1.育休中は自宅で保育できる
育児休業中は専ら新生児の育児を行うわけですが、同時に上の子の保育を行える状況にあるでしょう。
就労していない専業主婦と同じ構図です。
「家庭での保育に欠ける」とは一概には言えないでしょう。
2.首都圏における深刻な待機児童問題
大阪市でも中心部での待機児童問題は深刻ですが、首都圏の各自治体ではより深刻な状況がうかがえます。
埼玉の待機児童・保育所定員数は?によると、平成26年4月での所沢市の未就学児童数16,769人に対し、保育所定員は4,930人、定員率は29.4%でした。
保育所や小規模保育施設等の新設による定員は増加していると推測されますが、それでも定員率は30%前後でしょう。
待機児童問題が深刻な首都圏の場合、定員はほぼ充足されていると考えられます。
経験則上、定員率が30%の自治体・地域では保育所へ入所出来ない児童が相当数に上ります。
こうした児童を1人でも保育所で受け入れるにはどうすれば良いのでしょう。
一時的でも家庭での保育が可能となった児童は一時退園して家庭で保育を行い、新たな児童が保育所へ入所するというのも1つの考え方です。
ただ、そもそも論として、保育所等が全く足りていないのが問題の根本です。
そしてその責任は自治体にあります。
3.家庭の保育料負担が軽減される
盲点です。
保育料は今年ないし昨年の住民税額、つまり昨年ないし一昨年の収入・所得から算出されます(詳細はこちら)。
育児休業中は原則として保育短時間をなりますが、保育料は保育標準時間と殆ど違いがありません。
つまり、上の子が乳児クラスに在籍していると言えども、一定の所得が生じていた期間を基準として育児休業中の保育料が算出されています。
給付金が支給されているとはいえ、育児休業中の保育料支出は無視できません。
所沢市保育料徴収基準額表によると、市民税所得割が課税されている世帯の3歳未満児(0-2歳クラス)の保育料は6,300円~60,200円となっています。
仮に毎月の保育料が4万円とした場合、1年間の総額は48万円となります。
育児休業中に一時退園した場合、これだけの保育料支出が減らせます。
無視できない金額です。
これらを踏まえ、所沢市はどうすべきだったのでしょうか。
最も大きな問題は、育児休業取得予定者や児童に対して不利益を与える本措置が十分な周知期間なく唐突に導入された点でしょう。
たとえば十分な議論を経た後に1年後から導入されるのであれば、ここまで激しい動きにはならなかったでしょう。
保護者としても、上の子と下の子は3歳以上離すといった対応が行えます。
仮に導入されたとしても、再入園が確実に保証されていなければ保護者目線では容易に賛同できません。
善し悪しは別として、一度保育所へ入所できれば、保育に欠ける事由等が変化しても卒園までは在園できるのがコンセンサスでした。
保育所入所者による既得権益とも言えるでしょう(入所選考の様に、毎年在籍選考を行って保育に欠ける事由を審査するという考え方もありますが非現実的です)。
であれば、制度導入の際は再入園を100%保証する何らかの措置が必要でしょう。
但し、年度途中の再入園、しかも保育士配置基準が厳しくて待機児童問題が深刻な0-2歳児クラスは容易ではありません。
一方、配置基準が緩くなり、定員数も増加するケースが多い3歳児クラスは少し話が違ってきます。
3歳児クラスへの再入園であれば、100%の保証付も実現可能性が高いのではないでしょうか。
家庭での保育・0-2歳児クラスにおける保育資源の活用・待機児童の解消という観点から、私であれば下記の点が満たされるのであれば納得できます。
・十分な周知期間を経る
・育児休業中であっても3歳児クラスへの再入園は100%保証、0-2歳児クラスは空き定員がある限りは最優先
唐突な制度変更に振り回されるのは子育て中の世帯です。
長年に渡って安心して子育てできる環境・制度が無ければ、子供が減少していくのは当然の流れです。
少子化による弊害が叫ばれていますが、こうした世の中になった責任は子育て中の世帯にありません。
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(6/26追記)
続報です。
【ニュース・続報】育休取得による保育園退園は違法として保護者が所沢市を提訴
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