【ニュース】育休取得 0-2歳児は保育園退園 埼玉・所沢市の続報です。

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(7/7追記)
【ニュース】育休退園制度を予定通り導入へ 埼玉県所沢市
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育児休業取得によって保育園からの退園を迫られている保護者が所沢市を相手取り、退園の差止め・本案終結前の仮の差止めを求める訴訟を提訴しました。

“育休取得で上の子の退園は違法”提訴
6月25日 14時23分

埼玉県所沢市が、2歳児までの子どもを保育園に通わせている母親が新たに子どもを出産して育児休業を取得した場合、上の子どもを退園させる制度を設けたのは保育を受ける権利を侵害するもので違法だとして、保護者11人が市に対して退園の差し止めを求める訴えをさいたま地方裁判所に起こしました。
訴えを起こしたのは、所沢市の保育園に子どもを預けている保護者11人です。
所沢市は待機児童の解消に向けた対策として、保育園に子どもを預けている母親が出産し育児休業を取得した際、預けている子どもが0歳児から2歳児の場合には、原則、保育園を退園させ、育児休業中は家庭で育ててもらう制度を今年度新たに設けました。
訴えの中で保護者らは、退園によって生活環境が急激に変化すれば子どもの成長に大きな悪影響を及ぼすうえ、育児休業は単なる休暇ではなく、仕事復帰のための準備期間であり、市の制度は保育を受ける権利を侵害するもので違法だとして、退園の差し止めを求めています。
原告の保護者らは厚生労働省で記者会見し、「今回の制度で助かる人も出るとは思うが、保育園が増えなければ抜本的な待機児童対策にはならない。誰もが保育園を利用できる環境を作るのが先決だ」などと訴えました。
これに対し、所沢市は「訴状の内容を承知していないのでコメントできないが、育児休業中は保護者が家庭で子育てできる環境にあり、少しでも待機児童を減らすためにも制度を設けた」と話しています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150625/k10010127191000.html(以下同じ)

朝日新聞によると5月に子供が生まれて7月末での退園を迫られているケースがあるそうです。
それまでに仮の差止めについて原告側の主張を容認する決定がされるか、「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえる」(行政事件訴訟法第37条の5)に対する判断内容が気になります。

所沢市 育休中の退園措置採用の理由は
所沢市は、これまでも保護者が子どもを家庭で保育することが可能な場合は、保育園を退園させる措置を取っていましたが、親からの要望などを受けて平成12年9月から各保育園の園長の判断に委ねる形で、事実上継続的な保育を認めていました。しかし、去年4月現在、市内の待機児童数は32人と埼玉県内の市町村で10番目に多く、待機児童問題がなかなか解消せず、所沢市は国がことし4月に「子ども・子育て支援新制度」をスタートさせたのを受けて、生まれた子どもや親が病気の場合や、双子以上の子どもを出産した場合などを除いて、保育園に預けている0歳児から2歳児は原則、退園させる制度を設けました。
所沢市は救済措置として、保護者が仕事復帰する際に保育園にきょうだいそろって入園できるよう市と保育園は連携して調整を図り、優先的に再入園できる体制を整えているとしています。さらに、退園している期間中には保育園の一時預かりサービスが利用できる回数を増やすなど、子育て支援の充実を図るとしています。所沢市こども未来部の本田静香部長は「育児休暇中は保護者が各家庭で子育てできる環境にあり、より保育の必要性の高い保護者に保育が提供できるように制度を設けた」と話しています。

埼玉の待機児童・保育所定員数は?によると、平成26年4月での所沢市の未就学児童数16,769人に対し、保育所定員は4,930人、定員率は29.4%でした。
埼玉県南部の自治体(入間市を除く)における定員率は概ね30%を大きく下回っており、終演自治体と比較して所沢市の保育園等の整備状況は決して劣っているものではないでしょう。
待機児童問題を解消するため、より一歩踏み込んだ制度を検討したと言えるでしょう。
新たに保育所へ入所できる児童がいる一方、仮に本制度を導入して一時退園したとしても保育施設が絶対的に不足している現状には変わりなく、焼け石に水と言わざるを得ません。
経験則上、待機児童がほぼ解消するには未就学児に対する保育所等の定員率は少なくとも40%が必要です。

育休で退園 国の方針は
保育所の利用について、国は、ことし4月から始まった子ども・子育て支援新制度で保護者が働いているなど、「保育の必要性」があるかどうかを踏まえて市町村が判断すると定めています。この中では、保護者が育児休業を取得する場合でも、すでに保育所を利用している上の子どもに保育の必要性があれば引き続き利用できるとしています。
具体的には、小学校への入学を控えた5歳児で集団での保育が必要だと認められる場合や、子どもの発達上、環境の変化が好ましくない場合など地域の実情に応じて市町村が判断するとしています。
厚生労働省によりますと、保護者が育児休業を取得した際に、上の子どもの保育所の利用を認めるかどうかは市町村によって異なるということですが、待機児童が多い市町村でも子どもの生活環境が変わるのは好ましくないとして引き続き利用できるところが増えているということです。
このうち、待機児童の数が全国で最も多い東京・世田谷区では、保育所の利用が比較的長い3歳児以上の子どもについては引き続き利用を認め、2歳児以下の子どもについても保護者が仕事に復帰する目安となる1年余りの間は、育児休業を取得していても保育所を利用できるようにしているということです。
一方、厚生労働省は、育児休業の取得を理由に保育所が利用できなくなった場合でも、保護者が育児休業を終え再び働き始めた際には優先的に利用できるよう市町村に求めています。
今回の所沢市の対応について、厚生労働省は「育休明けには優先的に保育所を利用できるようにするなど国の方針の範囲内の対応だと考えている。しかし、子どもの発達上、保育所の退所による環境の変化が望ましくない場合があるので、それぞれの事情に応じて対応してもらいたい」としています。

殆どの自治体では、記事で取り上げられている世田谷区と同じ取り扱いを行っています。
たとえば大阪市では、復職予定証明書・復職証明書の提出を条件として、育児休業中も保育を継続して実施しています。
ただし保育短時間認定となり、保育時間は短くなるそうです。

保護者が育児休業を取得する際、入所児童について保育実施の継続が必要と認められる場合には、原則として出生したお子さんが満1歳の誕生日を迎える年度の3月31日までを限度とし、継続して入所することができます。育児休業の取得前と復帰後に必ずこの証明書をご提出ください。

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000150374.html

うがった見方となりますが、こうした制度の導入や訴訟提起により、所沢市は子育て世帯に優しくない自治体として一躍有名になりました。
次にどんな制度変更が唐突に行われて影響を受けるのが全く予測が出来ず、安定性に欠けます。
今回の裁判の結果がどうあれ、今度は所沢市での居住を敬遠する子育て世帯が生じても何ら不思議ではありません。