平成29年度保育所等一斉入所申込状況分析、第5回は「入所保留児童」にスポットを当てました。

ここでいう「入所保留児童」とは、「入所(転所を含む)を希望したが、いずれの保育所等にも入所できなかった」児童を指します。入所を希望した理由は考慮していません。最広義の定義と言えるでしょう。

保護者としての感覚では、入所を申し込んだけど入れなかった児童がどれだけいるかが気になります。行政の基準から算出される「待機児童」より、「入所保留児童」の方がより実態に即した数字と言えます。

※11月4日(淀川区訂正分)に発表された数字に基づきます・保育士優先利用数は申込者数に含んでいます

大阪市から発表された平成29年度保育施設利用申込状況に基づき、区別・年齢別・年度別の申込数・募集数一覧表を作成しました。


※保留率50%以上は赤、20%以上は黄で表示しています。

入所保留児童は3,402人・保留率22.4%と見込み

推計では3,402人の入所保留児童がH29一斉入所で発生する見込みです。率にすると22.4%です。昨年よりやや増加する見通しです。

これはあくまで11月上旬での推計値です。保育施設の更なる開設・申込辞退・年度途中入所等により数字は変動します。とはいえ、様々な要素がプラスとマイナスに働くので、最終的な数字は同程度に落ち着くでしょう。

年齢別に見ると、1歳児が飛び抜けて多い1,887人となっています。全体の半数以上を占めています。待機児童・入所保留児童問題の多くは「1歳児入所」です。

次に2歳児の920人、3歳児の414人と続きます。いわゆる「3歳の壁」が懸念されますが、3歳児の入所保留児童は昨年とほぼ同水準と見込まれています。

少し懸念されるのは0歳児です。155人が入所保留となる見込みです。昨年の倍の水準です。阿倍野区・東成区・福島区で急増する見通しです。少なくとも48人が保留となる阿倍野区では、大きく問題化するのではないでしょうか。

保留数が最も多かったのは西区の312人・保留率43%

最も多くの保留児童が発生する見込みなのは、2年連続で西区。H29一斉入所では312人が見込まれています。推定保留率は42.8%です。

主な内訳は1歳児141人、2歳児87人、3歳児64人です。3歳児保留見込みは市内最多であり、早くから小規模保育の設置に取り組んできた副作用が生じてしまっています。

西区は以前から保育所や幼稚園が少なかった所です。ここ数年で事業所・工場跡地等に大規模マンションが次々に建設され、人口(特に子育て世帯)が急増しています。一方、保育所・幼稚園や小中学校の整備が全く追いついていません。

このところ、「西区に転居したのは失敗かもしれない」という話をしばしば聞きます。「子供が多すぎて、逆に子育てしにくい」というのが共通した理由です。

西区では入所希望者の半数近くは入所できない見通しです。1歳児は半数以上、2-3歳児は大半が入所できない見通しです。西区東部に限ると更に厳しい数字です。

市内2位の天王寺区の275人・保留率45%

次いで入所保留児童が多いのは天王寺区です。市内2位の275人、保留率は市内トップの45.0%です。ここも半数近くの児童が入所できない見通しです。

年齢別に見ると1歳児137人・2歳児63人・3歳児38人という多さです。1-2歳児は西区と同規模、幼稚園が多い為か3歳児は若干少なめです。1-3歳児は半数以上が入所できない見通しです。

原因も西区と同一です。西区ほどではありませんが、タワーマンションが乱立しています。タワーマンションを作る土地があれば、一部を保育・教育施設に充てて欲しいものです。また、豊富な寺社仏閣の一角に保育所等を設置できないものでしょうか。

北区は261人・保留率33%

保留数が市内3位と推計されるのは北区です。保留率は32.5%の見通しです。

同区も1-3歳児で多くの保留児童が生じると考えられます。1歳児136人・2歳児88人・3歳児36人です。主に東部地域(特に天満等)で生じるでしょう。認可外保育施設を探しやすいのが救いかもしれません。

同区で心配なのは3歳児です。地域型保育事業の卒園児が多い為か、3歳児申込数が急増しています。保育事業と保育所の設置数・設置地域のバランスが悪く感じられます。特に天満地域の卒園児は同心保育園へ集中しており、どこにも入所できないケースが多発しそうで心配です。

「卒園児と3歳の壁」については、別記事で掘り下げてみる予定です。

阿倍野区は256人・保留率42%

西区・天王寺区並みに入所が難しく、多くの保留児童が発生するのは阿倍野区です。256人が見込まれ、保留率は41.6%と推計されています。

同区は3歳児保留見込みが相対的に少ない一方、0-2歳児で多数発生すると考えられています。0歳児は市内最多の48人・1歳児131人・2歳児53人との見通しです。

3歳児が少ないのは幼稚園が豊富だからでしょう。その裏返しか、阿倍野区は保育所等の整備が他区より遅れている印象です。保育所等への入所を希望する児童の内、半数近くが入所出来ない見通しです。

中央区は230人・39.7%

中央区も厳しい状況です。主な内訳は1歳児108人・2歳児55人・3歳児57人です。1-3歳児は半数以上が入所できないでしょう。

同区の保留児童は主に上町台地周辺で発生すると考えられます。多数のタワーマンションが建設される一方、保育所等が不足する構図は他区と同じです。

入所保留率が低いのは此花区・生野区・東住吉区・平野区・西成区

反対に保留率が低く、保留児童が殆ど生じないと見込まれるのは此花区・生野区・東住吉区・平野区・西成区です。

これらの区では経済成長・地域改善等の目的で多数の保育所が設置されましたが、子育て世帯・子供が急減して保育所が余っています。

特に平野区は推定保留数0人、西成区は11人と見込まれています。両区では公立保育所が徐々に削減されています。数字を見る限り、今後も削減されていくのではないでしょうか。

今後の予定&お願い

今後は淀川区(特に三国・宮原地域)、阿倍野区、都島区、中央区、天王寺区、福島区、東淀川区、西区(堀江敬愛)、此花区(特に高見・伝法東部)、住吉区、港区(特に波除地域)、城東区(中央区に近い地域)、住之江区(特に北加賀屋駅周辺)を掲載する予定です。順番は前後する場合があります。

いわゆる「3歳の壁」に関するメールも多数頂いています。小規模保育が増える一方、卒園後の保育の場が見つかるかと不安に感じる様子が伝わってきます。

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