2020保育所等一斉入所結果分析、2回目は各区毎の状況を相互比較していきます。なお、昨年の分析記事はこちらからご覧下さい。


大阪市の保育所等利用待機児童数について(令和3年4月1日現在)より作成(以下同じ)

申込数が7%減

昨秋から何度も「申込数が急減している」と指摘していましたが、入所結果も同じ内容でした。

申込数は昨年度より1,108人も減少した14,582人となりました。減少率7%です。ここ数年は申込数が右肩上がりで増加していましたが、一転して反急落しました。

申込数が10人以上増加したのは、城東区と東淀川区のみでした。

反面、西淀川区の108人減(約2割減少)や大正区の89人減(約3割減少)に代表される様に、大半の区で申込数が大幅に減少しました。

最大の原因はコロナ禍による入所見送りです。また、少子化の影響も無視できません。保育需要が飽和状態に近くなった段階でコロナ禍に見舞われました。

短期間でここまで減少してしまうと、一部の保育施設では経営問題が浮上しかねません。

就学前児童数が2,859人減

保育需要に決定的な影響を及ぼすのは、大阪市内に居住する就学前児童数です。

日本全体の少子化進展に反し、大阪市内の就学前児童数は増加し続けていました。雇用や教育環境が充実した都市部での生活を子育て世帯が好み、子供も増えていたのでしょう。

しかし、今年4月時点での就学前児童数は、昨年より2,859人も少ない118,657人となりました。減少率が昨年より広がり、2%を越えました。

殆どの区で就学前児童数は減少しています。増加したのは中央区・生野区・東住吉区だけです。

就学前児童数が特に急減したのは浪速区です。昨年より173人減の2,549人となりました。6%以上も減少しています。他のも5%前後も減少した区が複数あります。

今後は大阪市でも少子化が恐ろしい勢いで進行するのは避けられません。これまでは「何となく減っていた」程度でしたが、今後は「目に見えて減っている」と変わります。

保留率ワーストは天王寺区

多くの方にとって気になるのは、大阪市全体の数字よりも住んでいる区・地域の数字でしょう。個別に取り上げていきます。

最も保留率が高かったのは天王寺区です。保留率は昨年より7.1%高い30.9%、10人に3人が保留となりました。

同区でも申込数は減少しましたが、それ以上に内定数が大きく減少しました。新規開所した保育所等がなかった為です。

なお、同区の保育所等在籍率は市内で2番目に低い37.9%です。現在も多くのマンションが建築されているので、今後も保育供給が足りない状態は続きます。

城東区は保留率上昇

天王寺区と並んで保留率が上昇したのは城東区です。保留率は昨年より4.0%高い14.2%となりました。

その理由は申込数の増加です。昨年度より72人多い1,089人となっています。

市内中心部へのアクセスが良好であり、地価も中心部ほど高くはありません。子育て環境と生活コストのバランスが取れており、ファミリー層から人気を集めていると推測されます。

大正区・西淀川区・旭区・西成区は申込2割以上減

コロナ禍等による申込急減が直撃したのは、大正区・西淀川区・旭区・西成区でした。いずれも前年より2割以上も申込数が減少しています。

これらの区は大阪市中心部には少し距離がある事から、夫婦が揃って市内中心部へ通勤するのはややハードルがある地域です。

となると、地域にある商業施設や飲食店等で働いている方が相対的に少なくなかったのでしょう。

しかし、コロナ禍はそうした業態の店舗を直撃しました。雇い止めや新規採用の中止等が相次ぎました。仕事を失ったり、就職するアテがなくなった方も少なくありません。結果、保育施設を利用する理由がなくなってしまいます。

となると、コロナ禍が一段落するまでは家庭で子供と過ごし、ワクチン接種が広まって雇用環境が好転したら再就職を検討するのが自然な流れとなるのでしょう。

ただ、来年以降に保育施設の利用が回復するかは限りません。コロナ禍に耐えきれずに閉店する店舗が相次ぐと、雇用の場も失われてしまいます。

申込数の低迷が長引くと、保育施設の経営問題も浮上します。少子化の進展も重なり、一部地域では保育施設の過剰感が強まるのは避けられないでしょう。