所沢育休退園問題です。
実際に育休退園に追い込まれた児童が生じてしまい、取消しを求める訴えを提訴しています
「娘の退園は違法」 育休の女性、所沢市の処分巡り提訴
2015年8月31日23時24分保育園に在園する0~2歳児を親の育児休業期間中に原則退園させる埼玉県所沢市の「育休退園」の運用にもとづき、8月末で長女(3)が退園させられたのは違法だとして、同市内の会社員女性(30)が31日、市を相手取り、退園処分の取り消しを求める訴えをさいたま地裁に起こした。処分停止の仮処分申請も申し立てた。
6~7月に14世帯18人(後に3世帯4人が取り下げ)の親が育休退園の運用の撤回を求めて市を提訴したが、原告で退園処分を受けたのはこれが初めて。女性は会見で、「継続の可否が公平に決定されたのか疑問。不可通知で妊娠・出産を応援されていないと感じ、悲しい」と話した。
訴状や原告らによると、女性は長女を今年4月から市内の保育園に通わせており、6月に長男を出産。保育園を通じて市に長女の在園継続を申請したが、8月13日付で継続不可の通知を受け取ったという。女性は運用撤回を求める原告団に加わっているが、実際に長女が退園処分とされたことを受けて、処分の取り消しを求める訴えを別に起こすことにした。
代理人弁護士は「市は2000年の保育園への通知で、育休中は申請すれば原則在園継続としていた。『以前から育休なら退園としていた』という説明は誤り」と指摘した。
所沢市の藤本正人市長は「文章をいただいていないので、何とも申しあげられない」とコメントした。
下の子が産まれた後も上の子は継続して保育所に登園する予定だったのが一転、急に退園に追い込まれたのは大変な出来事です。
但し、本件に特有の事情として、「長女が今年4月に入所、6月に長男を出産」という点が影響した可能性があるかもしれません。
長女の入所申込を昨年10月の時点では、妊娠しているかは定かではなかったでしょう。
しかし、入所選考の結果が発表された今年2月は妊娠しているのがはっきりし、子供の性別も明らかになっている頃です。
長女が入所した4月は、既に外見から妊娠中だと分かる程度にお腹が大きくなっていたでしょう。
産前休業は出産予定日前の6週間です。
予定日通りの出産だと仮定した場合、早ければ4月中旬から、遅くとも5月中旬からは産休期間に入ります。
つまり、就労として入所申込を行ったにも関わらず、入所以降に就労していた期間は短ければ2週間、長くとも1ヶ月半程度だと推測されます。
「妊娠」を事由とした入所の場合、所沢市では産前1ヶ月・産後2ヶ月に限られます。
制度上、入所申込時点や入所時において就労しているのであれば、所沢市を含む殆どの自治体では「就労」として点数評価されるでしょう。
一方、入所直後に母親が産休期間に入る児童にも「就労」を理由とした保育を行うのは、何だかもやもやとした割り切れ無さを感じてしまいます。
待機児童が多くて深刻な問題となっている地域であれば尚更でしょう。
こうした事情が保育の継続を認めなかった背景にあるのではないでしょうか。
本訴訟で原告側代理人を務めているのは、弁護士法人パートナース法律事務所に所属している弁護士です。
関係する記事も掲載しているので、興味がある方はご覧下さい。
2015年6月25日(木)法律コラム第13回「所沢市保育園育休退園問題について」
2015年8月3日(月) 所沢市育休退園問題についての声明