H28保育所等一斉入所結果分析、2回目は各区毎の状況を相互比較していきます。なお、昨年の同記事はこちらからご覧下さい。

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大阪市の保育所入所待機児童数について(平成28年4月1日現在)より作成

入所倍率・保留率ワーストは西区

最も気掛かりなのは「保育所等へ入所できるのか」という点でしょう。この点、区毎の待機児童数は参考になりません。見るべきは利用申込数に対して入所できなった児童の割合、すなわち保留率です。

H28一斉入所で最も入所倍率が高かったのは、H27と同じく西区でした。昨年より低下したとは言え、入所倍率1.72倍・保留率37.8%は驚きの高さです。5人に2人弱は入所出来なかった計算となります。但し、この数字には6月1日に開所した新町第2保育園は含まれていない事にご注意下さい。

この原因は西区における未就学児の増加が著しく、保育所等の整備が全く追いついていない点にあります。今年4月1日における西区の未就学児は5,541人と前年同時期から378人も増加しています。一般的な小学校1校分に匹敵する人数です。

それに対して、保育所等の整備も積極的に行われています。在籍数は昨年から268人も増えて1,731人に達しています。ほっぺるらんど国津橋・YPC保育園・多くの地域型保育事業の整備によるものです。H25の在籍数1,077人と比べると驚異的な整備速度です。

次いで北区・中央区・阿倍野区も入りにくい

北区・中央区も西区と似た傾向です。両区とも積極的に保育所等を新設していますが、タワーマンション等への子育て世帯が相次いでいます。

中央区は保留率がやや低下しました。が、北区は11.2%も増加して35.5%に達してします。ただ、6月に開所した愛の恵保育園への入所者数を考慮すると、実際には前年と同水準だったと推定されます。

同じ様に子育て世帯の転入が相次いでいながらも保育所等の整備が進んでいないのが阿倍野区です。在籍率28.8%はワースト2位(1位は中央区の24.9%)、入所倍率は30.1%へ上昇しています。他区と異なり、同区は保育所の新設が殆ど行われていません。代わりに地域型保育事業の新設・幼稚園の認定こども園化によって乳児の保育需要をまかなおうとしています。

しかし、前者が卒園後の保育先への不安から保護者に積極的に選択されず、後者が公募に応募する法人がないという状況です。子育て世帯が一気に流入すると、他区以上に深刻な事態に陥る懸念があります。

天王寺区・住吉区は保留率低下

保留率が急激に低下したのは天王寺区と住吉区です。天王寺区はげんき保育園とポピンズナーサリースクール天王寺の開所が主な原因です。とはいえ在籍率は市内ワースト3位と低く、極めて入所しにくい状況に変わりありません。

住吉区は申込数の急減・入所決定者の急増が主な理由です。双方の減少が同時に生じたのは住吉区のみです。以前から指摘しているとおり、保育所等に関して住吉区は他区と異なる傾向を示しています。保留率は市内平均水準である一方、在籍率は低いままとなっています。

大正区・生野区・平野区・西成区は十分な保育供給

市内中心部とは異なり、保育所等が十分に整備されている区もあります。大正区・生野区・平野区・西成区です。

保留率は10%未満、在籍率は概ね50%前後となっています。一定程度以上の点数がある入所希望者は、ほぼ全員が入所出来ている計算となります。実員率が著しく低い保育所もあるでしょう。今後、休廃園が行われる可能性が強いです。

就学前児童は中心部で急増

保育所等への入所しやすさにおいて、大きな要素となるのは就学前児童数の増減です。市内中心部、北区・中央区・西区・浪速区で著しく増加しています。タワーマンション等が数多く建設され、多くの子育て世帯が転入している為でしょう。

注意が必要なのは、転入のタイミングと子どもが増えるタイミングがずれる事です。転入直後は慌ただしい生活が続きます。新生活が落ち着いてそろそろ子どもを・・・・と考えるは、どの世帯も似たような時期です。来年以降も要注意です。

周縁部では減少傾向が続く

中心部とは対照的に周縁部では就学前児童の減少が続いています。減少率が高いのは大正区・生野区・平野区・西成区・東淀川区・鶴見区です。特に西成区・東淀川区・大正区では5%前後も減少しています。

住環境・利便性・勤務地との関係等から、こうした区は新婚夫婦・子育て世帯からあまり選ばれていない為でしょう。利便性や勤務地との関係はどうにもなりません。市内中心部と比べて地価が低いのを逆手に取り、子どもを育てやすい広い家を安価に提供できれば魅力に繋がりそうです。

次回は区・年齢毎の入所決定状況を

今年から区毎・年齢毎の申込数・決定数も公表されるようになりました。入所が決まらなかった1歳児の多さ、2-3歳児の入所倍率の高さが目立ちます。次回はこのデータを元に、区毎・年齢毎の入所決定状況を掘り下げていきます。