ここまで保育所等から配布されるプリント類の効率的な管理方法を考えてみました。
一方、そもそも保育所等からの各種連絡が未だにプリントで行われているのは何故でしょうか。
デジタル化によって効率化が図れそうですが、それを阻害する要因が幾つかあると推測されます。

(1)保護者の事情
保育所の保護者をざっと見渡した限り、概ね90%以上の方がスマートフォンを所有しています。
持っていない方でも自宅でPC等を利用している方もおり、ほぼ全ての方がメール等を受信できる端末を有していると推測されます。

「ほぼ全ての方」がポイントです。
メール等を受信できる端末を有していない、持っていても日々確認する習慣がない、デジタル端末を使えない方は若干数ながらいます。
典型的な例として、両親は忙しいので日々の送迎や準備等を専ら祖父母が行っているケースが該当します。
デジタル端末を使いこなしている高齢者も少なくありませんが、親世代と比較して使えない方は相対的に多くいます。
こうした方に「連絡内容はメールでお送りしました。毎日確認して下さい。」とお願いするのは難しいです。

(2)保育所等の事情
PCで書類を作成する機会も多いので、全ての保育所等にPCは備え付けられているでしょう。
しかし、全ての職員がPC等を利用して文書を作成するスキルを有しているわけではありません。
また、忙しい保育現場では、保育室の片隅にて僅かな空き時間を利用してプリント類を手作りで作成する機会も少なくありません。
手作りしたプリントを送信する場合、スキャナーでの取り込み・データサイズの調整・送信前の最終確認等の手数が発生します。

とは言ったものの、園児数分だけ印刷してカバン等へ入れる作業工数より少なくなりそうです。
既に一部の保育所等においては、毎月の予定表や園便り等をPDF形式でウェブサイトに掲載しています。

(3)端末による制限
デジタル化されたプリント類を閲覧する端末は幅広い物となるでしょう。
ガラケーからリビング用テレビまで想定されます。

例えばA4サイズで作成されたプリント類を送信した場合、ガラケーで内容を読み取るのは極めて困難です。
そもそもデータが開けない可能性が高いです。
こうしたトラブルへ対処する作業は保育所等に掛かってくるでしょう。
全ての端末で読める環境を想定する場合、テキストメールで送信するのが無難です。
多くのイラストが用いられた、手作り感たっぷりのプリントが読めなくなる恐れがあります。

これらの事情を鑑みると大部分のペーパーレス化はまだしも、完全なペーパーレス化は事実上困難でしょう。
まずは希望者からデジタル化するのが良いかもしれません。
手書きプリント類のデジタル化・サーバへのアップロード・登録済みメールアドレスへの通知(ファイルは送信しない)という手数と、それによって削減されるプリント類の印刷・配布コストを比較した場合、全園児等の半数以上の希望者がいれば割りに合いそうです。

なお、私は小学校に入ってからプリントを机の中に溜め込んでいました。
持ち帰らない子供をバイパスして保護者へ直接伝わるのも、デジタル化による一つのメリットでしょう。