生徒5カ月の乳児が亡くなった「託児所めぐみ」(紀伊情報サイトより、一部を加工)

2023年7月に和歌山県田辺市の認可外保育施設「託児所めぐみ」にて、生後5カ月の女児が死亡する事故が起きました。事故当時は代表者1人で0〜6歳の乳幼児4人を預かっており、国の指導基準で求められる複数保育者の確保が行われていませんでした。乳児をうつ伏せで寝かせないとするガイドラインにも反していました。

認可外保育施設「託児所めぐみ」(和歌山県田辺市)で5カ月女児死亡 保育士1人が4人預かる

【外観(グーグルストリートビューより】

事故から2年半、ようやく代表者が起訴されました。

 23年、和歌山県田辺市の認可外保育施設で生後5か月の女の子が窒息死した事故で、当時の代表が業務上過失致死の罪で起訴されました。

 起訴されたのは田辺市の認可外保育施設「託児所めぐみ」の元代表・西野恵子被告(67)です。

 起訴状などによりますと、西野被告は23年7月、柴尾心都ちゃん(当時5か月)を預かった際、心都ちゃんがうつ伏せで寝ていたことに気づかず窒息死させたとして業務上過失致死の罪に問われています。

 西野被告は事故当時、0歳から6歳の子ども4人を2人以上で保育しなければいけないところ、国の基準に反して1人で預かっていたということです。

 心都ちゃんの母親は「起訴されて本当によかったです、裁判では嘘をつかずに話してほしいです」などとコメントしています。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2358042?display=1

今年2月には和歌山県が設置した検証委員会が「保育士不足が常態化、田辺市も指導を怠った」と指摘しました。

 報告書は、この施設では23年4~7月の開所日のうち約7割が「1人保育」になっていたことや、睡眠中の0歳児に必要な5分ごとの確認・記録を怠っていたことを指摘。毎年の立ち入り調査を実施している田辺市は、13~15年度に職員不足を指導したが、改善の状況を確認していなかった可能性が高いとした。

 検証委の委員長を務める和歌山信愛大の森下順子教授(59)は、報告書を県に提出した後、報道陣に「施設側の基準が満たされていなかった問題と、行政が指導・監督をできていなかった問題が重なりあった」と述べた。

https://digital.asahi.com/articles/AST2G2W9FT2GPXLB00NM.html

検証委員会が作成した報告書はこちらに掲載されています。

Download (PDF, 448KB)

保育士不足は常態化していました。令和4年度は開所234日中101日、令和5年4月~8月は開所72日中48日で不足していました。ほぼ2日に1日は必要な保育士数を下回っていました。子供の動静を見守る体制が疎かになり、緊急時に十分な対応ができないのは言うまでもありません。

田辺市は3年連続して職員配置に関する指摘を行いましたが、改善状況を確認したという記録はありません。指摘だけに留まっていた可能性が高いです。

様々な保育事故において、最も大きな原因の一つは【保育士不足」でした。これを守っていない保育施設は遵法精神がないどころか、大切な子供の命を預かっている自覚に欠けています。

自らが不利になる情報を施設側が自主的に公開するのは期待できません。行政機関の指導や発する情報が頼りとなります。改善されるまでは事業を停止させる等、より早い段階での対策が必要です。保育士数が不足している保育施設をそのまま運営させる訳にはいきません。

元代表者と同様、指導監督義務を果たさなかった田辺市の責任も重大です。市が適切に指導監督を行えば、事故が避けられた可能性は高いです。今後提起されるであろう民事訴訟の場で責任が追及される見通しです。