早いもので来週から4月です。1日に入園式を行う保育園も数多いでしょう。一方で4月以降も保育園等の空きを待っている方もおられるでしょう。悲喜こもごもの4月です。
久しぶりに平成28年度保育所等一斉入所申込状況を簡単に分析してみます。第23回は「大阪市内の入所保留児童数」を推計します。
盛り上がっている「待機児童」の影に、待機児童から除外されている児童の問題があります。いわゆる「入所保留児童」です。育児休業中・休職中・認可外保育施設を利用している等の理由により、行政が定義する「待機児童」から漏れてしまっているのです。保護者としての感覚では、入所を申し込んだけど入れなかった児童がどれだけいるかが気になります。
では、大阪市内ではどれだけいるのでしょうか。各区毎の申込数から募集数を引く形で独自に推計しました。平成27年10月28日に発表された中間集計に、その後に入所募集が行われた3保育所・多くの地域型保育事業の推測募集数を加えています。
大阪市の保留児童は2,000人以上か
大阪市内における推計入所保留児童数は2,638人となりました。入所申込者の内、20%弱に相当します。豊中市と吹田市を合わせた人数より多い児童が、H28一斉入所で漏れてしまった計算となります。ここから年度途中入所や転居等による申込取り下げが発生するので、実際には2,000人強まで減少するでしょう。
年齢別に見ると1歳児が飛び抜けて多い1,524人となっています。全体の半数以上を占めています。待機児童・入所保留児童問題の根幹は「1歳児入所」です。
次に2歳児の656人、3歳児の379人と続きます。地域型保育事業の増加により、今後は3歳児の入所保留が増加する懸念が見込まれています。市内中心部では2歳児まで地域型保育事業で過ごし、3歳児からは認可外保育施設で過ごすというケースが発生していると聞きました。
一方、0歳児の入所保留は殆ど発生していません。一斉入所へ申し込める0歳児は原則として平成27年4月~9月生まれと限られている為です。平成28年4月以降、徐々に入所申込・保留数が増加していきます。
保留数が最も多かったのは西区の277人
市内で最も多かったのは西区の277人でした。何と西区は1-3歳児の入所保留数が全て市内最多という状態に陥っています。1歳児149人、2歳児71人、3歳児57人でした。これは新町第2保育園・2カ所の新設地域型保育事業の募集数を織り込んだ後の数字です。それより前は400人に近い数字となっていました。
西区はもともと保育所や幼稚園が少なかった所です。事業所や工場跡地に大規模マンションが次々に建設され、人口(特に子育て世帯)が急増したにも関わらず、保育所等の建設が全く追いついていないのが原因です。都市計画の失敗ではないでしょうか。
西区の入所保留率は38.4%となる見通しです。10人の内、4人弱は入所できなかった形です。特に1-3歳は高く、50%を大きく超えています。入所できたのは2人に1人もいませんでした。西区東部に限ると、より厳しい数字になります。
中央区は市内2位の247人・保留率39.6%
西区のお隣、中央区も酷似した状況です。1歳児131人・2歳児67人・3歳児39人という多さです。特に上町台地にある保育所で入所保留児童が大量に発生しています。
原因も西区と一緒です。西区ほどではありませんが、大型マンションが乱立しています。10人に4人は入所できていません。1-2歳児で入所できたのは2人に1人もいませんでした。
ただ、西区や中央区は認可外保育施設が多いのが救いです。自宅の近くで安心できる認可外保育施設へ入所し、保育所等の空きを待つという選択肢が取りやすいです。認可外保育施設が少ない郊外等で入所保留となってしまうと、取り得る選択肢が限定されてしまいます。
保留率1位は天王寺区の40.4%
保留率が最も高かったのは、天王寺区の40.4%でした。保留数も214人という多さです。天王寺区ではげんき上本町園・ポピンズナーサリースクール天王寺が新設されたのですが、未だに極めて高い数字のままです。西区や中央区と比べて保育所が新設される度合いが小さく感じられました。
天王寺区は特に2歳児の保留率が高くなっています。入所できたのは10人に4人程度です。1歳児で入所保留となってしまった場合、2歳児でも同じ様に保留となってしまう可能性があります。
西区・中央区以上に土地がないのが天王寺区、という印象があります。他区以上に保育所を設置する場所に苦労しています。病院・寺社仏閣・学校・大規模マンション内の敷地を何とか活用できないものでしょうか。
西区・中央区・天王寺区は突出
大阪市内で特に入所しにくいのは西区・中央区・天王寺区の3区です。他区と比べて突出しています。この傾向は変わっておらず、今後も変わらないでしょう。
この3区で保育所への入所を検討するには、相当の覚悟が必要です。少なくともフルタイム共働きでの200点、1-2歳児入所では加点がないと絶望的です。福祉施設的な色彩は弱まっているのではないでしょうか。
次に難しいのは北区・都島区・阿倍野区
3区に続いて保留率が高いのは、北区・都島区・阿倍野区です。保留率は28-30%と高く、保留数はいずれも150人を超えています。保留率が特に高いのは1歳児で、半数近くが入所出来ていません。北区・都島区は2歳児も高く、阿倍野区は3歳児が高くなっています。
阿倍野区の3歳児保留率が高いのは、募集数が18人と市内で最も少ないのが原因です。同区は幼稚園が豊富にあります。事実上、3歳児は幼稚園への入園を促している形となっています。
北区や都島区は毎年の様に数多くの保育所を新設しており、ようやく保留率は頭打ちになってきました。しかし、特に北区では未だにタワーマンションの建設が続いています。特に北区東部(天満地域)では注意が必要です。
阿倍野区は保留率が高いにも関わらず保育所が殆ど新設されていない、希有な地域です。幼稚園から認定こども園への移行により、0-2歳児の保育需要をまかなう計画なのでしょう。
意外に入所しにくい西淀川区・旭区・鶴見区・住吉区
保留率が20%を超えているのは西淀川区・旭区・鶴見区・住吉区です。都心からやや離れており、保育所に入所しやすいイメージがありました。しかし、実はそうではなかったです。
他区と同様、これら4区も1-2歳児の保留率が高い傾向にあります。3割弱の1歳児が入所出来ていません。
都心から離れた地域は入所者の平均点数がやや低い傾向があります。フルタイム共働きであれば概ね入所出来る一方、パートタイム勤務だと厳しい結果となる可能性があります。
入所保留ほぼゼロは大正区・生野区・平野区・西成区
入所保留児童がゼロ、ないし殆どいないのは大正区・生野区・平野区・西成区です。保育所が新設されたのではありません。子供が多い時代に数多くの保育所(特に公立保育所)が建てられた地域ですが、子育て世帯・子供が急減して保育所が余っているのが原因です。
4区の保育所では募集数が申込数を800人も上回っています。これだけの募集数がそのままにされています。勿体ない話です。今後は子育て世帯を支援する福祉施設という役割と同時に、公共施設・補助金交付対象事業所としての適切な管理も求められるでしょう。
余談となりますが、2月・3月の結果発表後には多くの方からメールを頂きました。大変遅くなってしまいましたが、ようやくお返事を差し上げられる状況になりました。今更かもしれませんが、順次お返事をお送りします。