(8/21追記)
トラブルは単なる「運営費の未払い」ではない様相を呈しています。
設置者のヨネムラコーポレーションは「保護者からアスリートスクールが預かった保育料600万円がヨネムラコーポレーションへ支払われていない」、反対に運営委託先のアスリートスクールは「運営が苦しいのでヨネムラコーポレーションに援助を求めたが、実現しなかった」と主張しています。
同園は同県稲沢市の建築会社「ヨネムラコーポレーション」が開設し、学童・進学塾経営「アスリートスクール」(同市)が運営を担ってきた。ヨネムラ社側は説明会で、金銭トラブルについて「保護者からアスリート社が預かった保育料約600万円が、支払われていなかった」などと説明したという。
一方、アスリート社の責任者は19日、本紙の取材に施設の定員増が認められず、資金繰りが厳しくなったことが発端と説明。2021年に開所した同園は、当初19人だった定員を30人に増やす予定だったが、増員できないため、補助金なども想定より少ない状態が続き「運営が苦しくなった」と説明した。ヨネムラ社側に援助を求めたが、実現しなかったと主張した。
まさしく「園児・保護者不在の内輪もめ」です。これらの主張を聞く限り、唐突にアスリートスクール社が従業員を引き上げる正当性は見出せません。増員には管轄する児童育成協会との協議が不可欠であり、保育料も預かりっぱなしです。
在籍園児数や定員数も食い違っています。アスリートスクールは「増員できなかった」と主張していますが、朝日深部は「28人が利用している」と報じています。
園は、0~3歳の28人が利用している。ヨネムラ社が運営委託した会社との間で金銭トラブルが発生し、10日から休園状態になっている。
https://digital.asahi.com/articles/ASS8M56J4S8MOIPE00SM.html
双方の主張や事実関係も食い違いを見せています。こうした面からも混乱する園運営が見えてきます。
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愛知県清須市にある企業主導型保育施設「清須こころ保育園」が8月10日から休園中です。原因は設置者と運営者での金銭トラブルでした。
休園する旨が保護者へ伝わったのは前日の9日でした。園児や保護者が置き去りにされています。
「あすから保育園休園」突然の通知に保護者ぼう然 金銭トラブルか
愛知県清須市の企業主導型保育施設「清須こころ保育園」が、今月10日から休園状態となっている。背景には、設置会社と運営会社間での金銭トラブルがあるとみられる。保護者が休園を知らされたのは前日のこと。子どもの預け先が突然なくなり、保護者からは不安の声があがっている。
清須こころ保育園は愛知県稲沢市の建設会社「ヨネムラコーポレーション」が設置し、同市内で学習塾を経営する「アスリートスクール」に運営を委託。0~3歳の28人が利用している。
関係者によると、両社間には運営費などをめぐる金銭トラブルが発生。アスリート社が2日、ヨネムラ社に対して「10日付で従業員を引き上げる」と通告した。
アスリート社の代表は朝日新聞の取材に対し「正当な運営費が支払われない期間が続くなどしたため、やむを得ず撤退を決めた」と説明。一方、ヨネムラ社の代理人は「アスリート社への支払額については、両社間で協議中だった」などと主張した。
10日からの休園連絡が保護者に回ったのは、9日午後のことだった。保護者の1人は「寝耳に水。子どもを預けられず、途方に暮れている」と漏らした。
園側から保護者に対して、転園可能な複数の認可外保育園が紹介されたという。だが、この保護者は「全て自宅から遠方の場所。仕事の都合を考えると、預けにくい」と、不安を吐露した。
ヨネムラ社は18日午後に保護者説明会を開いて、今後の見通しなどを伝える予定だ。
清須市によると、転園先について保護者から10件程度の相談が寄せられたという。市は、空きのある公立保育園や認定こども園の一時保育を紹介している。(以下省略)
https://digital.asahi.com/articles/ASS8J2QFCS8JOIPE00GM.html
清須こころ保育園は愛知県清須市花水木一丁目7番11に設置されていました。
旧鎌倉街道に接し、名古屋鉄道新清洲駅までは200メートルもない場所です。付近は住宅街であり、近接した地域には清洲小学校やフィール清須店があります。
町内で働く方に加え、名古屋駅周辺で勤務する保護者も少なくないでしょう。定員は19名とされているのに対し、同園は0~3歳までの約30人が利用したそうです。定員を大きく上回っています。
この報道に接して真っ先に感じたのは「設置者と運営者の不一致」でした。
同園を設置したのは株式会社ヨネムラコーポレーションでした。同社は保育園に隣接する愛知県稲沢市に本社があり、住宅の大規模改修、内装工事・リノベーション、解体工事を主たる業務としています。
一方、同園を実際に運営していたのは同じ稲沢市に本社がある株式会社アスリートスクールです。認可外保育・学童保育・学習塾を運営しています。
ヨネムラコーポレーションには保育に関するノウハウはありませんが、建築物に関する豊富な実績があります。
一方でアスリートスクールは直営で3-5歳児をも対象とした学童保育を運営しています。企業主導型保育が主に保育を行う0-2歳児とはやや食い違いますが、一定程度のノウハウは有していると考えられます。
両者が得意分野を提供し、企業主導型保育を設置・運営していると考えるのが自然です。
設置者と運営者の関係については「アスリートスクールが保育園へ職員等を出向させていた」との報道もあります。
保育園を経営する「ヨネムラコーポレーション」によりますと、園に保育士などを出向させていた会社「アスリートスクール」との間で、トラブルとなり、8月10日以降、保育士などを働かせないと、通告されたといいます。
https://news.ntv.co.jp/category/society/cte1b65624daa844b88c38281379d171a3
実は企業主導型保育施設の運営委託は明文で認められています。企業主導型保育事業運営ハンドブック 第2版から引用します。
https://www.kigyounaihoiku.jp/download/handbook_ver02_r1_20191219
禁じられているのは保育施設の運営等を受託した者からの再委託です。本件の様に一般事業者(ヨネムラコーポレーション)から保育事業者(アスリートスクール)への委託(もしくは職員の出向)に法令上の問題等はありません。
しかし、あくまで同園の設置者はヨネムラコーポレーションです。企業主導型保育事業ポータルに明記されています。
https://www.areamarker.com/kigyo-hoiku/info/004297?addresscode=23233&shopid=004297
そして保育に関する契約は同社と保護者との間で行われています。助成金等はヨネムラコーポレーションの収入となります。唐突な休園等に関して保護者に説明する責任もヨネムラコーポレーションにあります。
アスリートスクールが従業員を引き上げた理由は、運営費に関するトラブルでした。アスリートスクールは「長きに渡って正当な運営費が支払われなかった」と主張、それに対してヨネムラコーポレーションは「支払額は両者で協議中だった」としています。
本当に従業員を引き上げると、同園が運営できない事をアスリートスクールは認識出来ていた筈です。それでも引き上げたと言うことは、やむを得ない事情があったのでしょう。
最大の被害者は園児と保護者です。お盆前まで毎日の様に登園できた保育園へ唐突に行けなくなってしまいました。いつものように登園準備をして出発しようと思っていても、親から「今日は行かないよ」「明日も行かないよ」「ずっと行けないよ」と言われた子供の心中は推し量れません。
設置者と従業員(運営委託先)とのトラブル等が生じた場合、認可保育所であれば自治体等にトラブルの仲裁を持ちかけるという方法もあります。もしも休園すると自治体も困ります。積極的な立ち回りまでは難しいながら、監査等を通じて関与等は可能です。
しかし、企業主導型保育は公益財団法人児童育成協会が制度運営を担っています。保護者からは非常に距離があります。また、同協会は個々の企業主導型保育に関与するのは物理的に困難です。
今回の問題は企業主導型保育、そして保育園の運営委託という形式が引き起こした側面は否定できません。
園運営を再開しようとする動きもあります。8月17日のインスタグラムへの投稿には「10/1リニューアルオープン致します」との文言があります。
でも、保護者は10月までなんて到底待てません。