大阪市全体での新規入所申込数は前年比281人減少し、新規入所児童数も256人減少しました。
入所倍率は前年とほぼ同じ1.27倍となりました。
今回は区毎の入所状況等を大まかに分析していきます。

なお、今年の結果は保育所以外にこども園・地域型保育事業(保育ママ・小規模保育・事業所内保育)も含まれています。
その為、昨年の分析とは数字の連続性に疑わしい点があることを含み置き下さい。

h27kekka1
大阪市の保育所入所待機児童数について(平成27年4月1日現在)より作成

<保留率・在籍率>
市内平均より2割以上高い区をオレンジ色、2割以上低い区を水色で表しています。

<新規入所申込数・倍率>
前年より10%以上上昇した区をオレンジ色、10%以上低下した区を水色で表しています。

<就学前児童数>
前年より3%以上増加した区をオレンジ色、3%以上低下した区を水色で表しています。

【1.入所倍率・保留率】
保護者にとって最も気掛かりなのは「保育所へ入所できるのか」という点でしょう。
希望する保育所等へ入所できたか否かは、待機児童数ではなく保留率・保留児童数が参考になります。
公表されているデータから、区毎の入所倍率・保留率を算出しました。

H27一斉入所で最も入所倍率・保留率が高かったのは、やはり西区でした(西区の詳細は前編(区全体)後編(保育所別)から)。
前年と同じく入所倍率は1.72倍、保留率41.9%でした。
新規入所申込を行った児童の内、5人に2人以上は入所できなかった計算となります。
西区では積極的に保育所等の新設に取り組んでいますが、それを上回るペースで未就学児・保育所等の新規利用申込者が増加しています。
未就学児が前年比5%増、利用申込数が10%以上も増える一方、入所倍率等が前年同値で収まったのが不思議なぐらいです。
西区を中心とする都心部へのファミリー層の回帰現象はまだまだ続くと考えられるので、保育所の新設はまだ必要でしょう。

次に高いのは天王寺区で1.61倍/38.0%、その次は意外なことに住吉区の1.56倍/35.9%でした。
【H27保育所一斉入所申込分析】(15)住吉区でも触れました通り、同区は待機児童問題が極めて深刻な区の一つです。
まだ詳細を分析できていませんが、住吉区は新規利用児童数が前年から135人も減少したのが大きな要因です。
入所保留数は西区とほぼ同じ254人にも上っています。

入所保留率が急激に上昇しているのは、天王寺区・浪速区・東成区・住吉区です。
天王寺区・浪速区は未就学児が急増する一方で新規施設の計画がなく、保留率の上昇となりました。
東成区は申込数の増加、住吉区は利用児童数の急減が主な理由です。
住吉区の数字が昨年からあまりに大きく変動しているのが引っかかります。

一方、入所保留率が約10%となり、相対的に入所しやすかったのは大正区・生野区・平野区・西成区です。
保育所在籍率が概ね4割を越えており、区民の保育所ニーズの多くが満たされているからでしょう。

【2.就学前児童数】
一般的に就学前児童数が上昇している地域は子育て世帯から人気があると言える一方、保育所等の整備が人口増加に追いつかずに入所しにくくなるケースが多いです。

昨年から就学前児童が3%以上増加したのは北区・中央区・西区・浪速区です。
市内中心部に集中しています。
これらの区は入所倍率が高く、また在籍率は低くなっています(浪速区を除く)。
保育所等の整備が追いついていないと言えるでしょう。

一方、3%以上減少したのは西淀川区・東淀川区・生野区・平野区・西成区です。
市の周縁部にある区ばかりです。

【3.新規利用申込数】
入所倍率と密接に関係しているのは、新たに保育施設の利用を申し込んだ児童の数です。

昨年は前年比で100人以上増加したのは4区ありましたが、今年は1区もありませんでした。
50人以上増加したのが西区・天王寺区です。

【4.区毎の傾向】
これらから、各区を大まかにグループ分けできます。
但し、区内部でも地域によって状況は大きく異なります。

(1)入所保留率が高く、人口増加によって今後も保育所へ入所しにくい状態が続くと見込まれる
北区・中央区・西区・天王寺区・浪速区・阿倍野区

(2)入所保留率は中位、人口も概ね横ばいで現状維持が見込まれる
都島区・福島区・此花区・淀川区

(3)入所保留率は中位であり、今後の人口減によって保育所へ入所しやすくなると見込まれる
港区・西淀川区・東淀川区・鶴見区・住之江区

(4)入所保留率は相対的に低く、今後も保育所へ入所しやすい状態が続くと見込まれる
大正区・東成区・生野区・旭区・城東区・東住吉区・平野区・西成区

(5)それ以外
住吉区(そもそも未就学児に対する保育所等の定員数があまりに少ない)

発表された資料から区毎の入所倍率等は判明しましたが、入所を希望する保育所でどれだけの入所基準点が必要かは読み取れません。
大阪市は各保育所毎の新規入所者の点数を公表しています。
このデータを基に、各区毎・保育所毎の入所状況を探っていきます。