日経DUALに、2人の子供を育てながら執行役員に昇格した女性広報部長の仕事ぶりが本人へのインタビューと共に取り上げられています。
同社としては6人目の女性役員だそうですが、子育てをしながら役員に就任したのは初めてのケースだそうです。
証券会社で女性が子育てしながら執行役員に就任する場合、どれだけの労働が必要かよく分かる記事です。

白川香名さん 「この子はホームランだから」入社3年目で言われた言葉を今でも思い出す大和証券 子育ても仕事も自然体で女性役員に

記事で取り上げられているエピソードが強烈です。

・同社での産休取得第1号。産後8週休んだだけですぐに復職。育休は初めから取るつもりはなかった。
・第1子が1歳になるまでは夫が会社を休んで育児。
・第2子は妊娠8ヶ月まで告げず、予定日1ヶ月前に破水。産休に入ったのは出産前日。
・第1子と同じく出産後にすぐに復職。
・子供への罪悪感は全くない。
・自分が見るより、子育てのプロたる保育所に任せるのがいい。
・中学2年の子供の手術は付き添わず、病院まで送って職場へ。
・嫁姑関係は「ご想像の通り」。

多くは今から15年ほど前の話です。
当時は大手企業で女性が子育てをしながら総合職として勤務するのは珍しかったのでしょう。
今とは隔世の感があります。

同時にいくら15年前を言えども、出産直前直後や子育て中の女性社員をここまで働かせる証券会社の恐ろしさも感じました。
体調を崩して母子共に危険な状況に陥っても不思議ではありません。
記事で取り上げられている方は運良く復職して勤務し続けられましたが、出産前後や子育て期間中は同じ様な働き方が出来ない方が大半ではないでしょうか。
決して一般化できない話です。

こうした家庭を維持するにあたり、夫の苦労は並大抵ではなかったでしょう。
多くの家庭では妻が担っている様々な行事や家事を夫が回していたと推測します。
記事には『育休を取ったことで、夫はその後の昇進などで大きなハンディを負った。』とありますが、その後の昇進や配属等にも家庭事情が大きく影響し続けたのではないでしょうか。

また、同様に子供にも大きな負担が掛かっていたでしょう。
重要な手術に親が付き添わないのは大きな不安です(付き添いが母親に限定されるわけではありませんが)。
様々な局面において、親に対して子供が「諦めていた」可能性が大いに考えられます。

文末にある、同社のとある女性社員が語った内容も強烈です。

大和のある30代の女子社員が語る。「役員に選ばれる女性は、ごく一部のスーパーウーマンなんだと思っていた。白川さんのように、子育てをしながら、普通に頑張っている人でも役員になれるんだと思うと、励みになる」。肩肘張って頑張っているわけではない。仕事も子育ても、あるがまま自然体。それが白川さんの人生観だ。

スーパーウーマンそのものだと思います。
生き方は人それぞれなので否定しませんが、私や我が世帯では無理です。

恐ろしいのは、こうした仕事ぶりや子育てを「普通に頑張っている」「自然体」だと感じる考え方です。
普通に頑張っているできる内容でありません。
こうした働き方が普通・自然体と感じる場合、他人も同様に働いて当然だと思うのではないでしょうか。

無理です。
殆どの場合、本人・家庭・子供、いずれかが先に壊れるでしょう。