子ども・子育て支援新制度では地域型保育(小規模保育・事業所内保育・保育ママ)が大きな特色の一つとなっています。
待機児童問題が深刻な0-2歳児を対象とし、認可保育所より小さな規模できめ細かな保育を行うとされています。
一方、地域型保育は「連携施設」の設定が必要とされています(経過措置あり)。
連携施設の設定に苦戦するケースが生じているそうです。

【保育どこいく】地域型保育を考える(上) 認可保育所との連携 条件だが 新規参入阻む壁に
2014年10月18日(最終更新 2014年10月18日 13時30分)

来年4月にスタートする「子ども・子育て支援新制度」で目玉の一つとされる地域型保育。小規模施設で、待機児童の8割を占める0~2歳児を専門に預かる。ただ、地域型保育として認可され、補助金を受け取るには、“パートナー”となってくれる認可保育所など「連携施設」を探さねばならない。これが大きなハードルとなっている。

「本当に引き受けてくれる保育所があるのか」「国の基準では経過措置がある。どうしても来年4月までに連携施設を見つけないといけないのか」

8日、福岡市役所で開かれた新制度の事業者向け説明会。質疑応答で地域型保育の認可条件である連携施設の確保をめぐり、地域型保育を目指す認可外保育所の関係者から疑問の声が相次いだ。

連携施設の要件は三つある。(1)給食の搬入や嘱託医による合同健康診断など保育内容の支援(2)地域型保育の保育士らが急病の際の代替保育(3)卒園後(3歳)の受け皿-だ。特に(3)については、都市部の認可保育所は待機児童解消のため既に定員オーバーの状態で子どもたちを預かっており、認可外保育所が連携施設を見つけるのは至難の業だ。

このため、国は、連携施設の確保が困難な場合、2019年度まで連携施設なしでも認可する経過措置を設けている。ただ、受け入れルールは地域のニーズに応じて市町村が定めることになっており、福岡市では来年4月までに連携施設を見つけることを認可の条件としている。「来春2歳で入ってきた子が、翌春卒園したとき受け皿がないと困る。連携施設は本来必要なこと」(市子育て支援部)という立場だ。

「連携施設を見つけるのはとても難しいとは思います。矛盾しているかもしれませんが、どうにか探していただければ」。市子ども・子育て新制度担当の若槻貴美子課長の答弁に会場で失笑が漏れた。

* *

福岡県筑紫野市の認可外保育所「バディスポーツ幼育園」を営む鶴丸聡一郎さん(51)は昨年10月、市内の認可保育所に連携施設への協力などを申し入れた。しかし、難色を示された。

鶴丸さんは、昨夏、筑紫野市から新制度に向け「小規模保育を運営してほしい」と打診された。2300万円を投じて調理室を併設した平屋の施設(132平方メートル)を建設、新たに調理員も2人雇って準備を進めてきた。なのに、1年以上経過した今も連携施設が見つからない。

筑紫野市は5年間の経過措置を取るため来春には認可される見通しだが、鶴丸さんは、協力要請した認可保育所側が発した言葉のはしばしに、自分たちを脅威とみていると感じた。「新制度で、子育ての環境を良くするために施設が力を合わせないといけないはずなのに、ライバル視するなんて…」と鶴丸さんの表情はさえない。

一方、連携施設を求められる認可保育所側にも言い分はある。ただでさえ保育士不足で他の施設を支援する余裕はない。今でも定員を超える子どもたちを預かっており、新たな子どもを受け入れる「枠」はない。受け入れには定員を増やすしかないが、増やせば国や市町村からの運営費(公定価格)の単価が下がり、運営が厳しくなると懸念されている。「何のメリットもない連携施設に手を挙げるところはないと思う」。福岡市のある私立保育所の園長はそう明かす。

地域型保育の成否を握る連携施設をどう確保するのか。次回は全国の他都市の取り組みを追う。

=2014/10/18付 西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/121385

大阪市の場合、今年9月までに設置された保育ママはほぼ連携施設の設定が行われている様子です。
一方、10月以降に新たに開所した小規模保育施設は情報が乏しく、大半の施設で連携施設の設定が確認出来ていません。

ただ、大阪市内での連携施設の設定には著しい偏りがあります。
連携施設の大半は市立保育所、一部は保育ママと同一法人が運営している市立保育所であり、特段の関係がない保育所を連携施設としている保育ママはごく僅かでした。

保育ママ名実施者連携施設
保育ママ はばたけ望之門保育園望之門保育園
保育ママ なかよしルーム阿倍野日笠 治美(保育士)市立天下茶屋保育所
保育ママ あおぞら山岸 幸子(認定研修修了)市立高松保育所
保育ママ FOUR LEAF澤田 智香子(保育士)きたばたけ保育園
保育ママ 結希一般財団法人 ボルテックス市立森小路保育所
片岡家庭保育ママ片岡 恵(保育士)市立森小路保育所
ぬくもりのおうち保育ママ6株式会社 S・S・M市立大宮第1保育所
保育ママこひつじほうむ大阪YWCA大宮保育園大阪YWCA大宮保育園
保育ママ きららもとまち保育園オールヒューマンサポート株式会社市立磯路保育所
保育ママ 風の丘保育園株式会社 エンジェル・スクワッド市立磯路保育所
保育ママ バンビ共同保育所松浦 初美(保育士)市立八幡屋保育所
ぬくもりのおうち保育ママ5株式会社 S・S・M市立高見町保育所
ぬくもりのおうち保育ママ3株式会社 S・S・M市立酉島保育所
保育ママ KIDSROOM Baby-bee蒲生 秀子(認定研修修了)市立住吉乳児保育所
保育ママ 亀の子共同保育所杉本 みゆき(保育士)こぐま保育園
保育ママ ひだまり林 由紀子(保育士)市立北加賀屋保育所
保育ママ すみのえ特定非営利活動法人 みらいず市立御崎保育所
エンジェルキッズ城東園株式会社 トレジャーキッズクラブ市立関目保育所
ちどりキッズ城東ちどり保育園城東ちどり保育園
保育ママ たかはしベビーセンター東根 美喜子(保育士)市立中川保育所
保育ママ事業おひさまルーム西六保育園西六保育園
保育ママ ちよざき保育園奥田 和栄(保育士)市立西保育所
保育ママ まどかソフィア南堀江保育園ソフィア南堀江保育園
保育ママ シュッポッポNPO法人あそびのお部屋シュッポッポ市立梅本保育所
保育ママ チアメイト特定非営利活動法人CMP市立千本保育所
保育ママ きららみてじま保育園オールヒューマンサポート 株式会社市立柏里保育所
保育ママ ゆりかごハウスNPO 法人 おひさま市立柏里保育所
保育ママ きららひめじま駅前保育園オールヒューマンサポート株式会社市立姫島保育所
ぬくもりのおうち保育ママ8株式会社 S・S・M市立大浪保育所
保育ママ てんとうむし渡邊 静子(認定研修修了)市立南大江保育所
保育ママ みんなのおうち 谷町園株式会社 フィール市立南大江保育所
保育ママ おひさまルーム 谷町園株式会社 ベル企画市立南大江保育所
保育ママ スキップ株式会社 エブリープラン市立南大江保育所
保育ママ あかつき森下 千種(保育士)市立天王寺保育所
かのん保育ママ合同会社 ギャザー市立味原保育所
TOT(トット)保育ママ有限会社 エフ・アーク市立味原保育所
保育ママ きらきらBaby都島園株式会社 Agent市立御幸保育所
保育ママ きらきらBaby 都島北通園株式会社 Agent市立御幸保育所
保育ママ エンジェルキッズ都島園株式会社 トレジャーキッズクラブ市立御幸保育所
保育ママ パンダ組都島乳児保育センター都島乳児保育センター
保育ママ 桜の宮ベビーセンター大槻 貞子(保育士)東野田ちどり保育園
保育ママ ひよこルーム新生保育園新生保育園
つみき保育園保育ママつみき保育園つみき保育園
瑞光保育ママセンター柴山 ゆり(保育士)市立南江口保育所
保育ママ こどもなーと株式会社アトリエClover市立西大道保育所
保育ママ こどもなーとプラス株式会社なーと市立西大道保育所
保育ママ 塩見ベビーセンター山中 晶子(保育士)市立西淡路第2保育所
フェアリールーム保育ママ上新庄園株式会社リンクス市立豊里第1保育所
保育ママ こどもなーと豊新株式会社アトリエClover市立豊里第1保育所
保育ママ きららえびえ保育園オールヒューマンサポート株式会社市立海老江保育所
保育ママ KIDS ROOM Baby-bee ふくしま園森 昌美(認定研修修了)保育所第二和光園
保育ママ 育福島園学習教室 秀英 有限会社市立海老江保育所
保育ママ 育福島東園オールヒューマンサポート株式会社ひばり保育園
保育ママ さくらんぼルーム長柄保育園長柄保育園
保育ママ 梅田ひまわり園株式会社 ブラッサム市立大淀保育所
ぬくもりのおうち保育ママ株式会社 S・S・M市立大淀保育所
保育ママ 育 三国園学習教室 秀英 有限会社市立三国保育所
保育ママ おひさまハウス十三園株式会社 秀和企画市立木川第一保育所
ホザナ 保育ママ伊藤 豊恵(認定研修修了)市立三国保育所
ぬくもりのおうち保育ママ2株式会社 S・S・M市立木川第一保育所
保育ママ 大きなじゃんぐる田中 里佳(認定研修修了)市立浪速第1保育所
保育ママ事業所 あったかスマイル・なにわ一般財団法人 大阪市民共済会市立小田町保育所
ぬくもりのおうち保育ママ7株式会社 S・S・M市立小田町保育所

見事に市立保育所ばかりです。
新聞記事にある通り、私立保育所にとっては連携施設となるメリットが極めて乏しいのが大きな理由の一つでしょう。
また、0-2歳児の保育は両者が重なり合う部分であり、保育と言えども同業他社(商売敵)に協力するのは容易ではないと感じられます。

更に、連携施設が市立保育所へ偏っているのは深刻な事態が生じる恐れがあります。
以前に紹介しましたが、地域型保育には「家庭的保育事業等の卒園児の連携施設への最優先利用決定」という制度があります。
0-2歳児までの受入が原則としなる地域型保育では、卒園後に連携施設は最優先に入所出来る制度です。
仮に連携施設における3歳児入所枠を超える児童が地域型保育から入所を希望を希望した場合、最優先であっても入所出来ない可能性が生じてしまいます。
特に多くの地域型保育の連携施設となっている、市内中心部の市立保育所は危惧されます。
入所枠の弾力化等によって何とか受け入れると思いたいのですが、こればかりは蓋を開けてみないと分かりません。

カギとなるのでは幼稚園との連携かもしれません。
0-2歳児の保育が重なり合う保育所とは異なり、原則として3-5歳児の教育を行う幼稚園は地域型保育と重なり合う部分がありません。
連携施設となる事により、3歳児入所者を確保しやすいというメリットは見過ごせないでしょう。
保護者の立場としては幼稚園の預かり時間が心配ですが、多くの幼稚園では夕方の預かりを実施しています。
街中で見掛ける保育ママは17時過ぎには閉まっているケースが少なくなく、幼稚園での預かり時間でも実用上問題は無さそうです。
長時間就労の場合には保育所の預かり時間(保育標準時間だと8~11時間)が重宝しますが、短時間就労の場合は家庭型保育や幼稚園の夕方預かりの時間内で収まってしまうケースが少なくないでしょう。

子どもの日中の過ごし場所は、認可保育所だけでなく家庭型保育+幼稚園の組み合わせも考えられます。
様々な施設の長所や特色を踏まえた上で施設選びを行うのが重要でしょう。