育休退園制度 原告2人に通園継続認める 埼玉県所沢市の続報です。
子育て中の保護者が所沢市に対して育休退園の差止めを求めた仮処分申立てに対し、さいたま地裁はこれを退ける決定を行いました。

「育休退園差し止めを」 親の申し立て退ける
7月28日 20時37分

育児休業の取得を理由に保育園に通っている上の子どもを退園させる制度は違法だとして、子育て中の親が埼玉県所沢市に退園の差し止めを求めた仮処分の申し立てについて、さいたま地方裁判所は「市は、保育園の継続が必要と認めた親には継続できる方針を示している」などとして、訴えを退けました。
この問題は、所沢市が今年度から親が育児休業を取得した際、すでに保育園に通っている2歳児以下の上の子を原則として退園させる制度を新たに設けたのに対し、子育て中の17人の親が「保育を受ける権利を侵害し、違法だ」などとして、裁判所に退園の差し止めを求める仮処分を申し立てていたものです。
これについて、さいたま地方裁判所の志田原信三裁判長は「市は、保育園の継続が必要と認めた親には継続させる方針を示しており、これを適正に適用すれば法の趣旨に反する事態は生じない」などとして、28日までに仮処分の申し立てを退けました。
これに対して、訴えた親と弁護士が記者会見し、「継続させる判断基準が不明確なうえ、公平に審査されているかも疑問で、決定は不当と言わざるをえない」などと批判し、仮処分とは別に、退園の差し止めを求めている裁判で改めて争っていく考えを示しました。
一方、所沢市の藤本正人市長は、「市の主張が認められたものと考えます。今後も適正な運用に努めて参ります」とコメントしています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150728/k10010169971000.html

決定文を読んでいませんが、「これ(育休退園制度)を適正に適用すれば法の趣旨に反する事態は生じない」という決定に対し、「適正に適用されているかに重大な疑問が生じている」のが本件だと感じています。

我が家がお世話になっている保育所では育休によって退園を求められたという話は聞いた事がありません。
上の子が2歳児以下で育休を取得しているお母さんも知っている範囲で数人おり、所沢市の様に本制度が唐突に導入されたら当該家庭が大混乱に陥るのは間違いないでしょう。
育休退園制度自体にはメリットもデメリットもあり、一概に賛否を表明できません。
ただ、本件の場合は十分な議論や周知期間を無くして導入されており、その点について重大な誤りがあると考えています。

退園の差止めを求めている裁判で争うとなれば、裁判の長期化も考えられます。
裁判が終結するまでの間に育休退園に追い込まれた子どもが無事?に復園し、裁判から離れる家庭があるかもしれません。

また、育休退園制度の導入を主導した所沢市長の任期は平成27年10月29日で満了を迎えます。
投票日は10月18日と決まっています。

今後の選挙執行予定(任期満了日)
所沢市長選挙 (平成27年10月29日 任期満了)
投票日:10月18日 告示日:10月11日

今後の選挙執行予定(所沢市)

それまでに裁判が決着する可能性は高くないでしょう。
平成28年度保育所等一斉入所申込みにも重なる時期です。
保育所入所問題・子育て支援策が市長選挙での争点となるかもしれません。

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(8/5追記)
決定の詳細が埼玉新聞に掲載されていました。
7月末に育休退園させられる予定だった原告2人の継続保育が認められた点が大きく評価された様子です。

第2子以降を出産した母親が育児休業を取得した場合、保育園に通う0~2歳の上の子を原則退園させる所沢市の「育休退園」の運用は違法だとして、同市の保護者らが退園の仮差し止めを求めた申し立てについて、さいたま地裁(志田原信三裁判長)は28日までに却下する決定をした。

 決定は23日付。原告団が28日、会見で明らかにした。

 決定理由で志田原裁判長は、6月に市が保育園の利用継続について規則を改正し、7月16日に2人の在園継続を認めたことなどに触れ「申立人が(在園継続を申請しても)退園処分を受けるがい然性(可能性)が高いと認めることはできない」と述べた。

 原告側弁護団は地裁の判断について「決定は問題を含み、不当な決定であると言わざるを得ない」と断じた。

 その一方で、弁護団は地裁の決定理由は「市に対する強いメッセージを含んでいる」と強調した。原告の申し入れの後、市は6月、規則を改正。「在園児の家庭における保育環境等を考慮する」などの条件を追加した。決定はこの改正に触れ「市長が適正な適用に努めていくことが求められる」と加えた。

 6月に子どもが退園したという母親(30)は「制度は子どもの保育を受ける権利を侵害している。今回の却下決定は残念。4月に運用が始まった後、市のやり方がころころ変わったり、条件が追加されたりしている。適正な制度運用を求めたい」と話した。

 保護者らはほかに、市の運用差し止めを求める行政訴訟も起こしており、9月16日に第1回口頭弁論が開かれる。

http://www.saitama-np.co.jp/news/2015/07/29/02.html