっている。われわれ産婦人科医もできるかぎり努力しているが、保育所の整備など社会全体で子どもの産みやすい環境を整えていくべきだ」と話しています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171222/k10011268111000.html

第1子・第2子・第3子以降別の出生数が掲載されている人口動態統計月報は、平成29年7月分まで公表されています。そこで、平成29年1月~7月分と、平成28年の確定分を比較してみます。

平成29年1月~7月、及び平成28年の出生順位別内訳は下記の通りでした。

平成29年1-7月平成28年
第1子46.5%47.1%
第2子36.8%36.4%
第3子以降16.7%16.5%

平成28年と比べ、平成29年1-7月は第2子・第3子の出生割合が僅かながら増加しています。年間を通じた集計数値が待たれます。

見捨てられた就職氷河期世代、現代版「棄民」か

出生数は時代背景に大きく左右されます。第1次ベビーブームは終戦による世情の落ち着きや復員、第2次ベビーブームは第1次ベビーブーム世代が出産適齢期を迎えたのが大きな理由でした。

しかし、先に触れたとおり、第2次ベビーブーム世代は就職氷河期が直撃し、結婚・出産どころではない状況となってしまいました。「失政」意外の何物でもありません。

今後は出産適齢期人口が逓減し、出生数が減少していくのは間違いありません。とは言え、子供を産み育てていきたい世帯、そうした可能性を有している若い世代には、政府がしっかり下支えしていくべきではないでしょうか。

平成30年度予算編成を注意深く観察していたのですが、第2次ベビーブーム・就職氷河期世代に対する手当を謳った施策は見つけられませんでした。

この世代で非正規雇用等で苦しんでいる者は、政府から見放されたと感じました。現代版「棄民」とも言えそうです。