首都直下地震の被害想定と対策について(報告書)が公表されました。

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上記報告書には子育て世帯や子どもに及ぼす影響が数多く記載されています。南海トラフ巨大地震への備えが指摘されている大阪・関西でも同様の事態が起こり得ます。

具体的には、「帰宅困難でお迎えに行けない」「学校や保育所等の職員も帰宅できない」「登下校中に被災した子供の保護が難しい」「臨時休校・休園が続く」「職員不足や避難所となった学校等では教育環境が阻害される」「臨時休校等が続くと保護者が出勤できない」「徒歩で帰宅できない子供が帰宅する搬送手段が講じられていない」「避難所に子供・子育て世帯のニーズが反映されないのではないか」「学校の早期再開への検討が必要」等としてきされています。

・共働きで子どもがいる世帯では、発災時に子どものお迎えに行けなくなる状況が発生するほか、共働きで子どもや高齢の親がいる世帯では、夫婦のいずれかが子どもや高齢の親の世話や支援物資の受取り等のために仕事を休まざるを得なくなり、行政や企業等(企業のほか、監査法人や学校法人、医療法人、社会福祉法人、社団法人などの法人形態を含む。以下同じ。)の業務継続や復旧・復興活動に支障を及ぼすことが予想される。

・保護者が帰宅困難となると、保育所や学校へ子どもを迎えに行けず、子ども達がそのまま学校等に滞留するほか、学校等の職員も帰宅することができなくなるおそれがある。また、東京圏では通学に鉄道を利用する児童・生徒も多く、登下校中に被災した場合、「子どもの保護」が十分に行われないおそれがある。

・学校・保育所等については、安全な就学等環境が確保されるまで臨時休校・休園が続くこととなるほか、児童・生徒が被災する、避難生活が⻑期にわたり続く、学校施設等が避難所として⻑期間利用される、教職員の被災や交通麻痺により出勤困難等となり教職員が不足するなど様々な要因から、子どもの教育や保育の機会が失われるおそれがある。学びの継続のため遠隔・オンラインでの授業が行われる場合も、児童・生徒によって学習端末の確保をはじめ学習環境に差が生じる可能性がある。

・同居する子どもの学校等や要配慮者の福祉施設の臨時休校・休業が続くと日中の世話が必要となるほか、支援物資の受取り等も必要となるため、夫婦のいずれかが出勤困難になり、企業等が業務継続するに当たっての支障となるおそれがある。

・鉄道を利用して通学する児童・生徒が登下校中に被災した場合における安全確保について検討する必要がある。また、学校等に滞留している子どもや職員など、一時滞在施設や企業等以外の施設に一時避難する人をデジタル技術の活用により把握・支援することについて検討が必要である。

・自力での徒歩帰宅が困難な要配慮者や子どもが自宅へ帰るための搬送手段を確保するため、地方公共団体においては、あらかじめ、搬送拠点やルートを設定するとともに、搬送に係る企業等との間で調整して搬送のためのマニュアルを策定し、図上訓練や実動訓練等を通じてマニュアルを見直し、実効性を高める必要がある。

・避難所運営への女性や多様な主体の参画により、女性と男性のニーズの違いや、乳幼児や子どものいる家庭等のニーズを反映させるように配慮する必要がある。

・発災後の子どもの教育機会を確保するため、国、地方公共団体において、学校が避難所として活用される期間の短縮のほか、被災地外からの教職員等の派遣などによる学校の早期再開のための方策の検討が必要である。

首都直下地震の被害想定と対策について(報告書)より関連部分を引用

我が家にとっても子供のお迎えや下校は悩みの種です。

お世話になっている保育園では日々の送迎がお迎え訓練ともなっています。園では月1回程度のペースで避難区連を実施しています。東日本大震災の後には耐震補強工事も行われました。一定程度の備蓄食料や着替え・布団等もあります。

保育園への安心感と信頼はある一方、発災当日にお迎えに行けるとも限らないという現実があります。公共交通機関の運行停止や早期帰宅の抑制が行われたら、保育園までは到底辿り着けません。

園もこうした事態を想定している様子です。保育園の先生に「電車が止まったら迎えに行くのは難しいと思う。」と話を振ったところ、「園としても問題意識はある。一部の職員が園に泊まり込まざるを得ないと思う。」と話していました。

恐らくは小さな子供がいる保育士は早期に退勤させ、それ以外の保育士で保育を継続するのでしょう。園の近くに住んでいる保育士も少なくなく、徒歩等でも出勤できます。

小学校は日常的には子供だけで登下校していますが、も発災直後は保護者がお迎えに行く段取りとしています。毎年「引渡訓練」を行っており、子供が確実に保護者と合流できる様にしています。

保育園と同じく、小学校にも一定程度の備蓄物資があります。避難所も兼ねています。発災直後に保護者が迎えに行けなければ、学校で待機する教員と共に避難所となった学校で一夜を過ごすのでしょう。

不安なのは中学校です。引渡訓練は一度も行っていません。避難所指定されている事から備蓄物資はある筈ですが、一度も見た事がありません。連合町会等を交えた防災訓練等も行っておらず、地域との繋がりは希薄です。

保護者との連絡や調整等も上手くいっていません。以前にやむを得ない予期せぬ事情によって繰り上げ下校を行ったのですが、子供が早い時間に帰宅して困惑したり、反対に帰宅しても誰もいない自宅に入れずに学校へ戻った生徒もいました。学校から「下校させる」との連絡があったのは、下校してから1時間以上が過ぎてからでした。

恐らくは大規模災害時にも同じ事態が起こると懸念しています。中学校に待機させず、保護者のお迎えを待たず、子供だけで帰宅させようとすると推測しています。保護者への連絡は後回し、もしくは連絡網の寸断によって連絡出来ない状況も考えられます。

子供には「学校から下校させられても、帰り道が本当に怖い。東日本大震災で亡くなった子供の殆どは学校外で災害に襲われた(大川小学校を除く)。必ず迎えに行くから、学校で待機しなさい。」と強く伝えています。

高校生は電車で登下校している最中の発災が不安です。恐らくはしばらく電車内で待機し、最寄駅で降車させられるでしょう。全ての公共交通機関が全面的に止まる筈です。「電車が止まったから、他の路線で移動する」のは困難です。

自宅や学校まで歩いて移動できる場所かつ周囲で倒壊している建物等が無かったら徒歩で移動する、それ以外は駅員の指示に従って行動する旨を指示しています。誰も知る人がいない避難所で一夜を過ごすのは避けたいので、できる限り学校もしくは自宅へ移動させたいです。

もしも帰宅した自宅に保護者がいなければ、1人で避難所へ行くようにとも伝えています。地域の避難所へ行けば、誰か知り合いがいます。

保護者が子供達を迎えに行く順番も想定しています。「寂しい思いをしている小さな子供から迎えに行く」のが一般的かもしれませんが、反対に「年齢が上の子供から迎えに行く」としています。

大きい子供は1人で留守番ができますが、小さい子供は難しいです。大きい子供を連れて他の子供を迎えに行けますが、発災直後で道路事情が非常に悪い街中に小さい子供を連れて移動するのは極力避けたいです。

災害時は何が起こるか分かりません。そうした中に於いて、子供達が安心して過ごせるのは「学校や保育所等」です。

早くお迎えへ行きたいのは山々ですが、災害の大きさや交通事情によっては困難な場合もあります。「最後まで安全に預かってくれる」と信じ、自らの安全を確保できてから迎えに行くつもりです。