鳥取市は「里帰り出産でも1カ月以上も欠席が続いたら原則退所させる」としています。厳しい市です。
母親の「里帰り出産」に幼い子どもが同行し、保育所を一定期間欠席した場合の対応が山陰両県12市で分かれている。松江、出雲、鳥取各市は新規の入所希望者が待っているなどとして原則、退所しなければならない。その他の9市は規定を設けておらず、退所にはならない。
「もう少し何とかならないでしょうか」
昨年、松江市内の保育所を通じて、市保育所幼稚園課に里帰り出産を控える母親の声が届いた。
同様の問い合わせは毎年出ているという。市は従来、自己都合で長期欠席する場合の許容期間を2カ月としてきたが、里帰り先での産前産後の健診や出産後のケアに一定期間が必要と判断し、2023年度の途中から里帰り出産に限って3カ月に引き延ばした。(中略)
鳥取市は、里帰り出産や病気など理由にかかわらず「1カ月以上」は原則、退所とする。幼児保育課の担当者は「一定期間以上、一度も預けないということであれば、何かしらの方法で保育が可能だろうと判断できる」と話す。(以下省略)
多くの産婦人科医のウェブサイトで「里帰り出産は妊娠32週から35週の間がベスト、遅くても36週までに」と書かれています。一方で産前休業が出産予定日の6週間前からとされています。有休消化による前倒し産休や他の家族の事情等も考慮しなければなりません。様々な事柄を調整した上で、何とかこの期間内に里帰りするケースが多いのだと思います。
たとえば34週で里帰り、40週で出産、1カ月健診後に現住所に戻るというスケジュールを組むと、2カ月強から3カ月弱は掛かってしまいます。鳥取市の様に「(里帰り出産等の)理由にかかわらず、1カ月以上の欠席は退所とする」とする自治体では事実上、里帰り出産が困難となります。
確かに「里帰り出産で長期欠席するのであれば、保育所等を利用できていない他の児童に席を空けるべき。」という意見もあります。しかし、保育所等を欠席する期間は概ね2~3カ月程度が専らです。実家からの支援を受けやすい里帰り出産を躊躇わせ、保育所等を退所させられる園児の心身の安定を損なうのは、全く釣り合いが取れません。
鳥取市は「何かしらの方法で保育が可能だろうと判断できる」としています。ここでいう「何かしらの方法」とは、「実家にて様々な支援を受けている」という状態を指摘しています。だが、これは永続的な方法ではありません。里帰り出産による一時的な支援と数年間利用する保育所等を混同して、乱暴な意見です。
大阪市では「里帰り出産による退園」は誰からも聞いた事がありません。制度上でも見つけられませんでした。近隣他府県や遠方から大阪へ出てきた家庭等が多く、里帰り出産が当然視されているのかもしれません。
実はそれ以外の様々な事由による長期欠席が常態化しているのではないかと感じています。典型的なのは外国人の家庭です。ある日唐突に姿が見えなくなったと思いきや、数ヶ月後に「母国に戻っていました」と再登園した経験が何度もあります。
大阪には様々な事情等を抱えた家庭が数多くあります。その為、柔軟に対応せざるを得ないという側面もあるのでしょう。